見つかったよ
実の兄・恒生から、処刑前にあいたいと申し出があり、
魁皇は再び彼と再会する。
そしてそこで、信じられない言葉が告げられー
尾上家は呪われた家系だー
昔、近所の人達が噂していたのをよく覚えている。
そう思われても、おかしくはないと思った。
俺の父はかなりの酒好きで、何もかも暴力ですますような人だった。
父との思い出は、この体につけられたあざが証明している。
母もそんな父に何も言えなかった。
そんな暴力親父が消えた。忽然と。
母からは事故で亡くなったと聞いていたから、何も疑わずに今まで生きてきた。
それを今、何だって? 今僕が殺したって……
「本当……なのか?」
「うん」
「なんでだよ……なんで、親父を……」
「許せなかったんだ……母さんを……たった一つしか存在しない家族を傷つけられるのが!」
悲痛な叫びに、何も言えなくなる。
兄貴はふうっと一息つくと、ゆっくり話し出した。
「僕がどうして四年も逃げられたか、わかる?」
「……知るかよそんなの」
「実は、母さんのおかげなんだよね」
ふいにお袋の名前が出てきてびっくりする。
兄貴が犯行にうつった翌年に亡くなった、母親。
その死にも、兄貴が関わっているというのか。
「母さんは僕が親父を殺したのも知ってる。親としての正義感だったのかな。警察に死体が見つかった時、自らを犯人だと名乗り出た」
知らなかった。お袋が、そんなことをしてたなんて。
親父が死んでから梗華だけを引き取って、俺を見捨てたあの母が。
「とまあ、こんなとこ。ごめんね、何も言えなくて。一人にさせちゃって」
「兄貴……」
「できれば、かいちゃんを守ってあげたかったんだけど……出来なかった」
殺人事件を起こし始めた兄貴を、俺は許せなかった。
兄貴のせいで、何もかもが失われたから。
でも、違った。
兄貴は俺を守ろうとしてたんだ。
守りたくて、守ろうとして。
「だからかいちゃん。かいちゃんは、やりたいことをしてね」
爽やかな笑みを兄貴は浮かべた。
「僕のことで苦しませてごめんね。だから、やりたいことをやって自由に生きて」
「やりたいことなんて、あるわけないだろ」
「冷めてるなあ。せっかくバリスタ科に行ってるんだから、本格的にやっちゃえばいいのに」
本格的……?
「昔よく、僕にココア入れてくれたよね。あれ、おいしかったなあ。かいちゃんが入れてくれると、いつもと違って倍においしいんだよね。なんでだろ」
兄貴が言った言葉が、昔の記憶を呼び起こす。
思い出した。
なんで劉生大学に通ったのか。輝流の誘いを断らなかったのか。
「最後に話せてよかった。そろそろ時間だし、行くね」
「兄貴」
「ん?」
「コーヒー作るのうまくなったら、いつか飲ませる」
ここに来てようやく笑えたことに気が付く。
兄貴は少々びっくりしたような顔を浮かべたが、すぐにうんと笑顔を向けた。
爽快感たっぷりなまま刑務所を出る。
その時ちょうど輝流から電話がかかってきた。
『面会終わった?』
「ま、一応」
『マジで!? ねぇねぇ、どうだったの? 何か進歩は!?』
「そうだなー……やりたいことが、見つかったよ」
俺が見上げる空はどこまでも広く、青く輝いていた。
(つづく!!)
正直、かいちゃんにはひどいことをしたなあと
一番反省してます。
こんなに複雑にしたのは、彼だけなので。
ちなみにかいちゃんという呼び名は、
私個人が気に入っているので
これからは気兼ねなく呼んでいきますね笑
次回から、二日後ごとに更新します。
いい雰囲気の中ですが、みなさん。
誰か一人、忘れてはいませんか?