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Laugh Chaos  作者: signal.U
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第二話 ただもう一度だけでいいから微笑んでほしかった 〜 秘密機構の会員特典 〜

タカシとメルフィは教団長室向かいの部屋に移動した。中はテーブルと椅子、パソコンで構成された質素な小部屋だった。


メルフィは机のそばにある椅子にタカシが座るよう促し、自分は離れたところにあった椅子を持ってきて、机を挟んでタカシの向かいに座った。そして件の『バルドゥス奇書』を前に置いた。タカシは思わず息を呑んだ。


「さて、ダンナさーん。これからゆっくり二人っきりでお話ししましょう」


コホンとメルフィは咳払いをした。


「まずはダンナさんがこの教団に入って頂けよるようお願いしたいのですが。それが満たされなければ『生き返らせる方法』をお教えすることはできません」


メルフィは机に置いていた『バルドゥス奇書』を掴み、自分の方へ寄せた。


タカシは喉から手が出るほどそれが欲しかったが、冷静になろうと努めた。なにせまだこの教団について何も知らないし、ここまで来て言うことではないが、そもそも死んだ人間を生き返せるなんて本当に可能なのかどうかわからない。功を焦ってはいけないと自分に言い聞かせた。


とりあえず、この教団についての説明をしてもらい情報収集から始めようと思った。


「あの、先ほど途中で終わってしまった『ドムドラムス教団』についての説明をお願いしたいのですが。それを聞いてからでも遅くはないですよね」


とはいうものの、どんな組織でも断るつもりはないが。もっといえば断れない。レイコを生き返らせる方法が目の前にあるのに、断れるわけがない。


頭では冷静になってちゃんと見定めようと考えているが、気持ちは頭と乖離しているのかクールではない。


「はいもちろんでーす。我が『ドムドラムス教団』とはまさに『自由』を主軸とする教団なのです。その『自由』の定義とは、神に縛られない魂の自由ということです。分かりやすくいうと、何かを成すことは、神の慈悲でも定めされた運命でもない、己が力によって成し得た功績として捉えるということです。ですから、神への祈りも信仰も偶像への崇拝もすべて必要なく、ただ己を磨く努力だけを信じる集団なのです。すなわち、『教団』というよりは『研究機関』に近い組織なのでーす」


メルフィは意気揚々に両手を広げてニヤリとした。


「我が教団は研究に必要な『手段』『空間』『情報』を与えましょう。『手段』は研究に必要な道具、『空間』はこの支部内で研究ができるスペース、『情報』は過去の参考になりそうな報告書やダイモンさんの助言を得ることが出来るということでーす。その代わりに、研究した内容と結果については、報告書として必ずダイモンさんに提出して頂きます」


そうか、さっき教団長が見ていたのは誰かの研究報告書だったのか。でもみんな何の研究をしているのだろう。


メルフィは上機嫌に先を続けた。


「さらに、特典がありまーす。オモテの世界には出回らない『禁書』や『密書』のような特殊な物も閲覧可能でーす」


「オモテの世界とは実社会ということですか?」


「そのとおりでーす。なので機関や国が存在すら知らない貴重な資料などを、多数所有していることになりまーす」


メルフィはニカっとした。ここ一番キラッとした気がした。


「まさしくこの『バルドゥス奇書』もその『禁書』の一冊なのでーす!」


奇書を自分の顔の横に取り上げ、パチっとウインクした。


おいおい、この教団はとんでもない組織なんじゃないのか? 死者蘇生以外にもヤバい資料がたくさんあるってことじゃないか。まったく信じられん。


「私なんかが入団していいのであれば、もちろん喜んで。そもそも、私に選択の余地などありませんでしたが」


そうだ。その奇書を手に入れるためには入団以外に方法はない。


「そうですかっおめでとうございます! 今からダンナさんは、晴れて我が『ドムドラムス教団』の一員となられました‼︎」


メルフィはパチパチと拍手した。


「こ、これはどうも。よろしくお願いします」


あっさりと入団できた。とんでもない組織にも関わらず、なんだこの軽さは。この組織はいいのか、こんなので。


「では、ダンナさんにはこの教団員の証であるエンブレムを差し上げましょう」


内ポケットから取り出されたエンブレムを受け取った。そのエンブレムには黒地に赤の五芒星が、そしてその中央に蛇が描かれていた。


「これを次から外の門番さんに見せれば、胸倉を掴まれたりせずに何事もなく入れまーす」


それは助かる。あの馬鹿力に締め上げられるのはもうごめんだ。


「あ、それとつけ足しですが、オモテの世界で教団の話は絶対にしないでください。これでも我が教団は秘密の会員制ですからね」


こんな貴重な資料をたくさん持っているなら当たり前だろう。しかし、もしうっかり口が滑ってしまったらどうなるのだろう。団員なら知っておくべきであろう。


「もし、もしですよ? もし話してしまった時にはどうなるのでしょうか。強制的に脱退ですか?」


メルフィは無言で首を横に振り、真面目な顔で答えた。


「いえ、ダンナさん。処罰はそんなに甘くはありません。言った人はもちろん、聞いた人も即刻死ぬことになります。ですので絶対に口外しないことです。いいですね?」


「は、はい。肝に銘じておきます」


絶対に誰にも話さないことを心から誓った。自分だけでなく相手まで殺害されるなんて迷惑どこの話ではない。やはりとんでもない組織なようだ。

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