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千夜一夜  作者:
(4)恋心と嫉妬の戒め

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第十八章 恋心と嫉妬の戒め(9)

またもやハーレム問題動く?


「なにかあるのか? エル姉、いや、シスターエル」

 身分の差を意識しろとシドニー神父に指摘されてから、アベルはなるべく世継ぎとして喋っている。

 指摘は尤もだと思ったので。

「こんなことあたしの口から言うのもどうかと思うけど、フィーリアまでがあんたの妃になるなら、もうひとりどうしても候補に入れて欲しい人がいるの」

「え? でも、シスターエルの知り合いなら庶民なんじゃ?」

 庶民が王のハーレムに入ったら、どれだけ苦労するかは、アベルもよく知っている。

 思わずそう返せば、エルは肩を竦める。

 それはわかってると言いたげだ。

「余計な口出しなのはわかってるの。でも、ずっとアベルに片想いしていたあの子だけが、この状況下で弾かれているのが、可哀想で。立場的にあの子には言えないでしょうから」

「えっとなんのことなのかな? 俺の知り合い?」

「本当に鈍いわね。あなた本当にあの子の気持ちに気付いていないの? あれだけ近くにいたのに? 幼い頃からずっと一途にあなたを想い続けてきたのに?」

 誰のことだろう?

 本気で心当たりがない。

 アベルはレティシアたちと出逢うまで、自分が恋愛的にモテるタイプだなんて思ったこともなかったし。

 しかしそれ故に相手の恋心に気付いていないと言われても、自分でも否定はできなかった。

 自分が鈍感な自覚くらいはあったので。

 しかしここまで言われても心当たりがないということは、相手もよほど上手く隠していたのだろう。

 こんな形で聞いてしまっていいのだろうか?

 こんなときは消去法だ。

 まず婚約中の4人は省く。

 相手を特定する条件として、幼い頃からの付き合いであること。

 そしておそらくだがアベルと釣り合う年齢であること。

 尚且つ当人にもわからないくらい巧妙に好意を隠せるもの。

 う〜ん。

 本気でわからない。

 誰のことだろう?

「候補がわからない。フィーリアは誰かわかるか?」

「んーん? あたしもわからないけど、年齢だけで候補にするなら、マリンお姉ちゃんしかいないんじゃない? 後の知人は年齢的に釣り合わないし。庶民という括りだと他に思い当たる人がいなくて」

「マリン? ないない! 身分が変わって尚毎日のように説教されてるのに」

「じゃあ他に思い当たる人がいる? お兄ちゃん」

「それは」

 アベルがそう言ったとき、シスターエルが口を挟んだ。

「あんたがそうだから、マリンはなにも言えないのよ」

 それは肯定の言葉だった。

 あまりのことに返す言葉を失う。

「あの子とあんたの馴れ初めが、そもそも喧嘩友達から始まったのも、悪く作用してしまったのね。文句を言い合う関係が定着してしまって、逢えば口論するのが普通すぎて、好きの一言が言えなくなった」

「シスターエル」

「その内剣の才能を見込んで軍入りして、物理的な距離もできてしまった。再会してからはあんたの身分がわかり、身分違い主従関係にならざるを得なくなってしまった。思い返してみて。再会してからマリンの態度は変わった?」

「いや。人のいるときは護衛騎士としての態度を崩さないが、俺とふたりきりのときは、昔となにも変わらない」

「レイやレティがいるときは?」

「普通かな。護衛として接するけど、俺に対しては普段通りというか」

 だから、思いもしなかった。

 彼女がそんな秘めたる想いを隠して接していたなんて。

「今のままならマリンが自分の気持ちを口にすることはないわ。身分違いだし、なにより主である王女たちがいる。彼女たちの面目を考えて、なにも言えなくなるわ」

「それはそうだな。それで俺にどうしろと?」

「あたしとしてはあんたのほうから仕掛けて、あの子が本音を言うように仕向けてほしいのよ。その上であんたの気持ちを告げてあげてほしいの」

「俺の気持ち、か」

 自分で言うのもなんだが、案外女性にモテていたんだな。

 しかしエルの言う通りにしたとしても、マリンの身分では側室が限界だ。

 妃としては迎えられない。

 マリンはレイやレティの専属護衛騎士だ。

 その彼女が側室になるのも、政治的に拙い気がする。

 でも、それじゃあ俺を想ってくれる彼女の幸せはどこにある?

 俺自身マリンのことは嫌いじゃない。

 妻に迎えると仮定したら、フィーリアについで気楽に過ごせる相手だ。

 嫌なのかと言われたらそうだと言えない自分がいる。

 何故想いを寄せてくれる身近な相手は嫌えないのだろうか。

 好きだと言われた時点で退路を断たれている気がする。

 これが知らない相手だったり邪な気持ちの相手なら、一言で断れるのに。

「シスターエル。いや。エル姉」

「なに?」

「そういう行動を起こしたとして、マリンは喜ぶか?」

「え?」

「主に背くようなことをさせられて、忠義心の強い彼女は、苦しまないと思うか?」

 わかりやすく説明すると、エルは答えに詰まった。



 どうでしたか?


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