第十四章 秘められた想い(3)
娘から辛い恋の話を聞いた夜に夫人は夫にその事実を打ち明けていた。
ワイングラスを揺らしその話を聞いていた公爵は、深々とため息を漏らす。
「やはりリアンはアルベルト様に好意を寄せていたか」
「ご存じだったのですか?」
驚く夫人の声に公爵は曖昧に頷く。
「なんとなくだがそんな気はしていた。初めて王子と御逢いしたときから」
「どうしてですか? 理由をお聞きしても?」
「リアンが小さい頃に見ていた絵本があっただろう?」
「はい。白馬の王子様が出てくる絵本ですね。どういうわけかあの子は主役の王子様ではなく、旅の仲間の吟遊詩人がお気に入りでしたけれど」
「笛ひとつで人々の心を動かす吟遊詩人がリアンの憧れだった。アルベルト様はな? まさにそのものといえる稀有な吟遊詩人だったのだ」
「そう言われてみれば……」
素性が発覚する前から国一番の吟遊詩人と知られた人物だと噂で聞いている。
得意なのは父王譲りの竪琴らしいが、その歌声たるや奇跡であると噂に名高い人物なのだ。
それはまあリアンには理想的な男性に見えるだろう。
例え王子として産まれなくても、彼が彼として存在していたなら、リアンはきっと惹かれたはずだ。
思い出せばそう思える。
「それにご身分がバレてから、あの子の王女殿下方に対する態度が、少し変わったようにも感じられてね」
「変わった? どういう風に?」
「当たり障りのないように振る舞っている。私にはそう見える。笑いたくないときに笑っているように」
「……辛かったでしょうね」
アベルとレイティアたちは婚姻を意識して接する関係。
それを彼に好意を寄せるリアンは間近で見ていたのだ。
当然だが笑いたくなくても、本当は泣いてしまいたくても、平気なフリをしないといけないときも、きっとあっただろう。
夫人は第二夫人という立場であることもあって、滅多なことでは宮廷にはあがらない。
そのせいで娘の辛い現実を目の当たりにすることがなかった。
だが、公爵はそんな娘を間近で見ていたのである。
確かに気持ちを察することは簡単だったかもしれない。
「でも、気付いていたならもっと早く」
夫人の言葉を遮って公爵は力なく微笑む。
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