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ルービックキューブセット【塩大福とかぶせ茶】

「ルービックキューブをしましょう」


「また懐かしいものを……」

「難しいんじゃないの?」

「慣れてしまえば簡単です」

 慣れるまでが難しいと思うのだが……。


「まず白が真ん中に来ている面を上にして持ちます。これがセンターキューブ」


□□□

□■□ センターキューブ

□□□


「そしてこのように『十字クロス』を作りましょう。十字の横のキューブは色をそろえてください」


  緑

 □■□

赤■■■オレンジ

 □■□

  青


「なんで色までそろえるの?」

「ここをそろえると、その下のキューブも自動的にそろいます」

「へー」

 キューブの構造を利用した方法らしい。

「色の配置を覚えるのがルービックキューブの基本ですよ?」



キューブの反対側にある色


白⇔黄

青⇔緑

オレンジ⇔赤



「上に回したいんだけど、回したらセンターキューブも一緒に回っちゃうわね」


□□□

■■■ キューブの上

□●□

□□□

□□□ キューブの正面

□■□


■を●に移動させるとセンターも回ってしまう


□□□

■□■

□■□


「そういう時はまずそろっているキューブを横に避難させて、移動させたいキューブを移動。避難させていたキューブを元に戻します」


□□□□□□

■■■□□□ 横に避難させ、

□□□□●□

   □□□

   □□□

   □■□ ■を●に上げて、避難させていたのを戻す


□□□

■■■

□■□


「なるほど」

「この動きが全ての基本です」

「十字はできたんですけど、色の配置が間違ってる場合はどうしたら?」

「入れ替えたいキューブを180度回転させて下にしてください。そして下でくるっと横に回せば綺麗に入れ替わります」



例 青と赤の位置が違う


  緑

 □■□     □□□

青■■■オ → 青■□□ 入れ替えたいキューブを下まで回す

 □■□     □□□

  赤


□□□

□□□ 入れ替えたい位置に横回転させて上に戻す

□■□

 青


今度は入れ替えたキューブが下にくるので、動かしたい位置に横回転させて移動させる



「おおー」

 十字と4色をそろえて、その下のキューブを回すと、本当に色がそろった。

「さて、ここからが本番です」

 『LBL方式』なるものの説明を受ける。

「自分が何してるのかわかんない」

「だな」

 ……手順はわかるのだが、原理がさっぱりわからない。


「『動かしたいキューブが動かせない、ほしいキューブがない、そろっているはずなのにそろってない』というシチュエーションはよくあります。どの場合でも一定の手順で動かしていれば、現在完成している部分を崩さずにキューブを移動できます」


「へー」

 一定の手順で動かしていれば、原理がよくわからなくても自然にそろっていくのがすごい。

 『同じ動作を繰り返しているだけなのにそろう』部分があり、まるで魔法のようだ。

 細かい仕組みはわからないものの、よくできている解法である。


「やった、できた!」


「ほとんど機械的に動かしてただけで完成するもんだな」

「機械的に動かすだけでいいということは、パターンを覚えやすいということですよ?」

「たしかに」

「パターンを覚えてからが本番です」

 先生が完成したキューブを崩す。

「……完成したのをすぐに崩すの勿体なくない?」


「なら『パターンキューブ』を作ってみましょう」


「パターンキューブ?」

「キューブで絵を作る遊びです。たとえばこれは『中抜き』」


挿絵(By みてみん)


中抜き


「真ん中だけ入れ替えてるのか」

「これは『市松模様』」


挿絵(By みてみん)


市松模様


「チェック柄ね」

「そして『キューブ・イン・キューブ』」


挿絵(By みてみん)


キューブ・イン・キューブ


「極めつけは『キューブ・イン・キューブ・イン・キューブ』です!」


挿絵(By みてみん)


キューブ・イン・キューブ・イン・キューブ


「おおー!」

「他にもいくつかのパターンキューブがあります」

 工程を暗記しつつ、パターンキューブを作るなどして半日。

 完璧とまではいかないが、ほぼ全工程を説明書なしでこなせるようになった。

「タイムトライアルをしましょう」

「じゃあ、おやつでも賭けるか。なにがいい?」


「大福!」


「よし、塩大福と『かぶせ茶』にしよう」

「かぶせ茶?」

「玉露の一種だ。玉露は20日ほど直射日光を遮って作った煎茶だが、20日未満のをかぶせ茶っていうんだよ」

「へー」

 玉露より淡い甘味で、若干渋味がある。


「あっつ!?」


 大福と合わせるならアツアツで、濃い目に入れるのがオススメだ。

「でもタイムトライアルしても、正攻法じゃ勝負にならないでしょ」


「そうですね。だからハンデとして2つやります」


「え、先生が2つ完成させるまでに1つ完成させればいいってこと?」

「そういうことです」

 これなら勝ち目がありそうだ。


「いま使っているのは安物なので、競技用のものを使いましょう。好きなものを選んでください」


「わ、ぬるぬる!」

「安物と全然違うな」

 さっきまで俺たちが使っていたものは手応えが硬く、たまにきしんで嫌な音がしていたが……。

 これは安物のような硬さがなく、すっと滑るように動く。

 滑らかに動くので壊れる心配もない。

「私これ」

「俺はこれにしよう」

「選びましたね。では始めましょう」


「ミッションスタート!」


 白のセンターキューブを上にし、十字を作っていく。

 十字までの早さなら俺たちと先生も大差ないはず。

 最低でも完全一面までは離されずについていきたい。

 そう思っていたのだが……

「ん?」

「あれ?」

 なにかがおかしい。

 十字の完成に手間取る。

 その間に先生は猛スピードで先へ進んでいった。

「ちょっとこれ、キューブの配色が違うわよ!?」

「あ、こっちもだ!? なんだこりゃ!?」


「ふふふ、ルービックキューブは種類によって配色が違うんですよ? さっきまで使っていたのが世界標準グローバルスタンダードの配色。2013年以前は日本独自の配色のものが主流でした。ちなみにメーカーによっては日本とも世界とも違う配色で売られています」


「これのことか!」

 最初の十字だけなら大した問題ではないが、これからもずっと違う配色で一から考えなければならないとなると、タイムロスは避けられない。

 そして案の定。


「先生の勝ちですね」


「くそ、競技用ってのは罠だったのか!」

「ズルいわよ!」

「でも好きキューブを自分で選びましたよね?」

「ぐぬぬ!」


 手応えの良さに浮かれず、ちゃんと細部を確認しておくべきだった。


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