LIKEとLOVEの境界線 中編
婚約を目前に浮かれる如月
しかし、魁皇にいたいところをつかれ・・・?
『お前はマスターの、どこを見て好きになったんだ?』
尾上さんに聞かれた言葉が、ぐるぐる回っている。
テーブル席を台拭きで拭きながら、私は深いため息をついた。
幸い、休憩時間が終わったおかげで彼の質問に答えることはできなかったけど。
しかし、だ。
尾上さんに聞かれてパッと答えが浮かばなかった現実が受け入れられない。
私は、明王さんが好きだ。
だがそのきっかけがあきお様にあるのも事実。
最初は明王様に似ているから、絶対にくっついてやろうとも思ってたけど。
どこが好き、か。
もしかしたら私は、あきお様が好きだったから明王さんを好きだと思い込んでいたのか?
そうだとしたら、問題ありまくりじゃないか!
もうすぐ結婚するというのに、このままじゃいけない!
見つけなきゃ、明王さんとあきお様の違いを!
「マスターさん。コーヒーとココア、お願いします」
「あいよ」
見つけなければ……
「ココアとコーヒーあがったぞ。もってけ」
「はいは~い☆」
見つけなければ……
「マスター! ミルクが切れたで~」
「裏に変えがまだある。もって来るから待ってろ」
みつ……
って馬鹿か、私は! まるで変態じゃないか!
いや、ストーカー? あるいは変質者?
どっちにしろ、これじゃ最低だよ私……
「何してんの、にがっちゃん」
はっと我に返ると、後ろには輝流さんがいた。
お客さんが飲んだ後のコーヒーを、お盆に乗せている。
輝流さんと同じように、美宇さんや天衣さんも私をのぞいていた。
「な、何って仕事ですけど……」
「王様を見てばっかりいたのに?」
「そ、それはそのう……」
「マスターを監視とは、やるなあ如月~」
「何かあったんですか?」
輝流さんたちの優しい言葉に、今まで考えていたことが和らいでいく気がした。
辺りを見渡し、尾上さんも明王さんもいないことを確認する。
よし、このメンバーならまだ聞いても大丈夫なはず……
「あの、皆さんに質問が」
「オレたちに?」
「珍しいですね、如月さんが私たち質問になんて」
「ええで~先輩として、何でも答えてやるで!」
「皆さんが思う、明王さんのいいところって何ですか?」
これは賭けだ。
私より付き合いが長い彼らなら、きっと答えが出てくる。
今まで気づかなかっただけで、それを機に意識し始めるかもしれないし!
「マスターのええとこ~? そりゃああれやろ。顔がええとこ」
「制服がお似合いなところでしょうか?」
「長髪♪」
「全部外見のことじゃないですか!!!」
ダメだ、こりゃ。
あてにした相手が悪かった……
そもそもどうしてこの人たちに聞こうとしたのだろうか、私は……
「せなこといわれてもなあ。うちには凪以外の男には興味なああああし!」
「私もマスターさんとはあまり話しませんし……イケメンとかそういうのよくわからなくて……」
「だって王様のいいとこって、外見くらいしか見つかんないじゃん?」
何なんだ、この人たちは……
それでも働いてきた従業員ですか!!
ええい、かくなるうえは!
「だったら……皆さんには好きな人がいますよね。その人のどんなとこを好きになったんですか!?」
勢いよく質問すると、たちまちみんなの頬が赤みを帯びる。
明王さんが本人がだめなら、もはやその好きな人のことを聞くしかない!
ふふふ……私でも難しいことが、この人たちにできるわけ……!
「かわいいとこだよ」
!?
「何事にも一生懸命で、とにかく前向きで。そういうのひっくるめて、かわいいとこ。オレがにがっちゃん好きなとこは、そんな感じ」
輝流さん……
「私も輝流さんと同じです。魁皇さんは、いつも優しくて頼りになる。かっこいい騎士みたいで、大好きです」
天衣さん……
「どこが好きなんて、人それぞれや。うちは凪の笑顔が大好きや。あの笑顔を守ってやりたい。そう決めたんや」
美宇さんまで……
私は今まで、何を見てきたんだろう。
明王さんをあきお様と重ねるばかりで、肝心な彼自身を見ていなかったんだ。
そんな私が、明王さんと結婚してもいいものなのか?
このままじゃ……
「替えのミルク持って来たぞ……ってお前ら仕事しろよ。何してんだ?」
「あ、王様♪ いやあ、にがっちゃんが変なことを質問してくるから、答えてただけだよ~」
「訳の分からん事やってねぇで働け。給料減らすぞ」
「ええ~! それはだめ~!」
通りすがりに、明王さんは私の頭をポンと叩いてクスリと笑う。
彼の微笑に、私は戸惑いながらもカッコよさにうっとりするばかりだった……
(つづく・・・)
この従業員にして、ルナティックハウスありって感じですね。
三人のボケ的な会話が、一番好きです
突っ込みがいるだけ、まだましな気がしますけど
次回! 如月の迷走は続く!




