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いってきます!

★天衣SIDE★


「ただいま戻りました、お姉様」


そういって深く一礼する。

桜庭天衣はシャキッと背筋を伸ばして見せた。

早いもので、私は冥皇大学三年生へとなりました。

そんな私には素晴らしい姉が三人います。

その一人がー


「お~天衣じゃん。お帰り~依頼人からお礼にケーキもらったんだけど、一緒に食べない?」


「いいんですか? じゃあ着替えてから向かいます」


彼女、柊お姉様です。

私の三つ年上で、普段は弁護士として事務所を設けそこで働いています。

しっかりとした性格で、二人のお姉様方からも頼りにされています。


「あら天衣、帰っていたんですか? 随分遅かったですね」


「あ、はい。サークルでスイーツに盛り付けしてたら、結構時間がかかってしまって」


「打ち込むことはいいですが、最近は不審者等の事件が多いので用心してくださいよ?」


「はい。ありがとうございます」


眼鏡をかけているまじめな性格なのが、私達四姉妹の長女・瑞樹お姉様です。

桜庭企業の社長で、自分にも他人にも厳しいお方です。

そんなお姉様とは以前バイトの件から仲たがいをしていたのですが、認めてもらえるようになり現在は自宅で一緒に住んでいます。


「あ、みず姉いたならちょうどいいや。ケーキ食べない? 全員分あるよ」


「全員あるなら、鈴蘭が帰ってきた時に食べたほうがいいのでは?」


「それもそっか。蘭姉っていつ帰ってくるの?」


「何を言ってるんですか。迎えに行くんですよ、今から」


「やっぱしか……」


話題になっているのはもう一人の姉である次女・鈴蘭お姉様のこと。

彼女は区役所の出張で、今は県外に出ているそう。

姉の中で一番気が合うのが鈴蘭お姉様なのですが、彼女はとてつもなく方向音痴なので……


「とはいっても私は仕事が溜まっています。二人で行ってくれませんか?」


「りょ~かい。んじゃ天衣、いこっか」


「はい! いってきます!」


にっこりと笑みを浮かべ、瑞樹お姉様に会釈して見せた。


「駅にはついたけど、まだ来てないっぽいね。蘭姉」


柊お姉様があたりを見渡しながら言う。

私は今何時かを腕時計でチェックしていた。

そろそろお姉様が帰ってくる時間帯なのですが、姿が見当たりません。

まだついていないのでしょうか。


「ひぃちゃ~ん、天衣ちゃ~ん。お待たせ~」


そんな時、のほほ~んとした声が私を呼んだ。

振り返ると鈴蘭お姉さ様が、にこにこしながら歩いてくる。


「鈴蘭お姉様、お仕事お疲れ様です」


「二人こそ~お迎えありがとうね~」


「無事に帰ってこられてよかったじゃん。家にケーキあるから、食べよ」


「わあ~うれしい~あ、私後輩ちゃん達に報告しなきゃならないことがあるから、先いってて~」


そういいながら、あとからやってきたスーツ姿の男女に声をかけている。

仕事していると、お姉様は別人みたいにかっこいいな。

柊お姉様の車に戻ろうとした、その時でした。

空港にある椅子に、見慣れた人物が腰かけているのがみえたのは。


見間違いじゃないかと思いながら、自然とそっちの方へ近づいてしまう。

やっぱり、尾上さんだった。

彼はたった一人で携帯をいじくりながら、タバコを加えている。

こういうのって、声をかけるべきなのでしょうか?

美宇ちゃんや如月さんなら、きっと声をかけるのでしょうけど。

それにしても、あんなところで何を……


「おお! わざわざ迎えに来てくれたのか!」


椅子に座っている尾上さんに、人が駆け寄る。

ここからでも分かるくらい、かなりの美少女だった。

距離があったからか聞き取れたのはそれだけで、何を話していたかは分からない。

ただ分かったのは、見たことのない笑顔で尾上さんが笑っていて……


「お待たせ~あれ、天衣ちゃ~ん。帰るよ~?」


「早く帰らないと、みず姉が心配するよー?」


お姉様方の呼びかけに、私の思考は途絶えざるを終えませんでした。



「ただいま~みっちゃん。はい、これお土産だよぉ~」


「お疲れさま、わざわざ買ってきてくれてありがとうございます」


「あれー? 蘭姉、私の分は~?」


「もちろんひぃちゃんのもあるよ~ど~ぞ~」


お姉様方の声が、遠く聞こえないもののように不鮮明になる。

頭の中が、一つのことをぐるぐる動き回っていた。

どんなに忘れようとしても、私の中で必ずと言っていいほど浮かび上がる。


『おお! わざわざ迎えに来てくれたのか!』


あの女の子は、誰だったのでしょう。

尾上さんと、どんな関係なのでしょうか。

あんなに笑っている尾上さんは、初めて見た。

どうして、こんなに気になるのでしょう。

私は一体……


「天衣ちゃん。あ~いちゃん」


はっと我に返った私の近くに、鈴蘭お姉様の顔があった。


「はっ、はい! 何かご用ですか?!」


「はいこれ、おみやげ~天衣ちゃんの分。大丈夫~? ぼーっとしてたけど」


「だ、大丈夫です!」


ダメだ、私。しっかりしなきゃ!

お姉さま方にこれ以上迷惑はかけたくないですし!


「そ~だ、天衣ちゃんに嬉しいお知らせだよ~?」


「? なんですか?」


「出張先でね天衣ちゃんが作ったお菓子をあげたんだけど、その人が偉く気に入っちゃってね、会いに行きたいって言ってた」


はわわわ! そんなおおげさな!

会いに来てもらうなんて、私なんか有名人以下の存在ですよ!?

というか鈴蘭お姉様も、勝手に私の作ったやつを上げないでくださいよ!


「それで? いい知らせってそれだけなの。蘭姉」


「ううん。今からその女の子がこっちに来るの」


「鈴蘭、私抜きでそういう話を進めないでください。お茶を出す準備をしなくては」


「よくもまあ外国からくるもんだね」


「ちょうど日本に用があるから、その前に寄るんだって。あ、来た」


鈴蘭お姉様が携帯を見ながらいうと同時に、家のチャイムが鳴った。

私は立ち上がり、玄関へと走る。

うう……いくら日本に用があったとはいえ申し訳ない……

ここは桜庭家の四女として、ちゃんとしたふるまいをしなければ!

そう思いながら、ドアを開けると―


「桜庭天衣とはお前じゃな。会いたかったぞ!」


そこにいたのは紛れもなく、尾上さんといたあの美少女だった!


(つづく!!)

今回は天衣ちゃん、ということで

第一部以来のお姉さん方登場ですね。

正直久々すぎて、私もキャラが迷子状態です笑

古いキャラクターほど、薄れていく記憶が

もどかしくてたまらないこの頃であります


次回は美宇ちゃんストーリー! 凪ちゃんの告白の真意とは!?

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