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Laugh Chaos  作者: signal.U
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第五話 レッツ・マキ車‼︎(後編) 〜 本気のバトル 〜

マキの挑発にオニは腕を組み「フンっ」と鼻を鳴らした。


今のうちに調子こいとけよっ!


「いくぜ! 斬り裂け《空牙》ッ!」


横薙ぎ一閃から衝撃波が飛ぶ。


オニは回避したついでに攻撃を仕掛けようと思ったのか、「なんのっ!」と跳躍し衝撃波を飛び越え接近してきた。


「かかったな! 《瞬迅》ッ!」


滞空中のオニと一瞬ですれ違った。魔Rockブーストで威力もスピードも盛り盛りだ。


ザシュン!


オニは態勢を崩しながら着地した。


「ぐ、やるではないか若僧。身体能力が先程とは違うようだが、この騒がしい音のせいか? ……しかし、まだ詰めが甘かったな」


オニは脚から血を流しているだけに過ぎず、肉は切ったが骨までには至らなかったようだ。


ちっ、浅かったか。狙いは脚の切断だったんだがな。だが少しでも斬りつけることが出来たのはデカい、これですばしっこいのは半減だ。


「へっ、お得意の素早い動きを封じられれば充分だ。あとはその剛腕を気をつければいいだけの話だってな」


そしてもう一度《空牙》を放つ。オニが怪我で鈍く飛び上がったところを《瞬迅》でもう一度斬り裂く。


ザシュン!


無傷だったもう一方の脚を斬り飛ばした。これでもう動けやしない。


しかし、オニは不敵な笑みを浮かべていた。


「はぁーっはっは! 恐れ入ったぞ若僧。よもやワシをここまで追い詰めるとはな。しかし、これでワシも腹を括ったぞ」


オニは手先を鋭く固め頭上高くまで振り上げた。

何をするかと思えば、斬られて傷ついてはいるが残った方の脚を、自分の手刀で切断した。ない両脚が同じくらいの高さになり、大腿で立っている状態になった。


「さぁ、ここからは己を賭けた本気の第三ラウンドと行こうではないか。かかってくるがいい」


動けもしないオニが、やる気満々で構え立ち塞がった。するとあたりの小さな瓦礫や石が宙に浮き出すのだった。それは恐らく、オニが発するものすごい気迫がそうさせるのであろう。


その気迫はマキの皮膚をビリビリと刺激し、また青白いオーラを纏っているようにも錯覚させた。


いったい何がここまでヤツを突き動かすのだろう。


「へっ、そのやる気が気味悪いがもう決着はついてるってな! いくぜ《空牙》ッ!」


脚がないんじゃもう動けやしない。ゆえに《空牙》をかわす手段はない。これで決着だ!


オニは目を閉じ大きく息を吸い、ゆっくりと吐き、そして胸の前で合掌をした。


放たれた《空牙》の衝撃波が今にも斬り裂こうと迫っているにも関わらず、オニはまったく動く気配もなく、ただただジッと合掌していた。


しかし、それからまさかの事態が起きた。


「むんっ! 《仁王転殺(におうてんさつ)》!」


バッと開眼し、構えた両腕をぐるっと大きく円を描くように瞬時に回した。すると直撃したハズの《空牙》の衝撃波は、オニにダメージを与えることなく消えてしまった。


「な、なんだと⁉︎」


確認のためもう一度《空牙》を放つ。しかし、やはり直撃する瞬間に《仁王転殺》という技を行うことで、攻撃をかき消しているようだ。


……おいおいマジかよ、そんなことまで出来んのかよ。


どうやら遠距離攻撃は無駄なようだ。オニの宣言通り本気の第三ラウンドということで、死力を尽くしどんな奥の手も惜しみなく使って勝負にきているように思える。


こちらも魔Rockブーストがあるとはいえ、注意して挑まなければ。もちろん、遠距離攻撃は無効なので、残された選択肢は近接攻撃しかない。そうなればオニの射程距離に入り、繰り出される豪腕が恐ろしい。どんな理由があっても懐に飛び込むしかないが。


