第二話 ただもう一度だけでいいから微笑んでほしかった 〜 狭間の裁判所 〜
あぁ、ここはどこだろう。いきなり目の前が真っ白になってしまったな。私はいったい……。
ふと目の前に、長いサラッとした髪をした女が背中を向けて現れた。
「れ、レイコ? レイコなのか⁉︎ おい、レ……」
言いかけたところで、どこかで聞いたことのある声が響き渡った。
「ゲハハハハ! ご機嫌よう、娘をも生贄に捧げる愚か者よ。今回はこれから天に代わってキサマに判決を言い渡すとする!」
「お、お前は‼︎」
コイツのせいで、レイコの蘇生どころか俺はあんなバケモノに!
「まず一つ。死者蘇生を行うことによって、自分自身とその女性の運命を無理矢理ねじ曲げようとした罪」
ハーデスはその骨の指を一本立てた。
「続いて二つ。死者への冒涜を行った罪」
ハーデスは静かに指をもう一本立てた。
死体から臓器やその周辺のモノを取り出したことだろう。しかし、コイツを呼び出すには仕方がなかった!
「三つ。関係のない人達を巻き込み危害を加える、または殺害した罪。並びにその家族や周辺の人間達を不幸にさせた罪」
ハーデスは計三本の指を立てた。
レイコのためには仕方のない犠牲だった。たしかに犠牲になった人やその周囲の人たちには申し訳ないが、私にはこれしか方法がなかった。
ハーデスは大きく息を吸って、一気に吐き出すように判決を轟かせた。
「以上の罪状から、キサマは冥府を経由せずに地獄行き直行の判決を言い渡す!!」
「なっ……そんなむちゃくちゃな! 確かに思うところはあるが、私はレイコにただもう一度、もう一度だけでいいから微笑んでほしかっただけだ‼︎」
「ゲハハハハ! そんなことは知るか! 罪状を付け加えるのなら、自分の娘を犠牲にしようとした事も充分に罪深いのだ‼︎ いいか? キサマはもう地獄行き直行で決、定、だっ!」
ハーデスが最後の判決を言い渡すと、タカシの足元から無数の血濡れた手が生え、タカシを掴み地中へと引きずり込むのだった。
「ぐあ、や、やめろ! 離せ‼︎ レイコ、助けてくれぇぇぇ‼︎」
しかし、長い髪の女は振り向くこともなく、背を向けたまま歩き去って行ってしまった。
無論、タカシのそれは地獄行き直行便だったということは言うまでもない。




