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本編

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バックギャモンセット【カイザーシュマーレンとカンポット】

参考ゲーム

 カルドセプトサーガ

「フレアーエムブレムのギャモン用に初級者向けのルールが欲しいな」


「では『ハーフギャモン』はどうでショー。これはバックギャモンのルールを半分ハーフにしたコンパクトなゲームデス」


挿絵(By みてみん)

通常のバックギャモンボード


通常ノーマルのギャモンボードは上下で24マスですが、ハーフギャモンは12マスだけ使いマス」

 アリスがボードに駒を並べた。



挿絵(By みてみん)

※ハーフギャモンの初期配置



「インナーボードも半分ハーフの3マスで、ピースは8個。ダイスはこれデス」

「ん、1から3までの目しかない?」


「いわゆる『一二三ひふみサイ』ですね」


「ギャンブル漫画でイカサマに使うやつじゃない」

 6面体で1・2・3の目が2つずつあるから、ゾロ目の出る可能性は高い。

 通常ルールより激しい戦いになりそうだ。


挿絵(By みてみん)


「ハーフギャモンだとボードの中央付近に駒を置くだろうから海戦だな」

「『世界の半分』をめぐる戦いね!」

「トラ食えらしいシチュエーションですね」


 トラ食えといえば竜王の『世界の半分をお前にやろう。我がものとなれ勇者よ!』というやり取りが有名だ。


 世界の半分、つまり海の世界を賭けた戦いということになる。

 ただ世界の半分の解釈はプレイヤーによって違う。

 トラ食えの4コマ漫画だと勇者に『男の世界』を与えて、竜王が女を独占するというオチが有名だ。

 他のパロディでもだいたいろくな世界をもらえない。


「やってることは普通のギャモンと大して変わらないわね」


「……まあ、ボードと駒とサイコロが半分になっただけだからな」

「では他のルールにもチャレンジしてみまショー。ギャモンにはローカルルールがたくさんありマス」

「どんなのがあるんだ?」

「アリスのオススメは『ノーヒット』デス」

「なにそれ」


「ヒット禁止デス」


「相手の駒を振り出しに戻せないってことか?」

「イエス」

「しかもヒットできないわけですから、相手の駒のいるマスはすべてブロックポイントになりますね」

「あ……。普通のギャモンと違って、どんどんブロットを作ったほうがいいんだ」

 ブロット、いわゆる『駒が1つしかないマス』に止まると、相手の駒を振り出しに戻せる。

 駒が2つ以上あるとブロックポイントになり、そのマスに止まることも相手の駒を振り出しに戻すこともできなくなる。


 だからギャモンではブロックポイントを作るのが重要になるわけだが、ノーヒットだとブロットがブロックポイントになってしまう。


 積極的にブロットを作りまくったほうがいいわけだ。

 通常ルールとはまったく違うゲーム展開になるだろう。

「ハーフギャモンとノーヒットはモードで採用したほうがよさそうだな」

 ハーフギャモンはカジュアル、ノーヒットはモダンだろうか。


対戦相手オポネントがブロックポイントにブロックされてムーブできるピースがない場合、『使わなかったダイスを再利用リユースできる』というローカルルールもありマス」


「相手にブロックされる確率の高いノーヒット向けのルールだな」

「選択ルールはファイヤーエンブレム風にスキル名で呼びましょ。相手の使わなかったサイコロを奪うわけだから、これは『盗む』ね」

「わかりやすいな」

 ネットでギャモンのローカルルールを調べ(ほとんど英語のページだが、最近は自動で翻訳してくれるのでありがたい)、俺たちも使えそうなスキルを探す。


「『制圧』はどうでしょう。これは相手のブロットに止まるとそのマスを制圧することができ、相手の駒が動けなくなるスキルです」


「制圧してるマスには止まれるの?」

制圧コントロールしているマスはブロックポイントになりマス」

 制圧されても振り出しに戻されるわけではないし、制圧していたプレイヤーが動けばこちらも動けるようになる。

 制圧されることのペナルティは少ない。

 通常のギャモンよりも積極的にブロットを作れつつ、ブロックポイントを作る重要性も上がるわけだ。


「『追撃』スキルもいいな。先手を決めるときと同じ要領でお互いに一個ずつサイコロを振り合い、相手より高い目を出したプレイヤーが駒を動かせる」


「追撃だから、自分の手番が終わった後に宣言するスキルですね」

 つまり自分の駒を動かした後に発動するスキルである。

 成功すればもう一度駒を動かせるが、失敗したら相手に追撃(反撃)されてしまう。

 たとえば自分の手番後に追撃を宣言し、サイコロを振って5対6で負けてしまったら、対戦相手が5と6で駒を動かせるということだ。


「『溜める』も王道ね。一回手番をパスして、次の手番でサイコロを4個振れるスキル」


