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Laugh Chaos  作者: signal.U
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第三話 ワタシ達『ディザイア・シスターズ』‼︎ 〜 ディザイア・シスターズ始動 〜

くっ……このままではマズい。こんな身動きできない状態で攻撃されれば、もろにくらってしまうだろう。アガレスで一気に片付けるってテもあるが、頭が痛くてフュージョンに集中できない。これではまともに悪魔融合すら果たせないだろう。


油断したわけではないが、こんな大したことないヤツにここまで追い詰められるなんて思いもしなかった。とにかくどうにかしなければ……。


「ヌハハハハハ! さっきまでの威勢はどこにいったんだかなぁ。それぇっ、もっと強いのを浴びせてやろう」

さらに強烈な《魔怪音波》がマキに襲いかかる。


ぐぁっ、あ、頭が割れる!


「ヌハっ! さぁこれで終わらしてやろう。《マックスボルテージ》‼︎」


グラサン悪魔の二の腕と胸板含めボディの筋肉がさらに盛り上がった。ただでさえガタイが良くパワーは見るからにありそうだったが、それにもっと磨きがかかった。


グラサン悪魔はその隆々とした筋肉に鋭い鉤爪を構えて、ズンズンと近づいてくる。


ここまでか……くそっ。


マキが心の内で諦めかけたその時、激しい歌声が静寂を切り裂いた。


「開けろトビラ! 覚醒という名のトビラをひらけぇ‼︎」


如何なる者も遮れることのない、アツい情熱を秘めた歌声にそれを盛り立てるエレキギター、そして鼓舞するかのように魂を燃え上がらせるドラムがリズミカルに鳴り響いた。


これは……魔Rockだ。あれ? 頭の痛みが消えた。しかもそれだけではない。何故だか身体が軽く、頭もスッキリとして神経が研ぎ澄まされていくのが自分でもわかる。


「おいマキっ、いつまでも寝てんじゃねぇ! シャキッとしろシャキッと! ついでにこいつも聴いとけっ!」


キリカがギョーンとギターに歪みを利かせまたギンギンとかき鳴らすと、ドラムを叩くエレンも続いて激しく乱舞した。


「吼えろ魂! Get on force!」


キリカがそう叫ぶと、今度は不思議と身体に力がみなぎってきた。これも魔Rockの力なのだろうか。


「えーっと、キリカとエレンでいいんだよな⁉︎ ありがとよっ! よくわかんねぇけど、おかげで助かったぜ」


「ああ、かまわねぇぜ! さっさとソイツをブッ飛ばしちまいな‼︎」


まさに元気百倍……いや、気分は三百倍であった。そんな満ち溢れたマキの姿を見たグラサン悪魔は、地団駄を踏みながら言った。


「クソっあと少しで殺れたのによ! キリカてめぇ……二人揃って演奏なんかしやがってなんなんだお前らは!」


「なんなんだって⁉︎」


キリカがそう言うと、姉妹は声を揃えて答えた。

「ワタシ達、『ディザイア・シスターズ』‼︎ 究曲の魔Rockをお届けするわ!」


エレンのドラムスティックのカウントダウンから、また激しい演奏が始まった。


すごい、どんどん力が湧いてくる……。エネルギーに満ち満ちているとは、まさにこのことだろう。


さてと。頭痛もなくなったし、身体中がみなぎってるし、もうやることは一つだな。


ブッた斬る!


「おう、グラサン悪魔。さっきはよくもやってくれたなぁ。誰が……最後だって?」


ザシュン!


グラサン悪魔の肉厚になっていた右腕がふっ飛んだ。《瞬迅》ですれ違い様に斬り飛ばしたのだった。


「い、痛え。ヒィィィ。」


グラサン悪魔は無くなった腕の付け根を抑え怯えている。もちろん容赦する気など毛頭ないが。


「えっ? だから、誰が最後なのか聞いてんだよ!」


ザシュン!


肉厚になっていたもう片方の腕もふき飛んだ。


「ぎゃぁぁ! 痛え! お、俺が最後、なのかなとお、思います。もうこのあたりで勘弁して……いただけないでしょうか」


人間の状態だったら泣きベソをかいているとこだろう。まっ、悪魔じゃ泣きベソはかけないだろうがな。


「そうか、助けて欲しいか。ふーん……。でもお前悪魔だし、そりゃ無理だ。あばよ」


ザシュン!


容赦のない斬撃がグラサン悪魔を真っ二つに斬り裂いた。


やはり魔Rockの効果なのだろうか、パワーもスピードも反応速度も明らかにブーストされている。


マキは強化された自分の身体能力に驚いた。


倒れたグラサン悪魔の身体は次第に蒸発が始まり、やがて魂だけが残るのだった。


もちろんそれを吸収し、これで綺麗さっぱりと戦闘が終了した。


邪魔なのは片付いたので、あとは『ディオニューソスのピッグ』と、いつのまにか無くなったバチを探して、ジィさんの元に持って帰るだけだ。なんてイージーなミッションなんだ。


