第四話 レッツ・マキ車‼︎ 〜 不思議生物なんだな 〜
次の車両は、新幹線みたいに進行方向に向いた席がズラッと並んでいる構造だった。そこには半透明の連中が座っているようで、背もたれから飛び出た頭がいくつも見えた。この光景を前から見たら、結構不気味かもしれない。そう考えると最後尾から移動してきて本当に良かったと思う。
「け、結構いるな。マキ、早く先行けよ。あ、アタシ達は後ろからついて行くからさ」
姉妹はコートの後ろにサッと隠れた。素直に恐いから先に行って欲しいって言えばいいのに。コートを掴む手がブルブルと震えている。ていうか擬人化を解いてモノに戻ってればいいのに。
「んじゃ、しっかりついてこいよ! それではしゅっぱ……」
通り抜けようと一歩踏み出そうとすると、半透明の一人がゆっくりと立ち上がり、マキ達の方を振り返った。怨めしそうな目で見ている。姉妹の手にまたギュッと力が入った。
その一人に続くように座っていた半透明達が続々と立ち上がり、同じようにマキ達の方を振り返った。それはかなり異様な光景だった。
「な、なんだよ。お前らには用はねぇから大人しくしとけよ!」
マキは身構えた。
最初に立ち上がった半透明がノイズのような耳障りな声で答えた。
「オマエら、生者……ダナ。ホシイ、新鮮なカラダが。オマエらのカラダをヨコセ!」
そう言うと、周囲の半透明達がノイズ声の半透明の下に集まり、お互いの身体が触れると一つに融合していった。また一つ、また一つと融合していき、全員が一つとなった時それは起きた。
ノイズ声の半透明が「オォォォ!」と唸ると、みるみる大きなガイコツに変貌していった。座席を叩き潰し床に手を着くと、車両の天井すらも突き抜けて巨大化するのだった。それは下半身のない上半身だけの巨大ガイコツで、目が紫色に光っていた。
「ガシャドクロか⁉︎ 厄介なヤツが乗ってたもんだぜ」
ガシャドクロを見上げ目が点になっている姉妹に、魔Rockは頼まないで離れているかポケットに戻るか促した。
戦闘をラクしてはいかん。有事の時にだけその能力を発揮してくれればいい。
姉妹はとりあえず離れているを選択したようで、二人は大きく後退した。
ガシャドクロは骨の顎でカタカタ笑い、右腕を振り上げ叩きつけ攻撃を仕掛けてきた。それをかい潜ってかわすと、空ぶったガシャドクロの手は車両の床を強打することになった。その隙に脇腹目掛けて水平斬りの一太刀を入れようと飛び出したが、剥き出しの肋には効果が極めて薄い事に気付き、急遽斬り上げに切り替えたがそれも効果が薄かった。肋骨を二本斬っただけに終わった。
ガシャドクロはまたカタカタと笑い始めた。たぶん馬鹿にしているのだろう。そんな気がしてならない。
やはりコイツを始末するには、首の骨を落とすしかないだろう。首の位置まで高さがある、こんな時こそコレだろ。
「斬り裂け! 《空牙》‼︎」
切っ先から放たれた衝撃波はガシャドクロの首目掛けて襲いかかった。しかし、両腕でガッチリとガードされ、本来だったら貫通するハズなのだが思ったよりカルシウムが豊富なようで、骨に切れ目を入れただけだった。
ガシャドクロはそのガード状態から床を這うようにアッパー気味で左拳を放ち、命中寸前で突き上げた。
マキは力いっぱい放った一閃から体勢を戻す時間もなく、避けられずにその攻撃を受けてしまった。結果、思いっきり吹っ飛び、座席を三つ破壊してようやく止まることになった。
「おいマキ! 大丈夫か⁉︎」
キリカが叫び、姉妹は走り寄った。
「痛てて。あの骨ヤロー、ぜってぇタダじゃおかねぇ」
マキは座席の残骸を押しのけながら立ち上がり、服に付いた埃を払った。
あの骨ヤローを倒すには、どうやら直接斬るしかないようだ。さっき肋骨は斬れたので刃は通る。あとはどうやって首を叩き落とすかだ。ま、ここはやはり王道でいくべきだろう。
「キリカ、エレン、離れてろ。次はキメてくる」
二人はコクンと頷き後ろに下がった。大丈夫だ、こんなヤツなんてことない。
刀を構え、ガシャドクロに向かった。骨ね顎はまたカタカタと笑っている。
「おい骨ヤロー、のんきに笑ってられんのも今のうちだぜ⁉︎ 行くぜ!」
マキは真っ正面から突撃した。ガシャドクロの攻撃範囲に侵入したのか、リーチの長い打ち下ろしが飛んできた。そんな攻撃をサッとジャンプでかわすと、その大きな拳は車両の床を殴った。
「へっ、それを待ってたぜ!」
繰り出された右腕の肘の関節部を、落下の勢いを乗せて容赦なくブッた斬る。
ザシュン!
打ち下ろしを繰り出した右腕は、マキの関節部への斬撃によって見事に斬り落とされた。そのせいで前傾姿勢だったガシャドクロはバランスを崩し、前に倒れそうになっていた。しかし、残った左腕で床に手を着き、辛くもそれを阻止して態勢を立て直そうとしていた。
もちろんその好機を逃すことなく、体重がかかって固定された左腕をたたっ斬る。
ザシュン!
両腕を失い態勢を立て直せなくなり、狙い通り顔面から前に倒れてきた。
「オラオラっこれで終わりだ! 《瞬迅》!」
倒れてくるところに走り込み、下から首目掛けて一気に跳躍して斬り上げた。
ザシュン!
ガシャドクロは首と胴体が分断され、そのままズズンっと倒れ込み車両を揺らした。これで討伐完了ってな。
「おっ、や、やったのか⁉︎ すげぇじゃねぇかマキ! あんなデカいガイコツ倒しちまうなんてよ!」
「マキさん、やりましたね!」
キリカはその光景に興奮し、エレンは胸の前で小さくガッツポーズをした。
マキは刀を鞘に納めながら答えた。
「まぁ、そんな大したことなかったから。派手に攻撃くらったけど、ちゃんとガードしてたから見た目ほどダメージはくらってないし」
強さ的には中級悪魔くらいだっただろうか。この魔汽車にはこんなヤツらがぞろぞろいるのだろうか。おっと、これを忘れちゃいけない。
浮かび上がったとガシャドクロの魂が、黒のコートを通り抜けマキの身体に入って行った。マキにとってこれをしなかったら倒した意味がない。
「マキさん、今のは何ですか? 人魂みたいのがマキさんの身体に入っていきましたが」
そういえばこの姉妹には『吸魂』の話はしていなかった。ということでサッと簡単に説明した。
「へぇー。マキって意外と不思議生物なんだな」
「お前らに言われたくないわ!」




