とってやるよ
策士・美宇の提案により
お祭りに行くことになった如月
明王とのお祭りデートが、ついに開幕!
あーあ、なんでこんなことになっちゃったんだろうなあ。
自分の浴衣を見ながら、はあっとため息をつく。
神宮さんと行くことになったせいで、美宇さんが強引に着物を選んで着付けしてくれた。
初詣の時とは違って、赤いハイビスカスらしき花が描かれている。
こんな派手な着物を着るのに、どれだけ勇気がいることか……
美宇さんも美宇さんだ! こんなのを私に着せるなんて!
「わりぃ、遅くなった。お、今回は赤なんだな」
少し遅れた神宮さんが、やわらかな笑みを向けながら言う。
初詣の時の着物を覚えていてくれたのだろうか。
優しい雰囲気が漂う神宮さんは、相変わらずおしゃれな私服を身にまとっていた。
「鈴木でも服を見る目はあるんだな。似合ってるぜ」
「あ、あんまりみないでください! 恥ずかしいんですから!」
「せっかくかわいいのに。もったいない奴」
意地悪そうにほほ笑む神宮さんは、相も変わらずかっこよかった。
何も言い返す言葉が見つからず、ただただ赤くなってしまう。
「じ、じゃあいきましょうか!」
「その前にちょっといいか?」
「はひ?」
「せっかくの機会だ。祭り中に一回でも下の名前で呼べ」
!?
「な、なんでそうなるんですか!?」
「こういう場じゃねぇとお前、いつまでたっても神宮さんなままな気がしてな」
グフッ! さ、さすが神宮さん! 鋭い!
ただでさえこんな格好させられて精神けずられているのに……名前呼びとか……
でも呼ばない限り仲が縮まらないし……ああでもタイミングがなあ……
「ん? 如月。あの猫の人形、前にとったやつじゃね?」
人形と言われてたちまち伏せていたアンテナが、ぴきんと立つ。
パッと顔を上げると、彼の目線に射的屋があるのが分かった。
数々の商品が並んでいる中、そこにはかつてゲームセンターで取った猫のぬいぐるみがあったのだ!
しかもあの時とは服装が違う、夏限定のスペシャルバージョンで!
「ほ、本当だ! よく気づきましたね!」
「どんだけお前と付き合ってると思ってるんだ」
「てへへ~……でも私、射的やったことないんですよねー」
射的一回二百円と書かれた看板を見ながら、財布をパカリと開いてみる。
今は本やらアニメグッズやらを買い込んだせいで、かなり金欠状態。
ましてやしたこともない射的に、金をかけるのはなあ……
「仕方ないな、とってやるよ」
what??
神宮さんはサッと金を払うと渡された鉄砲を構え、ぬいぐるみに狙いを定める。
何ともあろうことか、打った弾が見事に当たり一発で取ってしまったのだ!
「ま、ざっとこんなかんじだな」
「すごすぎですよ! あのUFOキャッチャーといい、この射的といい!」
「昔から射的だけはうまいんでな。ほら、これおごりな」
「ありがとうございます! かみ……」
神宮さん、と言おうとする前にふと考える。
彼が私のためにとやってくれたことだ。それに答えないでどうする! 如月!
「あき……あき……」
明王さん、その五文字が出てこない。
結局いえぬまましょぼくれる私に、「行くぞ」と猫のぬいぐるみを渡しながら神宮さんが言う。
ダメだなあ、私。
何か、私でもできるやつないかなあ。
「祭り来たのも久しぶりだったが、意外に楽しいもんだな。だいぶにぎわってる」
「そうですね……あ、金魚すくいだ! 懐かしい!」
「金魚飼ったことあるのか?」
「はい。今も祖父母の家に……そうだ! ちょっと待っててください!」
見つけた! 私に出来ること!
屋台のおじさんに百円を渡し、勢いよくポイを持つ。
息を殺し、すいすい泳ぐ金魚達を見定める。
今だああああああああああ!
ポイをすっと水に入れ、ササッと皿の中に金魚を救う。
名付けて、必殺! 金魚二匹同時すくい!
「さっきのお礼です、よかったらどうぞ?」
「如月って、意外な特技持ってるよな……キーボードの早打ちとか。店のメニュー作り変える時のあれには驚いたよ」
「そんなにすごくはないですよ。上には上がいるんですから。はい、どーぞ?」
「サンキュー、大事にする」
もらった袋の中、すいすい泳ぐ二匹の金魚がまるで私達のようにも見えた。
(つづく!!)
オーケストラのコンサートを見に行った時、
「これを一人で開ける玲音、すごいな」と
あらためて思いました。
楽器が弾ける男性って、
ギャップがあっていいですよね。
自分のためだけにひいてくれる、
なんて夢のまた夢・・・
次回! お祭りデート、かいちゃんと天衣ちゃん編です!




