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【コミカライズ掲載中】電気代払えませんが非電源(アナログ)ゲームカフェなので問題ありません  作者: 東方不敗@ボードゲーム発売中
本編

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ハンドマネジメントセット【最中と玄米茶】

参考ゲーム

 ブラッディイン

「ソロで遊べるゲームでいいのありますか」

「ではこれをどうぞ」

 包丁を持った鬼婆という、見るからにやばそうなパッケージのボドゲを取り出した。


『黒塚』


「宿屋にやってきたお客さんを殺して埋めてお金を稼ぐゲームです」

「……思ってたよりヤバいのが出てきたな」

 先生が慣れた手つきでボードをセットし、山札をめくってボードに旅人を並べていく。

「最初の手札は2枚。手札は鬼婆の共犯者です。旅人カードのここに書かれた数字は、このカードへアクションをするのに必要な手札の数です」


「……つまりこいつを殺すには手札が1枚いると?」


「そういうことです。アクションの種類は4つ、『殺害』『買収』『建設』『埋葬』です。青のお客さんは買収、赤は建設、紫は埋葬、黒は殺害が得意です。プレイヤーのアクションと、共犯者の得意アクションが同じなら、アクション実行時に手札が戻ってきます」


「ええと、買収するときに買収が得意な共犯者の手札を使うと、その手札が戻ってくるってことですか?」

「はい」

「でもこの初期手札、何の色もないんですけど」


「それは『女中』ですね。なんの能力もない代わりに、一度に2枚まで引けます」


「プレイヤーのメイン手札か」

 使用した女中は元の場所に戻す。

 女中は4枚しかないので、手札として持てるのは最大で4枚まで。

 なお女中以外の共犯者(客の手札)は買収しないと手に入らない。

「建設っていうのは何ですか?」


「施設の建設ですね。建物のアイコンに書かれている数字が死体を埋葬できる数です。初期状態だと埋葬できる建物は1つしかありません」


「建物も色分けされてるな」

「得意分野によって効果が違います。たとえば買収が得意な共犯者の手札で施設を建てれば、買収するときの手札が1枚少なくなります」

「へえ」

 建設施設なら建設時の、埋葬施設なら埋葬するときのコストが安くなったりするらしい。

 他にも『一度に複数の死体を埋葬できるようになる』などの特殊能力があるが、コストを安くするのが一番出番のある能力だろう。


「こいつは1だから手札1枚で買収も建設もできるのか」


 大工の客を手札1枚で買収してから、もう1枚の手札で施設を建てる。

 これで次からは1枚少ない手札で施設を建てられる。

「1ラウンドは2アクションで終了です。残りのお客さんは全員チェックアウトして、宿泊費を1ずつもらいます。買収や殺害したお客さんからはもらえません」

「まあ、そうなるよな」


「ちなみにラウンド終了時に共犯者の手札が残っていると、給料や口止め料を払わないといけません」


「げっ!?」

「なので手持ちのお金が少ない場合は、手札を使い切ったほうがお得です」

「手札として消費すれば口止め料払わなくていいのか」

 どの手札を使い、どの手札を残しておくかが重要になるだろう。

「では次のラウンドに行きましょう」

 新しい客のカードを並べていく。

「ん、厄介そうなやつが来たな」


「十手アイコンのキャラは岡っ引きです。岡っ引きがいるときに死体を埋葬せずに放置しているとゲームオーバーになります」


「……ちっ、こいつがいると殺しにくいな。いや、こいつを買収するか殺せばいいのか」

 しかし何をするにも手札が足りない。

 とりあえず女中を2枚引く。


「そろそろるか」


 鬼婆の初仕事だ。

 女中をコストに岡っ引きを始末する。

「手札2枚で16両。ボロい仕事だな」

「お金はまだ手に入りません」

「え」


「埋葬して初めてお金になります」


「手間かかるな」

 手札を集める→殺す→埋めるで、最低でも3アクション。

 しかも、


「お金は最大で40両までしか持てません」


「は?」

「定期的にお金を預けないと溢れてしまいます」

