第二話 もう一度だけでいいから微笑んでほしかった 〜 兆し 〜
「いやぁ、アナタだいぶ思い詰めてますね。どうされたんですか? ちょっと話してみませんか? もしかしたら『いいこと』あるかもしれませんよ? フッフッフ」
庭の縁側に座り宙を仰いでいると、いつのまにか隣に派手なスーツを着た男が座っていた。
金髪でツーブロックに七三分け、ピンクのスーツに白のスラックス、きわめつけは黄色のネクタイときた。小麦色に日焼けした肌も相まって外人のようにも見える。
それほどまでにド派手な男に気がつかなかったなんて、自分はどれだけぼぅっとしていたのだろうかとタカシは呆れた。それにしても、いったいいつのまに……。
「それが実はちょっと前に、妻が亡くなりまして。私はそのショックのあまり、こう……立ち直りができないといいますかね、お恥ずかしい話かもしれませんが」
「そうですか、そうですか! それは大変お辛いことと思います。お気持ち、お察し致しますよ」
派手なスーツの男は胸に手を当て、不敵にニヤりとしながら言った。
なんなのだろうか、この人。なんか態度が軽くて腹が立つし、ド派手な格好が肌に合わない。さっさと帰ってくれないだろうか。
「あの、どのようなご用でいらしたのかは存じませんが、お引き取り頂けないでしょうか。私もこんな状態ですので」
派手なスーツの男はズィッと乗り出し、顔を近づけてヒソヒソ声で言った。
「いいんですか、ワタシのこと追い返してしまって。知ってるんですよ、『生き返す方法』……をね」
タカシは一瞬自分の耳を疑った。この男は今、たしかに『生き返す方法を知っている』と言った。 レイコを生き返すという意味で言っているのだと思うが、本当であろうか。
「あの、私の聞き間違いかもしれませんが、『生き返す』って言いましたよね? それってもしかして……」
「そうですとも、ワタシはアナタの奥さんを『生き返らせる方法』を知っています!」
派手スーツは「任せてくれっ」と言わんばかりに胸をドンっと叩き、自信満々に答えた。
嘘だろ……そんなことが現実に出来るのだろうか。
「それが出来るんですよ、ダンナさぁん」
また軽快なノリで言った。
信じられん。この男は非現実的なことを可能だと、さも当たり前のように言い切っている。ん、待てよ。今口にしていないのにそれに返すように言わなかっただろうか。気のせいだろうか。
「ダンナさん、ワタシについて来ますか、それとも聞かなかったことにして、ずぅっとこうしていますか? どっちですか⁉︎」
とは言いつつも、期待の眼でこちらを見ている。
「ま、待ってください! もちろん行きますとも! 今準備してきますので少し時間をください」
「ええ、いいですとも! さぁ、準備をしてくるといいでしょう!」
半ば信じ難いが、もう一度妻に逢えるのだったら藁にもすがる思いだ。この機会を無駄にしてはならない。
タカシはそう思い、疑いつつも期待を胸に寄せて、すぐに外出の準備を済ませた。
「お待たせしました。それではお願いします」
「来ましたね、ではさっそく行きましょう!」
こちらを向いてニカッとスマイルした。白い歯がキラッと光った……ような気がした。
この珍妙な派手スーツ男と共に、どこに向かうのかわからないが出発することになった。いったいどこに向かうというのだろうか。
しかし、この男との出会いが、タカシの人生を捻じ曲げ、あらぬ方向に導いていることは、この時のタカシには知る由もなかった。




