第四話 レッツ・マキ車‼︎ (前編) 〜 魔汽車 〜
車両間の出入り口であるスライド式ドアを開け、最後尾の車両へと侵入した。するとどうか、外から見た時よりも中はかなり広くなっている。というか車両内部は空間が歪んでいるのか、外から見た車体の大きさと内部の広さがまったく合っていない。
さすが魔汽車というべきか、やはりただの汽車ではないようだ。
壁伝いに通路があり、向かいに個室が二つ並んでいるようで、ドアも二つある。
とりあえず後部側の部屋のドアを開けようと、そっと手を伸ばしたところだった。
突然「ボォー」っという音が辺り一帯に響いた。
汽笛だ。まさか……。
「おいっマキ! もしかして出発するんじゃねぇのか⁉︎ ヤバくないか⁉︎」
いきなりキリカが擬人化して声を上げた。続けてエレンも擬人化し「マキさん、どうするんですか⁉︎」と慌てて言った。
うーむ。調査も途中だし、ここで投げだしたら信用問題に関わる。べつに魔汽車に乗ってるからといって死ぬわけでもないだろうし、特に誰も咎めてこない。なんとかなる、だろう……。
そういうことで姉妹にとりあえず落ち着くよう伝えると、魔汽車が発車するのかガタンと車両に振動が走った。そしてゆっくりと車輪が回りだし、動いている感覚が伝わってきた。窓から外を見ると、暗い森の中へと進んでいるのか、木々がゆっくりと流れているのが微かに見える。やはり動き始めたようだ。
「さて、さっさと調査を終わらせて帰るとしようぜ」
姉妹はまだおっかなびっくりだが、小さい声で「うん」とだけ返事をした。
「マキさん、魔汽車って冥府行きなんですよね? ってことは死んだ人が行く所ですよね? そんな所に着いてしまったら、ワタシ達帰れないんじゃないですか⁉︎」
不安な顔でエレンが言った。
「だから着く前にさっさと切り上げて降りるしかないだろ。いつ着くかもわからんから、さっさと始めるぞ」
エレンの不安は正解だ。たしかに冥府に着いてしまったらどうなるかわかったものではない。あのハーデスとかいうヤツの釜に、無理矢理放り込まれてしまうかもしれない。そうなってしまったら……。
とにかく調査を始めよう。先ほど手を伸ばしかけた個室のドアを握ると、後ろの二人がコートの裾をギュっと掴んだ。きっと恐いのだろう。
構わず一気にドアを開けた。
……中には誰もいなかった。そのワンルームには簡易ベッドや椅子、テーブルがあるだけだった。
後ろで姉妹の「ふぅー」と息を漏らしたのが聞こえた。とりあえず何もいなかったので一安心したのだろう。
続けて前部側の部屋を開けてみた。
……っ! 高齢者と思われる半透明が、窓際に座って外を眺めている。……ちなみに窓から見えるものは景色と呼べるものではなく、黒そのもの一色だった。外はもうそんなに真っ暗闇なのだろうか。
「ねぇ、あのおじいさん、何してるの?」
脇の下から顔を出して覗いているエレンが、小声でボソボソと言った。
「知らん。次行くぞ」
ドアを閉めた。これでもうこの車両は調べ尽くしたことになる。特に手がかりもないので次の車両に行くとしよう。
車両を出て一つ前の車両に移動した。
途中、車両と車両の繋ぎ目を通過した時、もうすでにあたりは真っ暗になっており、森の中を走っていることすらわからないほどだった。進行状況はわからないが、まだ冥府までは時間があると信じたい。




