第十四章 秘められた想い(4)
「そうだな。わかっていたなら、叶うはずのない恋なら、早く諦めさせるべきだった」
「貴方……」
「だが、あの子の初恋なのだ。できることなら自分で打ち明けて断られるとか、なにか答えを貰えることを期待していたかった」
気持ちを告げることさえ禁じて諦めさせるのが、親としてあまりに忍びなくて。
そう訴えれば傍らでため息の気配。
「そうですね。せめて自分の気持ちを伝えることができて、アルベルト様から正直なお気持ちを伝えられたら、それが例え拒絶でも、あの子も気持ちの整理がついたでしょうから」
叶うはずのない恋だと誰もが知っているのだ。
だが、初恋を告げることなく諦めさせられるのと、断られるのを覚悟して打ち明けて答えをもらうのと。
どちらが娘のためになるか。
それを思ったとき、父親として娘に恋した人に「貴方に恋していました」と告げる権利を与えたかった。
それが例え拒絶でも、リアンはきっと初恋を打ち明けられただけでも、気持ちを吹っ切る力になると公爵には思える。
初恋だからこそ妙な介入はしたくなかった。
「しかし自分の年齢を気にしていたとはな。さすがに思わなかった。わたしの責任だろうか?」
苦笑する公爵である。
産まれるのが遅すぎたと責められたら、普通それは両親の責任だろう。
特にリアンは第二夫人の子だ。
公爵がもっと早く第一夫人には子はできないという現実を認め受け入れていたら、リアンはもっと早く生まれたはずなのだ。
公爵は第一夫人ほどには第二夫人を愛せない。
だが、静かに穏やかな気持ちで妻として愛していた。
第一夫人は情熱の愛情。
第二夫人は安らぎを与えてくれる癒しをもたらす愛情。
そういう愛もあるのだと、もっと早くに気付けていたら、リアンは泣かずに済んだのだろうか。
「それを言うならわたくしのせいですわ」
「何故だ?」
「あの子の場合、年齢というより体型を気にしているようでしたから」
「体型? リアンは十分可愛いと思うが?」
「貴方の目には父親という色眼鏡がかかっていますから」
苦笑する夫人に公爵は本当に怪訝そうな顔をした。
妻の言いたいことが理解できないのだ。
彼にとってはリアンは可愛い娘だったので、女の子としても魅力的と自負していたし。
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