第五話 レッツ・マキ車‼︎(後編) 〜 一両目の噂 〜
第五話 スタート‼︎
異空間を走る魔汽車は目的地は定まっているかのように、迷うことなくせっせと走り続けていた。それはもう幾度となく往復しているので、道を間違えるわけないだろと言わんばかりに直進あるのみであった。
ところで、マキ一行は冥府に向かっていると思っているが、実のところはまだ定かではない。マキの言うように本当に冥府に向かっているか、または別の場所に向かっているのか、停まることのない永遠の旅なのか……それは魔汽車のみぞ知ると言ったところであろう。
ガシャドクロに続き三匹のカマイタチを黙らせ、目的であったタジマ親子の確認を終えたマキ一行は、下車しようとした矢先に魔汽車が異空間に入ってしまい降りるに降りれなくなってしまっていた。そのため魔汽車の調査の続行を余儀なくされ、フジノジュカイに戻る方法を模索していた。
そんなマキ、キリカ、エレンの三人は、タジマ一家がいた車両から一つ前の車両に移動した。
「お、またなんか雰囲気が全然違うところだな、ココ。まぁ異様なところは変わってないけどな」
横に長いソファーや、カフェにあるような椅子とテーブル、大きな車窓にカーテンなどがあり、小洒落たくつろぎ空間になっていた。この車両は半透明達の憩いの場となっているようで、とても穏やかな雰囲気だった。
「なぁ、コイツらは襲ってこないよな?」
「たぶんな。敵意は感じられない」
三人は無害そうな半透明達の間を縫い、一つ前部の車両に向かおうとしていた。すると一人の半透明が声をかけてきた。見た目はなんだか半透明ながらも記者風だ。
「おいっ、あんたらもしかしてこの先の一両目に行く気か?」
「ん? ああ、そうなるな。何か用?」
どうやらこの先が先頭車両になるようだ。それにしても、半透明なのに元気があるというか、活気がある。風貌からしても死んでも職業病なのだろうか。
「いや、なんか見てたらそんな気がしてね。忠告だけしておこうと思ってな。ん? まさかとは思ったが、やっぱりあんたらまだ死んでないだろ? 生きたままこれに乗れるヤツなんているんだな。いったい何者なんだ?」
記者風の半透明はマキ達に対して興味深々だった。きっとカメラを持っていたら構えていただろうし、ボイスレコーダーを持っていたら口元に当ててきただろう。そんな勢いであった。
「ん、まぁなんて言うか、探偵? かな。ちょっと変わってるけどな」
いや『ちょっと』どころではなく、『そうとう』変わっているが。悪魔融合者に使い魔二人……。普通であるところが見当たらない。
「ふーん。こんなとこまで来るなんて、余程込み入った事情があるんだな。ま、それでも一両目には行かない方がいいぞ。なんでも、恐ろしいバケモンがいるらしいんだ」
「バケモン? バケモンならさっき二回ほど出くわしたが。まだそんなのがいるのか?」
ガシャドクロ、カマイタチに続きもう一体いるようだ。魔汽車はバケモン揃いなのだろうか。
「そ、そうなのか。よくわからないが忠告はしたぞ。あんたらはオレがなんと言おうがどうせ進むんだろ? 話しててそんな感じがするぜ。後は好きにしたらいいさ」
忠告してくれた記者風の半透明はササッとその場から去った。気を利かせて忠告はしたものの、効果なしと判断したのか身を引いたようだ。それとも、死んでもないのにこの魔汽車に乗り込めた理由を知りたかったが、どうもその興味を満たしてくれそうにないと思ったのだろう。
それにしてもバケモンか……さすがに連戦はキツいな。どうにか話し合いか素通りで、戦いを回避できないものか。
「マキさん、どうしますか? わざわざ忠告しにくる人がいるってことは、相当危険な相手ってことなんじゃないですか?」
最もな意見だ。だが、フジノジュカイに帰るためにはここで留まっているわけにはいかない。
「あっちに帰るためには、俺達に進む以外の選択肢はない。どんなヤツがいようが関係ない、前進あるのみだ」
ま、姉妹には言ってないけどフュージョンもある。何とか……なるさ。いや、なんとかするさ。
「マキ、そういえばさっきのカマイタチにやられた脚は大丈夫なのか? 次、また戦うかもしれないんだろ」
「いや、大丈夫だ。俺は特異体質で普通のヤツより再生能力が高いんだ。だから気にすんな、実はもう治ってる」
ほれっと言わんばかりに傷を負った脚を見せた。もちろん公言通り完治している。
姉妹は「じゃ。安心だね」と言い合って、それでその話題は終了した。特異体質については何も反応はなかった。
姉妹にとっては、そのあたりは既にスルー出来るまでにマキが『変わった』体質であることは認識しているということであろう。
マキ一行は、記者風の半透明の忠告を受け取りながらも帰る手段を探すべく、バケモンがいると噂される一両目の車両へ向かうのであった。