「おーい、そこの姉妹。もう片付いたぞー。魔Rockありがとよ!」


声をかけたが返事がない。おまけに演奏も止まらない。


「キリカ、エレン! もう終わったってば!」

大声を張り上げた。二人はやっと声に気づき演奏を中断した。


「いやぁ、ゴメンゴメン。ひさっびさに一緒に演奏したから、つい楽しくなっちゃって。夢中になってたわ」


「お姉ちゃんに同じくすいません。つい楽しくて、えへっ」


二人は揃いも揃って後ろ頭をポリポリしている。ま、べつに構いやしませんけど。


「二人のおかげでほんっと助かったぜ! あの程度のヤツだったら、いつもは楽勝なんだけどな。まさかあんな特技があったなんて予想外だったぜ。危ないとこだった」


もちろん、あのアホくさい《マックスボルテージ》とかいうのではなく、《魔怪音波》の方である。地味だがその威力は折り紙つきだった。


「いえいえ、こちらこそありがとうございました。マキさんのおかげで、またこうしてお姉ちゃんと一緒になれましたので」


二人は向かい合って「ねーっ」とやっている。どんだけ仲が良いんだか。


「ところでキリカ、『ディオニューソスのピッグ』って持ってない? 俺、それ探しに来たんだけど」


キリカもエレンも「えっ⁉︎」と言って顔を見合わせている。あれ、俺なんか変なこと言ったか?


「持ってるもなにも、お目当てはアンタの目の前にいるじゃねぇか。何言ってんだよ」


えーっと、さっぱり訳がわからない。そうだ、エレンの方にも聞いてみよう。


「エレン、お姉ちゃんの言ってることが俺にはよくわからないんだけど。詳しく説明してくれると嬉しいんだが」


エレンは悪戯っぽく笑って答えた。


「だからぁマキさん、お姉ちゃん自体が『ディオニューソスのピッグ』という意味です。ちなみにワタシはなんとなくお気づきになったかもしれませんが『ディオニューソスのバチ』です。そもそもワタシ達は、音楽好きのディオニューソス様の魔力によって生みだされた『使い魔』なのです。普段はピッグやバチの姿でいますけど、今のように魔力によって人間の姿にもなれるわけです」


へぇー……。えぇっそうなのっ⁉︎ ああそうか! どうりでエレンの出現と同時にバチが消えたわけだ!


「ピッグでいる方が魔力を使わないで済むからラクなんだけどねー。ま、たいして消費もしませんけどね」


と、キリカ。どうやらそうゆうことらしい。


「ところでマキさん。今回のこともありますし、ワタシ達がいた方が何かと役に立つのではないでしょうか。魔Rockの威力もおわかりいただけたと思いますし、それにワタシ達には行くアテもありませんので、しばらく一緒にいさせてもらえませんか?」


突然の居候(いそうろう)申請の申し出だった。たしかにいてくれたら心強いし、今回の大きな貸しを返すためにも受け入れるべきであろう。


「そうだな、じゃあ一緒にいてもらおうかな。ジィさんが何て言うかわからんが、俺は大歓迎だ」


現状としては、キリカはグラサン悪魔を倒した俺が所有者になったわけだが、エレンはジィさんに所有権があるということになっている。離れ離れはかわいそうだし、何しろ二人の魔Rockの効果は絶大だ。是が非でも二人セットで側に置きたい。


しかし、一つ気になるのは姉妹を養っていけるかどうかだ。いつでも金欠気味なので、そこは自信が持てない。まぁ、元所有者ということで、ジィさんに少し援助させるのも最悪アリだろう。あまりそういうことで頼りたくはないが。とりあえず、どうにかなりそうではある。


「じゃ、よろしくなマキ! アンタといれば音楽は出来るし、魔力を有効活用できるし、やりたいこともできそうだしで一石三鳥だぜ‼︎ なぁエレン」


「うん! マキさん、ワタシ達のことよろしくお願いします。……って、お姉ちゃん一石三鳥とか、それ言わなくていいとこじゃない⁉︎」


ということで、俺にとってもこのディザイア・シスターズにとっても、一緒にいた方が幸せなわけだ。どうにかジィさんに話をつけよう。


「マキさん。ワタシ達、魔力をいっぱい消費して疲れたので、一度モノに戻りますね」


「もしアタシ達を呼び出したくなったら、そのピッグとバチを掲げて『いでよ! ディザイア・シスターズ‼︎』と叫んでくれよな! すぐに擬人化して究曲の魔Rockをお届けするぜ‼︎」


キリカは屈託のない笑顔でニコニコしている。反対にエレンは顔を赤らめ、姉に抗議を始めた。


その……召喚みたいの、マジでやるのか?


「なんか恥ずかしいなそれ。やだよ」


「はぁ⁉︎ やった方がモチベーションがアガるだろ! わかってねぇなマキは」


エレンがマキに擦り寄り耳打ちした。


「実際は普通に話しかけてもらえれば大丈夫ですし、必要とあらばワタシ達の判断で擬人化しますのでご心配をなく」


ということだ。キリカは召喚されるのに何かスパイスが欲しいだけなのだろう。まぁその楽しさ的なものもわからなくもないが。


「わかったよ。だけどその時の気分次第でなっ!」


それを聞いた姉妹はビッと親指を立て、静かにモノに戻るのだった。


ピッグとバチは、マキの羽織るコートのポケットに勝手に納まった。どうやらここが定位置になるようだ。


さて、最後の仕上げにジィさんの元へ向か……おうとしたが、おそらくこの時間ではもう閉店しているだろう。すっかり夜も更けている。


ということで、今日はゆっくり休んで、マキは翌日にのんびり向かうことにするのであった。

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