「……どんどんアクションが増えていく」

 手札を集める→殺す→埋める→金を預ける。

 さらに死体を埋めるための建設が必要で、その建設をやるためには買収もしないといけない。

 買収→建設→殺害→埋葬。

 しかもこの4アクションそれぞれに手札が必要なのだ。

「やることが……やることが多い……!!」

 あっという間に時間を消費し、1ゲームが終わってしまった。


「稼いだお金がそのまま得点になります」


「……くっ、厄介な婆にすらなれなかったか」

 ソロプレイでは得点でランク付けされている。


 110~129点 厄介な鬼婆

 130~149点 危険な鬼婆

 150~169点 邪悪な鬼婆

 170点以上 悪魔的な鬼婆


 得意な仕事をさせて手札を回収しつつ、建設で手札のコストを低くしないと高得点は狙えない。

 まずは説明書で共犯者の能力の確認だ。


「買収といえばやっぱり最中モナカだな」


 焼き菓子なので玄米茶でいただく。

 自分で玄米茶を作ってもいい。

「渋めの煎茶でお願いします」

「あいよ」

 お茶のブレンドやカスタマイズというと敷居が高そうだが、好きなお茶に炒った米を混ぜるだけだから簡単だ。

「さて……」

 最中をかじりつつ、説明書を読み進めていく。


 色んな能力があるものの、どれだけ能力がよくてもその客が序盤に来なければ意味がない。


 終盤のラウンドはなるべく殺害・埋葬・預金・手札でまとめたいからだ。

 買収や建設をしている暇はない。

「170点以上取る場合は、25点以上の客を少なくとも7人殺す必要があるのか」

 すると建物の死体収容数は7つ以上必要になる。

 初期状態で1つあるので、残りは6。

 1つの建物の最大埋葬数は3。

 つまり最低でも建設は2回。

 建設コストを安くしても、あまり節約できなそうだ。

 買収もあまり出番がないだろう。


 ならば7回以上実行する必要のある殺害か埋葬だ。


 このどちらかのコストを節約できる施設を建設したい。

 そしてアクションをするときは、そのアクションが得意な共犯者にやらせる。

 すべては序盤に来る客次第。


「オープン!」


 埋葬コストを1つ減らす施設を建設できる坊さんが来た。

「埋葬プランで行こう」

 埋葬施設を作り、さらに坊さんを買収。

 これで坊さんに埋葬アクションをさせれば、手札が戻ってくる。

「流れが来てるな」

 問題は、


「げっ、岡っ引き2人!」


 厄介な事態にどう対処するか。

 2人同時に殺害・買収できるだけの手札はない。

 次のラウンドに備えて女中を引いて手札を確保しておくか、あるいは買収するか、早めに預金しておくか。

 とりあえず手札を増やしておく。


 そしてこういう時に限って、次のラウンドでは貧乏人しか来ない。


「くそっ!」

 かと思えば高額の客が2人同時に来たりもする。

 ままならない。

 結局、ギリギリのところで170点には届かなかった。


「カウンティングしておくべきでしたね」


「え」

「終盤は山札に岡っ引きが残っていませんでしたから」

「ぐっ……、岡っ引きを警戒しすぎたか」

 死体1つだけなら、次のラウンドに持ち越しても手札を引けるので埋葬できる。

 だが死体を2つ持ち越すと1ラウンドで処理するのは難しい。


 しかしカウンティングをしていれば、もう岡っ引きは来ないことがわかるので、いくらでも死体を放置できたのだ。


 無念。

「小腹が空いたな」

「最中1つでは物足りませんね」

 しかし月末なので金欠だ。

 あまりおやつに金を使いたくない。

 どうしたものかと迷っていたところ、


「それ、なんのゲーム?」


 格好のカモがやってきた。

「宿屋が客を殺して埋めて金を稼ぐゲームだ」

「え、なにそのめちゃくちゃな設定。私もやりたい!」

 乗ってきた。

 先生とアイコンタクトを交わす。

 こちらの意図が伝わったのか、こくんとうなずいた。

 買収成功。


 よし、瑞穂こいつをゲームで殺して奢らせよう。


 さいわい、こちらには最強の手札きょうはんしゃがある。


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