紙ペンゲームセット【わらび餅と抹茶ラテ】
「俺も紙ペンゲームを作ってみた」
テーブルの上にどさっと紙を乗せる。
その名も『嵯峨フロンティア通』
「どういうルール?」
「これは地図に線を引くゲームだ。地図には平安貴族の牛車、皇族の乗る御輿、霊の出入口が記されてる」
地図
「サイコロ表に従って線を引き、同じ種類の出入口を繋げたら得点になる。ただし大路を横切らないと得点にはならない」
道の種類
サイコロ表
「同じ区画に牛車の出入口がありますけど、これを最短距離で繋げても得点にはならないわけですね」
「はい。御輿の出入口も最短距離だと大路を横切りませんから無意味です」
同じ区画に牛車の出入口が二つある
大路を横切らないと得点にならないので、最短距離で繋げても得点にはならない
平安京の交通網を整備するゲームだ。
「同じ種類の道なら繋げることができる。大路は広いから、牛車と御輿の道を交差させることも可能だ」
「交差」
「霊は特殊な道で、サイコロを振るたびに進行方向へ自動的に1マス進む。しかも進行方向に牛車や御輿の道があった場合、それを塗りつぶして分断する」
「厄介ね」
道の引き方
「じゃあ最初に盛り塩と金神と鍾馗の位置を決めるぞ」
ころころ
1と3
「サイコロで1と3が出たから、この位置に〇を描け。これが盛り塩だ。牛車の道が盛り塩に繋がると、それ以上先に進めなくなる」
「なんで?」
「牛が塩を舐めるからですね。古代中国では皇帝を自宅へ招くために盛り塩で牛車を止めたという伝説があります」
「へー」
「ただし霊の道を盛り塩に繋げると、盛り塩で悪霊が成仏して、悪霊の進行がそこで止まる。しかも盛り塩に繋がっている霊の道1つにつき3点入る」
「盛り塩は地図の中央付近に集中してますね」
「ここで悪霊を止めるのが重要になりそ」
ころころ
2
「2が出たから西に金の文字を記入しろ」
「はーい」
「金神は方角の神さま。金神のいる方向へ進むと災いが降りかかる。だから金神のいる方向へ直接進むことはできない」
「この場合、北や南に迂回してから西の区画に入れ。金神のいる区画の御輿の出入口を繋げると、5点獲得できる」
ころころ
6
「最後に鍾馗だ。この位置とここに魔の文字を記入しろ」
「さーいえっさー」
「これは魔除けの神さまだから、鍾馗のいる出入口に霊の道を繋げると、霊を退治して5点獲得できる。しかも横切った大路1つごとに5点獲得できる」
「悪霊退散が重要になりマスね」
これで準備も整った。
本格的にゲームを開始する前に、お茶を用意しておくことにする。
「最近わらび餅ドリンクが流行ってるらしいから、わらび餅と抹茶ラテにするか。ほうじ茶でもいいな」
「ジャパニーズ・タピオカドリンク!」
タピオカとはまた違った食感が楽しめる。
もちろんわらび餅と抹茶ラテを別々に楽しんでもいい。
「これぞ日本のサーロインですね」
「え、これのどこがステーキなの」
「サーロインはサー・ロイン。あまりに美味しいので、ヘンリー8世からサーの称号を賜ったといわれています。そしてわらび餅も醍醐天皇の好物で、太夫の称号を授けたといわれています」
「へー」
わらび餅は平安時代から伝わる、格式高いスイーツということだ。
「さて……」
テストプレイなので、一応俺も参加する。
「いかに出入口に繋がってる道に繋げるか、だな」
得点条件は『同じ種類の出入口が繋がっている』こと。
出入口は霊が4つ、牛車と御輿は8つ。
1つの組み合わせで得点できるのは一回だけ(たとえば出入口1と出入口2の組み合わせで得点できるのは一回だけ)。
出入口から一筆書きで、横切った大路の数だけ追加点が入る。
すでに出入口が繋がっている道に、まだ繋がっていない出入口の道を繋げれば一気に2回得点できる。
すでに繋がっている出入口1と2の道に、出入口3の道を繋げれば、1・3と2・3の組み合わせで得点できるということだ。
問題はサイコロ運。
ころころ
1ゾロ
「ぎゃーっ!?」
ゾロ目はすべて霊である。
しかも『まだ使用されていない霊の出入口を使用する』という条件があるからきつい。
「……どうすればいいのよ、これ?」
このまま放置しているとマップが真っ二つに分断されてしまう。
霊をどうするかがこのゲームの肝だ。
「霊に道を分断されたら困るから、適当な出入口に繋げとけばいいのかしら?」
霊―――
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――――
※霊が進むと困るので、適当な出入口に繋げることで進行を阻む
瑞穂が霊の対処に迷っていると、
「ゴーストレート!」
「はあっ!?」
アリスは霊を完全に放置していた。
俺にとっても予想外だった。
「霊の得点は低くしておくべきでしたね。このままだと何もしなくても大量得点できてしまいますから」
「あ……」
霊の対面には霊の出入口がある。
放置していれば自動的に霊の出入口が繋がって9点入るのだ(出入口を繋げて+3点、大路を2つ横切っているので+6点)。
霊の入口から2つ道を伸ばしていれば、地図を十字に交差して自動的に4つの出入口が繋がる。
つまり出入口1と2、1と3、1と4、2と3、2と4、3と4で得点できるのだ。
「ぐっ、なんでこんな単純なことに気づかなかったんだ!」
しかも、
「給料!」
すっと霊の道を枝分かれさせ、塩に繋げた。
塩の位置は地図の中央付近に固まっている。
ど真ん中を直進し続ける霊は塩へ繋げやすいのだ。
ちなみにサラリーの語源はラテン語の塩。
古代ローマでは塩で給料が払われていたからだ。
「まずい。鍾馗の位置も中央に近い大路!」
さらに霊の道を枝分かれさせて魔の出入口に繋げれば得点になる。
……まさか道づくりを邪魔するために設定した霊を、ここまで積極的に得点源にしてくるとは思わなかった。
根本からルールを調整したほうがいいのかもしれない。




