第一話 『変わったの専門』なんでね 〜 現場調査 〜
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車を走らせること三十分が経過し、現場に到着した。来る途中に警察官やそれらしき人物とすれ違ったが、もう現場検証はひと段落ついたのか、現場周辺には姿が見えなかった。
車をテキトーなコインパーキングに留め、車を降りた。
なんの変哲もない住宅街で、下町のような古めかしい家々が建ち並んでいるかと思うと、最近できたばかりなのか、綺麗な外装の鉄筋コンクリートマンションなどもあり、ごちゃごちゃと家屋がひしめいていた。
大通りをすり抜け、道を奥に入っていくと、家々の背の高い塀や家壁で囲まれた路地に行き着いた。四方八方に伸びた路地は、周りの建物に日差しを遮られ、まだ昼過ぎだというのに薄暗い。
そんな路地をカオリを先頭に進んで行くが、いっこうに現場に辿り着かないでいる。
「カオリちゃん、サヨちゃんが襲われた場所ってまだ着かないの?」
「えーっと、次はこっちですね。で、次は右に曲がって……」
まるで迷路のようだ。こんな分かりにくい場所には住みたくないなと心底思う。まぁ、住むことはないだろうが。
「カオリちゃん、よく道わかるね。俺もう車まで戻れないかも」
「そうですね、私も覚えるの少し大変でした。あっでもほらっ、あそこですよ」
カオリが示した場所にはまだ血糊が残っていて、傍に花が供えられていた。
どうやらサヨの殺害現場はここで間違いないようだ。カオリは花のところで膝をつき、手を合わせた。
「サヨ、あなたの無念を晴らしてくれる人、連れてきたよ。遅くなってごめんね」
カオリは小声で呟いた。マキも隣で膝をつき、一緒に手を合わせた。
少しの間の沈黙。
「さて、仕事開始とするかね」
マキは立ち上がって、辺りを注意深く調べてまわった。しかし、血糊以外何も注目すべきものはないようだ。……不自然な地面のヒビ以外は。
「たぶん、相手はかなりデカいやつかもしれないね。このヒビ、ソイツが付けたかもしれないからな」
カオリも近づいて来て、ヒビを見て言った。
「へぇー、なんですかねこのヒビ。どうしたらこうなるんだろ。えとっ、ここにだけしか出来てないみたいですね」
辺りを見回しながら言い、さらに続けた。
「どうですか、マキさん。犯人わかりそうですか? 他にも手掛かりになりそうなのありそうですか?」
「いや……ないな。さてどうしたもんか」
犯人も手掛かりも全然サッパリだ。ただそれなりにデカいヤツを相手にしなければならないのは確かなようだ。
ここまで来たのはいいが、わかった事と言えばそのくらいで、決定打になるようなものは見つからなかった。
どうすれば犯人と接触できるだろうか。ここは刑事さながら、張り込みを行うしかないのだろうか。しかし、それだと効率が悪い。いつどこに出没するのか特定できないので自分一人では範囲が広すぎて、とてもではないがマークしきれない。
なにかもっと他に情報が得られれば……もっとカオリから情報を引き出せないだろうか。
「カオリちゃん、もしかして他の犠牲者ってみんなこの周辺だったりする?」
「え? まぁそうですね。この周辺だったり、そう遠くはない所だったと思います。しかも、しかもですよ⁉︎ 被害者は全員若い女の子で、みんな日が落ちてからの時間に襲われているみたいなんです!」
カオリは怒りで興奮しながら「許せないですよね‼︎」とさらに言い放った。
……まさかカオリがここまで決定的な情報を持っていたなんて予想外であった。やはり当事者の関係者は、なにかと有益な情報を持っているものだ。
「それは許せんな! でもそんだけの情報があれば充分だぜ‼︎」
マキは嬉々として答えた。
カオリはなにが充分なのか、わけがわからない様子ですっとぼけた顔をしている。おまけにゆるふわ頭の上には明らかに『?』マークが浮かんでいる。
「だからさぁ、カオリちゃん。相手の情報はほとんどないけど、出現するパターンはわかってるわけだ。追いかけるんじゃなくて、逆におびきだして捕まえる戦法ね。ヤツはこの周辺の夜道を歩く、若い女性を狙うゲス野郎だ。あとは言わなくてもわかるよな?」
カオリはハッとして言った。
「えぇっ⁉︎ それって私が囮になるってことですかぁっ⁉︎」
「うん、そうそ。でも大丈夫! ちゃんと守ってあげるからさ‼︎」
今はこの方法しかないだろう。てっとり速く、なおかつ確実だ。ただしカオリが襲われるリスクはあるが、しっかりと守ってあげれば問題ないだろう。
「じゃあ、夜までこの辺で待とうか」
少し間を置いて「……わ、わかりました」とカオリは渋々承諾した。
友達の無念を晴らせるのならば、恐くてもやるしかないと思い、決心してくれたのだろう。たぶん。
あとは作戦開始を待つだけだ。




