第十八章 恋心と嫉妬の戒め(3)
続きです。
ハーレムを受け入れる人って、色欲が強いか優しくて優柔不断な人が多い気がする。
奏だけですかね?(笑)
「それを全部受け入れたとして、アルベルトはレティシアとレイティアの問題は、一体どうするつもりだ? ふたりは妃が増えるなんて考えてもいないだろう。ふたりにどう説明するつもりだ?」
「フィーリアのこともリアンのことも、きちんと2人に報告するよ。嘘はつかない。俺なりに誠実に対応する」
「そうか。ではふたりに対する対応が片付くまでは、リアンやフィーリアに関しては、動きを見せることは禁じる。約束できるか? アル?」
「うん。俺もハーレムの主なんてものになっても、ひとりひとりに誠実さはなくしたくないから」
アベルがハーレムを受け入れた動機は、気になる人が何人もいて、本当はそこから本命を選び恋愛感情を育てるのだろうが、アベルはそこで挫折した。
みんなが特別というか、全員特別に好きで、その中の誰かひとりは選べなかった。
それこそ本来の婚約者候補である双子の王女たちの間からでも、本命とすべき婚約者を選べなかった。
だから鈍感なふりをしつつ、恋愛感情をどうやって区別するか、もしくはどうやって育てるか、自分なりに悩んでいた。
しかしアベルは生来人を嫌うということが苦手で、唯一の例外は育ての親のクレイ将軍と、アベルを夜の相手に誘う汚れた心を持つ令嬢や夫人たち。
クレイについては臨終間際まで和解できず、亡くなってから後悔した過去がある。
それがあったから、アベルはもう後悔したくなくて、純粋な好意に対しては、随分弱くなってしまっていた。
邪な気持ちなら冷酷に断れる。
でも、純粋な気持ちを向けてくれる相手には、断ることができないという弱点を有することになったのだった。
だって断っても誰かひとりを選んでも、角が立つし相手を傷付けるだろう?
そう考えると身動きできなかった。
幸いアベルは世継ぎで、王族の増員のため、重婚を認められたハーレムの主人だった。
だから、ハーレムには最高で7人まで受け入れようと考えだした。
一週間で一巡できる限界の人数が7人だからである。
何人妃がいても誠実さだけは失いたくなかったし。
このハーレムの考え方は、まだケルトにも話したことがない。
いい機会だからケルトには相談したほうがいいかもしれない。
そう思って口を開いた。
「今までハーレムについてどう考えてるか、意思表示しなかったけど、自分なりに考えがあるんだ。聞いてくれないかな? 叔父さん?」
「ハーレムを拒否して、アルベルトに責任を押し付ける形にしたのはわたしだ。アルベルトの決意を聞くのは、わたしの義務だろうな。話してみてくれ。現在の王として対話しよう」
「うん」
ここでアベルは自分に可能と思われるハーレムの在り方についてケルトに話した。
同時に自分がハーレムを受け入れた動機や、婚約を受け入れ動機まで赤裸々に打ち明けたのだった。
相談されたケルトは、大方は理解したものの、ひとつ気になることがあって、アベルに話しかけた。
「大体のことは理解したし、内容も同意できるものだった。ただひとつだけ確認したい。レティシアやレイティアへの気持ちは、同情ではなく恋愛感情なのか? 本当に?」
「そのことには自信を持てるよ。ふたりへの気持ちを自覚したときの話はしただろう? あのときの説明に嘘はないよ」
「そうか。それならよかった」
「それと俺の正妃についてだけど、俺は第一王女レイティアを俺の正妃に迎えたい。ダメかな?」
「ダメとは言わないが理由を聞いても構わないか?」
「下町で生活していた頃、双子の王女の噂はよく聞いた。特に次期女王と目されていたレイティアの噂をね」
「どんな噂なんだ?」
「簡単に一言で説明すると、妹に苦労させないため、自分が矢面に立って、女王になるための努力も惜しまない王女様だって」
「なるほど」
「それを証明するように、俺と出逢ったとき、俺の正体に気付いたのはレイティアだけだった。レティシアは父さんの顔すら知らなかった。それひとつをとっても、政治に関わる正妃にはレイティアが相応しいと思う。なにか間違ってる?」
「ひとつ疑問があるんだが、アルベルトは政治的な判断でレイティアを正妃にしたいと言ったな?」
「うん。それがどうしたの?」
「そうしたのはやっぱりさっき言ったみたいに、恋愛感情の優先順位が決められないからなのか?」
「勿論それもあるけど、俺なりに正妃の役割とか熟知した上で、考えて決めた結果だよ。世継ぎとしての判断だ」
「そうか。私情を挟まず決めた結果なのか。ならわたしも受け入れよう。婚儀が終わったらレイティアがアルベルトの正妃だ。必然的にレティシアは第二妃ということになるな。リアンは第一位の側室。フィーリアはどうするつもりだ?」
「そこが悩みの種なんだよな。姉であるリアンは側室なのに、養女のフィーリアを妃にしたら問題あるかな?」
「いや。寧ろリドリス公爵家的には、都合がいいかもしれない。後継は王家の血は引いているが、王族ではないし、王家と正式に縁を結ぶという意味で、歓迎される気がする」
これを聞いてアベルは貴族って、やっぱりわからないと感じたのだった。
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