第三話 ワタシ達『ディザイア・シスターズ』‼︎ 〜 やっと俺の出番 〜
「お前らさえ来なければ……お前らさえ来なければ今まで通り上手くいったのによ! クソっもうどうにでもなりやがれ!」
グラサン男がそう嘆くと、背中に黒い羽が生えた。その羽を羽ばたかせこちらを向いたまま後退し、ステージの方へスライドして行った。
「ヌハハ! 悪魔に与えられたものはソイツだけではない。悪魔の力も手に入れたのだ! ヌハハ、いでよ邪なる者達よ!」
グラサン悪魔の後方に二つの空間の歪みが出現し、そこから一匹ずつ人型をしたコウモリが出てきた。
「へっ、やっと俺の出番か。今回は話し合いで解決するつもりだったが、悪魔相手でそっちがその気ならやるっきゃねぇわな。キリカとエレンだっけか? 死にたくなかったらお前達はここで大人しくしてるんだぞ」
二人は無言でマキを見てコクコクと頷いた。それを確認しグラサン悪魔に向かって走りだすと、人型コウモリが「ギッギッ」と鳴き滑空して向かってきた。
「いくぜ! 《瞬迅》ッ‼︎」
走りながら右足を踏み込み、その踏み込んだ力と脚力を爆発させ、一気に間合いを詰め斬りつける。
ザシュン!
その一瞬に気づくことすら出来ない人型コウモリの身体は、滑空中にそのまま真っ二つに斬り裂かれ床に滑るように着地した。
仲間がやられたことに気づいたもう一方の人型コウモリは「ギィー!」と奇声のようなものを上げ、臆することなく羽を羽ばたかせて向かってきた。
空中滑空からの引っ掻き攻撃をスッと顔の移動でかわし、すれ違い様に膝蹴りをボディにかました。思わずくの字になった人型コウモリを、後ろ首めがけて一気にたたっ斬る。
ザシュン!
首と身体が別れた人型コウモリが床に転がった。
戦闘不能となった二匹の身体は蒸発し、小さな魂が浮かび上がった。もちろんそれを抜け目なく吸い取る。
「ぬ、ヌハハ。なんなんだお前は。悪魔をなんでもないかのように迎え撃ち、魂まで吸い取るなんて……。どうやらお前もこちら側の人間のようだな。ヌハハハハ! こいつは愉快だ!」
「お前なんかと一緒にすんなボケ! こちとられっきとした人間だっつーの!」
かなり変わってますけどね。
「まぁいい。さて、次はどうかな」
グラサン悪魔は空中に飛んだまま、指をパチンと鳴らした。そうすると先程の人型コウモリが出てきた空間の歪みから、狼のようなのが出てきた。いや、よく見るとネズミの化け物だった。鋭い目に獰猛そうな歯、おまけに二足歩行だった。そんな化けネズミがワラワラと出てきた。
「おいおい、どんだけ出てくんだよ!」
ざっと十五から二十匹といったところだろうか。ステージが狭く感じる程だった。
相変わらず余裕をかまして滞空しているグラサン悪魔は、ニヤニヤとしながら「行けぇっ!」と号令をかけた。
すると化けネズミたちは一斉に走って向かって来た。さすがにこんなに大勢の化けネズミが一斉に向かってくれば、とんでもなく迫力のある光景だった。しかし、それだけだ。
「数だけ増やせばいいってもんじゃねぇんだよ! 斬り裂け《空牙》ッ‼︎」
納刀状態から力いっぱいに横薙ぎ一閃を放つと、鋭い衝撃波が飛んで行った。その剣閃の放つ衝撃波は、化けネズミの群れを真正面から襲う。先頭の化けネズミから真っ二つに切り裂いて行き、何事もなかったかのように最後尾の一匹まで突き抜けていった。ステージを狭く感じさせる程の群れは、すっかりキレイさっぱり全滅したのだった。
そしていつものように蒸発する死体から小さな魂が浮き出し、その魂の群れを一つ残さず漏れなく吸い取った。その様を見たグラサン悪魔は「クソっどいつもこいつも使えねぇな!」と叫ぶのだった。
「こんなザコ、いくら群がったってザコには変わりねぇから。めんどくせぇから、さっさとお前がこいよ、グラサン悪魔」
マキは人差し指を立て、クイクイっと煽り挑発した。
グラサン悪魔はそれに明らかにムッとした表情をしたが、それを隠すかのように冷静を装って言った。
「フン、いいだろう。コイツらでは相手にならないようだからな。この俺、直々にお前の相手になってやろう」
グラサン悪魔はステージに着地すると、身体に力を込める動作に入った。するとどうか、見る見るうちに大きな人型コウモリに変貌していく。さっきの二匹の人型コウモリ達とは違い、ガッチリとした体格で比較にならないほどデカい。いかにもヤツらのボスですって感じだ。
「ヌハハ! この本気の姿を見せるのは、お前が最初で最後だ!」
マキは刀の背で肩をトントン叩きながら言い放った。
「あぁそうだな。お前、ここで終わりだもんな」
「そういう意味ではないっ! お前がここで死ぬのだ! このっナメ腐りやがって‼︎」
激怒したグラサン悪魔は、両翼を大きく広げ眼を光らせると、こちらに力強く念じ始めた。
何をしているのかと思ったが、すぐにその効果が現れた。ぐっ……頭が痛い。思わず両手で頭を抱えた。
「ヌハハハハっ! どうだ、俺の《魔怪音波》の威力は⁉︎ それそれ、もっと強烈なのをいくぞぉー⁉︎」
「クソっこんな攻撃に! ぐあぁぁぁっ」
頭痛がもっと酷くなった。地味だが効果は抜群だ。このままではマズい、今襲いかかられたらまともに動けやしない。
「さぁさぁ、どうする? やはりお前はここで終わりなようだな。ヌハハハハハ!」
マキは《魔怪音波》の呪縛から逃れられず、ただただもがくしかなかった。
怪音波を《魔怪音波》に修正しました。




