表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
千夜一夜  作者:
(5)消された想い出

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

90/94

第十九章 忠誠心と本心の狭間で(8)

『ねぇ、父上。どうしてそんなに悲しそうな顔しているの?』


 あれは幾つのときだろう。


 父上に手を引かれて母上の墓碑まで案内されたとき、ここに母が眠っていると、アベルを産みたくて自分の命より、アベルを産むのを選んだのだと言われ、あのとき自分は。



 思い出したいのに、記憶がどんどん薄れていく。


 忘れなさい。


 忘れて深く眠りなさい。


 そう囁く声がする。


 この声はだれ?


 だ、れ?






 その頃、孤児院では、シドニー神父宛に、一通の手紙が密かに届いていた。


 その内容はシドニー神父的には、無理難題というか、頭を悩ませる類のものだった。


 ただ、最後につけたされた一言が、シドニー神父を悩ませていた。


「アベルの過去についてか」


 心当たりはひとりしかいない。


 その当時のことをはっきりと覚えているのは、シスター・エルしかいない。


 後覚えているかは不明ですが、覚えていればマリンも含むか。


 フィーリアは小さすぎて例外、いや、確か一番最初にアベルが心を開いたのは、フィーリアではなかったか?


 フィーリアが覚えているかどうかは知らないが。


 そこは確認するべきか。


 シスター・エルに話を伝える前に、フィーリアが覚えているかどうかを確認しなければ。


 シドニー神父はすぐにリドリス公爵令嬢フィーリア宛に手紙を書いたのだった。




 ーリドリス公爵家ー




「シドニー神父様からお手紙が届いた? 渡してくださる?」


 礼儀作法をきっちり毎日叩き込まれているフィーリアは、最近ずいぶん立ち振る舞いが変わった。


 もちろん口調も。


 公爵令嬢らしくなったフィーリアが、シドニー神父様からの手紙を受け取った。


 侍女たちを下がらせると大切に封を切った。


 そこに書かれていたのは、


「お兄ちゃんとの1番古い思い出は覚えているか?」


 覚えていたら公爵に伝えること?


「どうしてこんなことを?

お兄ちゃんに何かあったのかな?」


 アベルとの一番古い記憶は、2歳のときだ。


 まだ幼かったが、はっきりと覚えている。


 それをお父様に言えばいいの?


 フィーリアは自信はなかったが、宮殿にいる義父に向かって手紙を認めた。


 それをすぐに届けるように命じ、フィーリアはため息をついた。


 色んなことが同時に展開されていたが、リドリス公爵のもとに一番に連絡が来たのは、次女フィーリアからだった。


「陛下。朗報です」


「どうした? それはフィーリアからの手紙だろう? なにかあったのか?」


「シドニー神父から手紙が来たようで、その手紙も同封されています。直接ご覧になりますか?」


「いいのか? 娘からの手紙だろう?」


「ですが内容は陛下のご命令に関するものですから」


「なに? やけに動きが早いな」


 手を差し出すケルトに公爵が娘からの手紙を差し出す。


『アルベルト殿下がアベルだった頃、きみが殿下としての彼をもしも覚えているのなら、すぐに公爵に伝えて欲しい』


『私が覚えているお兄ちゃんの一番古い記憶は2歳の頃よ。それが何かあるのかわからないけど、一応報告を』


 これは確かに朗報だった。


「それとこちらは今届いたシドニー神父からの手紙です」


「そうか」


 黙って受け取って、ケルトは封を切った。


「突然の手紙をお許しください。


 お尋ねの件、自分なりによく考えてみました。


 そして、真っ先に浮かんだのは、フィーリアなのです。


 他にもご指摘の通り、マリンやシスター・エルなど、間違いなく覚えているだろうと思える候補はいますが、殿下が一番最初に心を開いたのは、私には、フィーリアに思えて仕方がないのです。


 フィーリア公爵令嬢が覚えているかどうかは、賭けのようになってしまいますが。


 その返事を待ってシスター・エルに話を通したいと思っています。


 これはかなりの難題ですので。



 それでは失礼いたします。


       シドニー」



 これは意外な報告だ。


 当時わずか二歳のフィーリアが、アベルではなくアルベルトのことを覚えているなんて。


「フィーリアを城に呼ぶことは可能か?」


「可能ですが。何故お尋ねに?」


「いや。リアンの介護をしていただろう? だから、此方の事情で呼び寄せていいものかとな」


「殿下の来訪以来かなり回復しています。今なら大丈夫かと。ご案じ頂きありがとうございます」


「それはよかった。ではすぐにフィーリアを呼んでほしい」


「承知しました」


「後はシスター・エルか。応じてくれるといいのだが」


 レイティアたちは部屋にはいたのだが、事情を聞いていなかったので、どう言うことだろうと顔を見合わせる。


 またどうしてアベルは倒れているのだろうと疑問に思う。






 どうでしたか?


 面白かったでしょうか?


 少しでも面白いと感じたら


 ☆☆☆☆☆から評価、コメントなど、よければポチッとお願いします。


 素直な感想でいいので、よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