第三話 ワタシ達『ディザイア・シスターズ』‼︎ 〜 バチは何処(いずこ) 〜
次の日、骨董屋『萬マ殿』に向かい早速ジィさんに図書館で得た情報と、振動についての報告をした。
「マキよ、ご苦労じゃったの。眼鏡をかけたスラッと長身の司書ちゃんはおらんかったかのぉ? あのねぇちゃんはの、ツンっとした顔に似合わずいい尻をしてるんじゃよ。そりゃあもう、司書ちゃんの中では一番じゃの!」
おそらく鍵付き扉まで案内してくれた眼鏡美人のことであろう。
頭にセクハラ場面をフラッシュバックさせているのかニヤニヤとしている。加えてヨダレも垂らしている。どうやら出禁の処置も効果がないようで、まったくと言っていいほど反省の色はない。やれやれ。
「元気なのは結構だけどよ、あんまり周りに迷惑かけんなよ。出禁になったんだろ、少しは反省しろや!」
「な、なぜそのことを⁉︎ むむ、若いのに怒鳴られるのは少し胸が痛むの」
心なしか、しょぼーんとしている、ように見える。ジィさんのことだ、ホントのとこはわからん。
「お、ところでマキよ。特別区域のメガネ君は元気じゃったかの? 彼はワシの良き理解者での、よく一緒に話しをしたもんじゃ」
この気持ちの切り替えの速さには感心といより、ほとほと呆れる。ついさっき少し胸が痛むとか言っておいて、全然そうだったようには見えない。もういいか、細かいことを気にしていると疲れる。
「ああ。あの図書館で唯一ジィさんを心配してた彼ね。よろしくだとよ」
それを聞いてジィさんは嬉しそうだった。どうやら相思相愛なようだ。話しのわかる相手というのは、誰にとっても大切な存在なのであろう。
「そうじゃったか! 次行った時はワシからもよろしく言っとったと伝えてくれい。してマキよ、バチの振動の件じゃがどうするかの。ピッグもあるならやはり音楽関係をあらうべきかの」
まぁ、普通に考えればそうだろう。
「ワシの長年の勘じゃと、片方が活性化しとる時にもう片方がそれに共振しとるんじゃないかと思っとる。どうやら本来は二つセットみたいじゃしの。じゃから、バチが振動を起こした時はピッグがどこで使われとると考えるのが妥当じゃと思うんじゃが」
ジィさんは活き活きとして言った。余程自分の考えに自信があるのだろう。
「へぇ、ジィさん冴えてるな。たしかにそれだと辻褄が合うような気がするな」
「じゃろ? バチは結構昔からワシが持っとったんじゃが、振動するようになったのはここ半年くらいからで、それまでは微動だにしていなかったと記憶しておる。ということはじゃ、この半年の間でバチにとってピッグに何か起き始めとるということじゃ」
冴えに冴えまくったジィさんの推測である。さらにそれは続いた。
「ここ最近で狂信的に人気があるバンドを調べ、かつ振動のあった昨日の夕方にライブかなんかしとるのを探せば、ピッグにたどり着けるじゃないかの。どうかの?」
一気に答えに近づいた気がする。さすが、長年生きているだけあって鋭い読みだと思う。
しかし、ある疑問がマキの頭をよぎった。
「ピッグを探すのはいいんだけどよ、本当に見つけた場合はどうすんだ? 持ち主が黙ってないだろ」
「そうじゃのぉ……出来れば譲ってもらう方向で頼む。今までうんともすんとも言わなかったものじゃが、二つ揃えば効果を発揮して素晴らしい研究になるやもしれん」
まぁ研究に使うってんなら協力してもいいか。一応世話になってるわけだし、何かこちらにも見返りがあるかもしれない。
「もし持ち主がゴネるようならワシの所に連れてきてくれぃ。金で解決したるわい! でももし、安く済んだらおぬしへの小遣い、もっと上乗せしちゃるぞ」
さすがジィさん、太っ腹だね!
「マジで⁉︎ なるべくタダで貰えるようにがんばっちゃうぜ! じゃ、調査するから一旦帰るわ」
「うむ。では良い報告待っとるぞー」
店先まで見送ってくれ、ジィさんはダバダバと大きく手を振った。
ジィさん、俺への金用意して待ってろよ!
マキは萬マ殿を出発し、急ぎ事務所に戻るのだった。




