兄弟の絆は永遠に 後編
舞台は三年前
双子の妹・梗華とともに兄の墓参りに来ていた魁皇。
喧嘩している中、二人の前に現れたのは・・・
「久しぶり、きょうちゃん。かいちゃん」
暖かい声色に、優しい笑みがむけられる。
墓の前にいたのは、まぎれもなく尾上恒生そのものだった。
しかも、生前と変わらない姿で。
兄貴はすでに死んだ存在。それがここにいるということは……
「ぎゃあああああああああああああ! おおおおお化けじゃあ! たたりなのじゃあああああああ!」
梗華がわあわあわめきながら、俺の後ろに隠れる。
まあ、普通はそうなるよな。
なんせ、死んだはずの人間が今、目の前にいる。
俺だって信じられない。
なんで死んだ兄貴が、ここに……?
「まあまあ、二人とも落ち着いて。ちゃんと説明するから、ね?」
「……本物なのか?」
「かいちゃんったら。僕がそっくりさんか何かに見えるの? 正真正銘、尾上恒生だよ」
確かに本物だ。
このにっこりとした笑みに変わらない声は、まねできるようなものではない。
でも、なぜ……?
「ほほほほ本物の兄上なら、おかしいではないか! 兄上は死んだのではなかったのか!?」
「うん、本来ならね。でも二人を見てたら、いてもたってもいられなくて」
「俺達を?」
「二人とも。一緒に住むようになってから、けんか以外で何か話した?」
ぎくりとした。まさか、見られていたとは。
思えばこいつとはケンカ以外、まともに話したことがない。
小さい頃でさえまともにかかわっていないのに、その距離を縮めるのが難しく、顔を合わせたらケンカくらいしか……
「今まで別々に暮らしてたからっていうのは、分かるよ? でも双子の兄妹でしょ? もう少し仲良くしてほしいんだよね」
「兄貴……」
「そこで、今日一日僕と一緒に遊ばない? 久しぶりに、三人だけで」
思いも崖ない声にはあ? と声が漏れる。
なんで死んだ兄貴と梗華と一緒に出掛けなきゃなんねぇんだ、意味分かんねぇ。
嫌なはずなのに、断れない自分がいる。
兄貴が死んだ後、心にぽっかりと穴が開いたようなあの感覚。
模試も神様がいるとするのなら、これは俺に与えられたチャンスなのかもしれない。
失われた家族との、時間を取り戻すための。
「行く」
「行くに決まっておる!」
俺と梗華の声が同時に重なる。
やはりこいつも同じことを考えていたようだ。
俺達二人の返事を聞くと、兄貴はにっこりと笑みを浮かべた。
「よかったぁ。二人のことだから、断るかと思ったよ」
「できることなら、そうしてぇけどな」
「魁皇とはちと嫌じゃが、兄上となら大歓迎じゃ! そうときまれば、さっさといくぞ!」
梗華が強引に、俺達の手を引っ張る。
兄貴が苦笑いをしながら、つられるがままになっている。
そんな二人を見ながら、俺はひそかにため息をついたのだった。
「それでな! 田中の奴が花瓶を割ったときといったら、それはもう素晴らしいほどの暴れっぷりでな!」
「はははっ、面白いね。田中さんって」
二人が無邪気に仲睦まじくしているのを、遠目で眺める。
死んだはずの人間が本当に目の前に存在するとは、思ってもみなかった。
俺はいまだに信じられない部分が多く、どういう風に接していいのかがわからない。
逆に梗華のきさくさが、うらやましいほどだ。
同じ卵から生まれてきているはずなのに、この差は何だろう……
「どうしたの、かいちゃん」
「……え」
「さっきから、黙ってばかりだけど」
油断した。やはり気づかれてしまっていたのだろうか。
いつだってそうだ。兄貴は俺のことなら、何でも見透かしてしまう……
「別に。くだらねぇ話だなあと思って」
「くだらなくなどない! 魁皇にはわらわのすごさがわかっておらぬ!」
「わかりたくもねぇがな」
「でもきょうちゃんは頑張ってるよ。まだ小さい頃から、國立家の子と背負ってきたんだから」
双子でも育ち方が違う。
そんなとこは俺達くらいだろう。
よく輝流にも、双子で似てないのチューンくらいじゃね? っていわれたし。
「ほれみろ! 兄上はちゃあんとわらわのすごさをわかっておるのじゃぞ!?」
「小学生までおねしょしてたのに、か?」
「なっ、ななななぜそれを!?」
「風の噂でな」
「ふふっ、きょうちゃんも同じだね。かいちゃんも小さい頃はお化け怖くて、よく僕の部屋に来てたっけ」
「なんのことだかわからねぇな」
「お主も人に言えないではないか!」
くだらない話なはずなのに、自然と顔がほころんでしまう。
たわいもない会話でも、こいつらと過ごしている時間が楽しい。
これが、兄弟というものなのだろうか……
「二人とも、僕がいなくてもこんなふうに仲良くやっていくんだよ?」
「いきなりなんだよ」
「二人は本当に素直じゃないからね。喧嘩するほど仲がいいっていうけど、二人は逆だね」
兄貴のすました笑顔が、俺の心を逆なでる。
いつもそうだ。兄貴はいつも、俺達に笑ってくれてー
「かいちゃん、きょうちゃん」
かわらない呼び名、かわらない笑顔。
なのに一つだけ違った。
兄貴の姿が、透けている。
さっきまで普通に、一緒にいたはずなのに。
今にも消えかかりそうなのに、兄貴は平然と笑顔を浮かべている。
「兄上!? きえておるぞ!?」
「時間が限られてたからね。僕にできることは、ここまでかな?」
「ふざけんな……さんざん言いたいこと言って、最後は逃げんのかよ!」
思わず大きな声になってしまう。
こんなことをいうつもりなんて、全然なかったのに……
「ごめん」
はっと顔を見上げっると、すぐそばに兄貴がいた。
消えかかっている手を、俺の頬にあてる。
「二人の人生をめちゃくちゃにして、ごめんね」
「兄貴……」
「何を言っておるのじゃ、兄上! これでお別れなど嫌じゃ!」
「最後に一つだけ、僕からお願い。二人とも、いつまでも笑顔で、幸せになってね?」
それが、兄貴の最期の言葉だった。
その言葉を機に、兄貴だったものが光となって消えてゆく。
処刑される前とさほど言っていることが変わっていない。
兄貴はいつだってそう。昔から、何一つ変わりはしない……
「梗華、いつまで泣いてんだ」
「ぐすっ、ふ、ふんっ。お主も鼻声でないか!」
「兄貴の相手したら、疲れたな。どっかよってくか? 久しぶりに二人で」
「気が合うな。わらわもそうしたいと思っていたのじゃ! いくぞ、魁皇!」
涙を浮かべながらも、笑顔を向ける梗華。
差し出された手を、ゆっくり握り返す。
久しぶりの家族のぬくもりは恥ずかしかったが、暖かいものだったー
(fin❤)
実は更新日前日、偶然なのか双子の日ということで
二人のお話を別作品にて更新しました。
重なるとは思ってもいなかったです
ちなみに12月はかいちゃんの誕生日もあるので
かいちゃんづくしですね
次回はメインでもあったあの二人のお話ですよ!




