元アイドルの男〈3〉
自分の人生を話し終わって、俺は、ふぅ……と、ため息をついた。
「俺はこんな人生だったんだよ。どうだ?別に面白くもなんともないだろ?」
「あの……。」
「言いたいことがあるならはっきり言えよ。ま、どうせ、『期待したほどじゃなかった』みたいな感想なんだろうけどな。」
「いえ……。その逆で……。すっっっごく感動しました!」
「は?」
「お仲間の皆さんと、頑張って、6年目に突入!……そんな時に、マネージャー兼プロデューサーの人がきっかけで、アイドル生命を絶たれるなんて……。感動しましたっ。」
「そんなに感動したんなら、きちんとさっき言ったことやってくれよ?」
「もちろんです!私が責任もって、ご案内させていただきます!」
「んじゃあ、どうしようかな……。才能ってのは、どこで、どういう風に買えるんだ?」
「こちらの方で買えますよ!私のお願いを聞いてくださったので、特別にVIPルームへお連れ致します!」
「VIPルーム?普通のところと何が違うんだ?」
「主に違うのは、才能の種類ですね。普通の場所だと、100種類ですがVIPルームだと、1000種類にも才能が増えるんです!」
「その900種類は何なんだ?変な才能じゃないだろうな?」
「もちろんです!1000種類のうちの500種類は、普通の場所のものですし……」
「ちょっと待て!なんで、100種類しかないって言ってたのに、400も増えるんだよ!おかしいだろ?!」
「その400は、元の才能がレベルアップしたものです。才能には、5段階階級があって、残りの500も100個の才能がそれぞれ、レベルアップしたものなんです。」
「ふーん。んじゃあ、種類でいうと、100しか増えていないんだな?」
「そうなりますね。」
「んで?ここで才能を買ったら、どうするんだ?」
「はい。ここで才能を買ったら、あちらにある、【現世への扉】に向かって頂き、そこでサイコロを振っていただきます。」
「サイコロ?なんのために?」
「次の人生での、職業を決めていただくためです。出た目の数が多いほど、人気者の職業に就けます。」
「人気者?アイドルとか、研究者、芸人とかか?」
「はい、ですが、目が少なければ、あまり好ましくない職業に就くことになりますね。」
「他、例えば……?」
「うーん……。私が知っているのだと、一生ホームレスだとか、ブラック企業のパシリだとかですかね。極端な例ですが。」
「どうにかして、目の数を上げる方法はないのか?」
「ありますよ。一つだけ。」
「どうやるんだ?」
「才能を買う場所で、サイコロを買ったり、サイコロの目を買ったりできるんです。」
「なるほどな……。よし大体仕組みはわかった。んじゃあ、例の才能を買う場所へ案内してくれ。」
「承知いたしました!」
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