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ICBM将棋セット【ハムサンドと虫よけの薬】

イラストは朱身つめさんに描いていただきました。

転載禁止。


「『砲』で新しいゲームを考えてみた」


「古将棋の『砲』ですか?」

「はい」



●□●

□砲□

●□●


 斜めに一マスしか動けない駒だが、この駒は行動した後に敵を『射る』ことができる。



●□□□□●□□□□●

□●□□□●□□□●□

□□●□□●□□●□□

□□□●□●□●□□□

□□□□●●●□□□□

●●●●●砲●●●●●

□□□□●●●□□□□

□□□●□●□●□□□

□□●□□●□□●□□

□●□□□●□□□●□

●□□□□●□□□□●


 砲の射程範囲。


 縦・横・斜め八方向、5マス以内にいる駒を『その場から動かずに撃ち殺す』ことができる。

 しかもこの射撃は『自分と狙う相手の間に他の駒がいてもそれを飛び越えられる』。


例 砲─金→王 砲はその場から動かずに、金を越えて王を取れる



「どんなゲーム?」


「ボード全体に砲撃が届く」


「強すぎでしょ!」

「だからこうする」

 敵陣に向かって駒を走らせた。


「こういう風に敵陣へ進めば、移動した段まで砲撃が届く」


「なるほど、弾着観測だんちゃくかんそくですね」

「なにそれ」

「戦艦の主砲は水平線の向こうにまで届く。ただ水平線の向こう側は目で見えないから、やみくもに撃っても当たらない」

「だから航空機を飛ばして主砲を撃ちます。そして敵の位置と弾が落ちた場所を観測して味方に報告し、誤差を修正して見えない敵に攻撃を当てる。それを盤上で再現したルールですね」

「難しそう」



□←味方 この段まで砲撃可能


×←敵 味方がいないので届かない(当たらない)



「ただし味方を走らせても……」

 敵陣の駒を動かして、敵陣を観測していた駒を取る。

「次の一手で取られたら大砲は使えない」

「捨て駒作戦はできないのね」

「ああ」

「観測しないと撃てないんですか?」

「目視できる範囲なら撃てます」



□□●□●□●□□

□□□●●●□□□

●●●●砲●●●●

□□□●●●□□□

□□●□●□●□□


※基本攻撃範囲



「いいですね。想像していたよりも設定がちゃんとしていますし、射程距離無限というインパクトもあります」

 ゲーム化したら売れるかもしれない。

「イラストは魔女と使い魔はどう? 空を飛ぶ使い魔で観測して爆裂魔法エクスプロージョン!」


挿絵(By みてみん)

魔女


挿絵(By みてみん)

使い魔


「地球は丸い。しかも相手は地平線の向こう側にいるんだぞ。直線的な攻撃は当たらないんじゃないのか?」

「う……」

 大砲の弾のように放物線を描けば当たるだろうが、レーザービームのように直進する攻撃はたぶん当たらないだろう。

 距離が遠いほど地球の丸みの影響を受ける。

 魔女が空を飛んでいるのなら話は別だが。

「ではICBMにしましょう」

「ICBMって大陸間弾道ミサイルですよね?」


「大陸間弾道メテオストライクです」


「メテオのM!?」

 インターコンチネンタルバリスティックメテオストライク。

 ……いろいろな意味で衝撃インパクトは絶大だ。

 しかも上からの攻撃なので、どれだけ距離が離れていても問題なく当たる。


 『ICBM将棋』と書くと意味がわからないが……。


「これでいこう」

「異議なし」

 持ち駒制度はなし、敵陣を観測できるのは使い魔だけというルールで落ち着いた。

「もう一種類、使い魔がほしいな。でもただの色違いじゃ味気ない」

「コウモリでいいんじゃないの?」

「そうだな」


挿絵(By みてみん)

コウモリ


 使い魔が飛車で、コウモリが角だ。

 使い魔を『眷属ファミリア』、コウモリを『従者サーバント』と呼んでもいいかもしれない。

 眷属けんぞくは魔女と血の契約を交わしていたり、魔女に作られた魔法生物のイメージだ。

 従者は魔女に魔法で操られている生物である。


 眷属は家族や共同体の一員、ペットのようなもので、従者は奴隷のような存在だ。


 従者は野生の小動物を力で操っているだけだから、基本使い捨てである。

 まあ、ゲームそのものには必要のない世界設定なので覚える必要はない。

「じゃあ何かつまみながら一局指してみよう」


「魔女といえばキンレンカのサンドイッチでしょ!」


「『西の魔女が生きた』ですね」

「それ苦手だから抜いたやつだろ」

 キンレンカは金蓮花ナスタチウムだ。

 手のひらでパンパンと叩いて水気を切って平たくしたレタスに炒り卵、そしてハムとキンレンカを挟んだサンドイッチである。


 作中ではワサビやカラシのようなピリリと青臭い味が好きではないので、サンドイッチから葉っぱを抜いて食べていた。


 たしかそのときは紅茶だったはずだが、ここは作中にも出てくるミントとセージのハーブティーにする。

「あ、『虫よけの薬』!」

「ある意味、一番インパクトのあるハーブの使い方だったからな」

 ハーブティーをジョウロに入れて畑に撒くというのが衝撃的だった。

 紫色のキャベツにハーブティーをそそぐと、青虫やアブラムシがあたふたと逃げ出したという。

 他にもワイルドストロベリーのジャムやキッシュなど印象的な食べ物が多く登場する。

 映画も名作だ。


「グッドラック、バトルフェアリー!」


 何のネタかよくわからないことを叫びながら、コウモリが駒の間をって飛んできた。

 普通なら取れない位置なのだが、

「メテオストライク」

「え」

「忘れたのか? 目視できる範囲なら魔法を撃てる。つまり迂闊に敵陣へ攻め込むと即死だ」

「ぎゃー!?」



□□●□●□●□□

□□□●●●□□□

●●●●砲●●●●



 特定の範囲内とはいえ、防御面でもかなり強い。

 特に横方向には何マスでも砲撃できるので厄介だ。

 視界の外から仕掛けないとあっという間にやられる。

「観測するなら魔女と同じ段だ」

「あ、砲撃できない!?」



□□□●□●

敵□□□砲□

□□□●□●


※砲は斜めにしか移動できない上に『移動後でないと砲撃できない』

つまり砲がいる段(横列)で観測すれば、砲撃でやられにくくなる


 しかも、

「これで詰みだ」



     角←敵の角

    ●

   ●

歩 ●

 魔

端端端



「ああっ、斜めにしか動けないから味方が邪魔で逃げられない!?」


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