「遠距離がダメならば斬り捨てるまでよ!」


刀を構えオニに駆け寄る。勢いに乗せてブッた斬ろうと、接近したところで飛び上がる。


オニはというと先ほどの衝撃波をかき消した構えのまま静止していた。


「これで終われや!」


「むんっ! 《仁王転殺》‼︎」


勢いよく振り下ろされた刀を、オニは手の甲で器用にいなした。


「う、嘘だろっ⁉︎」


もう一度、その場で斬りつけてみる。しかしやはりいなされてしまう。近接攻撃も無効だっていうのか⁉︎


「無駄だ無駄だっ! 今度はこちらから行くぞ! 《阿修羅豪烈(あしゅらごうれつ)》‼︎」


オニの両腕から暴風雨のような激しい連打が放たれた。最初の何発かはかわしたが、暴風雨を凌ぎきることは出来ず、咄嗟に取ったガードの上から殴り飛ばされてしまった。


「クッソ、上半身だけでも充分戦えるってことかよ。マジでバケモンだぜ……」


痛てて、口の中が鉄の味でいっぱいだ。身体もズキズキと激痛が走りやがる。


どんな攻撃も《仁王》で無効化し、接近した相手を《阿修羅》 で迎撃する……まったく手のつけようがない。どうしたものか。


……いや、待て。一つだけ方法はある。しかしかなり危険な賭けだ、魔Rockブーストもあるが上手くいくかどうかはわからない。だが、この状況ではやるしかない。


「いくぜっ! オラァァァァ!」


再度、跳躍から勢いよく斬りかかった。


「無駄だと言っておる!」


オニは例のように《仁王転殺》で刀をいなし、その後《阿修羅豪烈》の構えに入った。


「若僧、これで終いだ! 砕けろっ《阿修羅豪烈》‼︎」


再び暴風雨を吹き荒らすが如く、オニの剛腕が凄まじい勢いでマキに襲いかかる。


「そこだぁっ!」


ザシュン!


暴風雨の一発目の軌道を見切り、放たれた拳を真っ正面から一刀両断した。オニの右拳は真っ二つに裂け、それは肩にまで及んだ。


連打を一つ一つで考えれば、単純な突きの連続だ。特に初撃に関しては、その一点に集中すれば良いので、そんなに軌道を読むことは難しくはない。しかし、それに立ち向かう勇気が必要だ。


「な、なんたる不覚。このワシが敗れるとは」


オニは残った片腕を床につき、戦意を喪失した。さすがに片腕だけで勝てる相手ではないことは、これまで戦ってて充分理解していたのであろう。


「ふぅ、やっと観念したか。本当に手強いヤツだったぜ」


魔Rockを演奏していた姉妹も決着がついたのを見ると中断し、喜びながらマキに駆け寄った。楽器は何もない空間に自然と消えて行く。


「やったじゃねぇか! さすがマキだぜ‼︎」


「マキさんやりましたね! よかったぁ」


姉妹は喜びのあまり興奮しながらキャッキャウフフとしている。今回はそれほどまでに緊迫した戦いであった。


ところで、オニを降伏させたのは良いが、始末はどうつけるべきだろうか。べつに特段悪いヤツでもなさそうだ。戦った動機は『ただ強いヤツと戦いたい』という、穢れなき純粋な欲だったように感じる。やりあってそう感じた。


「で、オニさんよ。アンタこれからどうすんだ? 俺としてはべつに命まで取ろうってわけでもなく、ただここを通らしてもらえれば問題ないんだが」


「ああ、好きに通るが良い。ありがとうよ若僧よ、冥土の土産にこんなにも楽しい仕合が出来て、お主には感謝しておる。ワシはここで潔く散ろう」


そう言うとオニは残った片方の手で手刀を作り、指先を自分の胸に向けた。


「では、さらばだ。若き武人よ」


するとその手刀で一気に自分の胸を、心臓を貫いた。


なんてヤツだ。まるで侍の切腹を見ているかのような清らかな死に様だった。


前のめりに突っ伏したオニの亡骸は、蒸発し大きい魂が抜け出た。今回も同様にその魂を吸うのだが、なぜか誇らしく感じた。


「あのオニ、バケモンのクセに正々堂々としてて変わったヤツだったな」


キリカは遠くを見るような目で言った。


「あぁ、敵ながら天晴れなヤツだった」


敵にもいろんなヤツがいるが、たぶん今回のタイプは稀なケースだろう。こういう武人タイプみたいなのはそうそういないと思う。


強さ的には中級悪魔のトップクラスか上級悪魔の下の方だろうか。カウンターを思いつき、魔Rockブーストで上手くいったから良かったが、失敗していたら今ごろ床に突っ伏していたのはこちらだったかもしれない。


「さて、先に進むとするかね。この先に答えがあるはずだ。俺達が魔汽車を操縦するのか、車掌に交渉するのか、はたまたそれ以外か……」


「穏便に済めばいいんですけどね」


横にいるエレンは不安そうに言った。


まったくもってその通りだし、本当に穏便に済めばと思う。


しかし、ここは魔汽車だ。何が起きるかはわからない。

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