「ゾロ目が3つか4つそろった場合はどうするんだ?」

「3つそろえば6回、4つそろえば8回動かせるわよ」

「……地味に強スキルだな」

 溜めるはRPGでもよく出てくるスキルだ。


 1ターン1回攻撃を2回やるのと、攻撃力を2倍にして1回攻撃するのとでは結果に差がないように思える。


 だがもっとも単純なダメージ計算式は『攻撃力-相手の防御力』である。

 こちらの攻撃力が100で相手の防御力が50なら50のダメージを与えられる。

 通常攻撃を2回やれば100ダメージ。

 しかし溜めるならダメージ計算は1回しか行われない。

 つまり攻撃力200-防御力50になるわけで、150ダメージ与えられるのだ。

 クリティカルなら350ダメージになる。

 通常攻撃は連続クリティカルを出さないといけない上に、仮に出せたとしても300ダメージにしかならない。

 バフやデバフを使えばさらに差は開く。

 これが溜めるの強さだ。


「……さすがに強力すぎませんか? 溜めれる回数に制限を付けるか、なにかデメリットがないとまともにサイコロを振ることがなくなってしまいます」


「溜めた場合はヒットできなくなるとか?」

「戦術の幅が広がるな」

 溜めると一時的にノーヒットと同じシステムになる。

 ブロットがあると溜めにくい。


 相手が溜めるのを見てからブロット(ブロックポイント)を作ることもできる。


 移動できなくなる可能性が上がり、相手にサイコロを盗まれる確率も上がる。

 溜めるは1回しか攻撃できない分、ミスしたときのリスクが高いのだ。

 これぐらいのデメリットがあってちょうどいい。


「マニアックなものだと『一時撤退』は日本のローカルルールのようですね。ヒットされたらバーに行くのではなく、相手のインナーボードの好きな位置にヒットされた駒を置くことができます」


「え、わざとヒットされてブロックポイント作ってもいいってこと?」

「もちろんOKです。ただし相手の駒のいるマスには撤退できません」

「そりゃそうだ」

戦略的撤退ストラテジック・ウィズドローワル

 ヒットされたら振り出しに近い場所には戻されるわけだが、ブロックポイントを作れるのは大きい。

「『挑発』スキルは、手番終了時に自分のブロットを1つ指定します。対戦相手はヒットできるブロットが複数あっても、その指定されたブロットをヒットしないといけません」

 使いどころが難しいスキルだ。


「『フレアーエムブレム』もあったほうがよくない? 炎の紋章の力で自分のサイコロを振り直すか、相手にもう一度サイコロを振らせるスキル」


「1ゲームに1回しか使えないやつですね」

「そうそう」

 ただこれだと重要アイテムをお互いのプレイヤーが持っている(フレアーエムブレムが世界に2つある)ということになる。

 まあ、ゲームなので細かいことは気にしないほうがいいのだろうが。

 ちなみに『時間を巻き戻してやりなおせる』システムはファイヤーエンブレムを始め、シミュレーションゲームではわりとよくあるシステムらしい。

「スキルもそろってきたから、一服しながらルールまとめるか」


「じゃあ引き裂きパンケーキとカンポットね」


「……またマニアックなものを」

 引き裂きパンケーキはたぶんカイザーシュマーレンだろう。

 オーストリアのスイーツだ。

 固まりかけのパンケーキを引き裂いて焼き、粉砂糖を振りかけ、果物のソース(コンポート)をかける。

 ファイヤーエンブレムだと卵、ミルク、ベリー、小麦粉が材料らしいので、ベリーソースをかけることにする。

「ふわふわデス」

 普通のパンケーキよりもふわふわもっちりな食感で、粉砂糖もそんなに甘いものではない。

 個人的には朝に食べると最高だ。


 カンポットは果物と砂糖水で作る飲料である。


 ゲームだとリンゴのカンポットだ。

「あったまるー」

 寒い日には温めて飲むこともある。

 リンゴのカンポットならシナモンとの相性が抜群だ。

 これを煮詰めてコンポートにしても美味いだろう。


「ではハーフギャモンをやってみましょうか」


 先生が一二三サイを取り出す。

四五六しごろサイもあるの?」

「もちろんあります。あとは奇数サイと偶数サイもありますね」

 1・3・5と2・4・6の描かれたサイコロだ。

「……なんに使うんですか、こんなの」


「ゲームの疑似乱数を再現できるじゃない。『ゴシックモード』作りましょ」


「どういうモードだ?」

「『カードセプター嵯峨』だと『線形合同法』っていう疑似乱数を使ってて、奇数と偶数が交互に出るのよ」

「ぬ、プライムが作れまセン」

 先手が奇数、後手が偶数の二人対戦だと仮定すると、後手の偶数プレイヤーはプライムを作って相手の駒を閉じ込めることはできない。



●●●●●●

●●●●●●

654321


プライム



 後手は奇数マスに止まれないからだ。


「でも1・3・5と2・4・6だから奇数プレイヤーは期待値が低くなるでしょ?」


「たしかに期待値では偶数が有利かもしれんが……」

 サイコロ2個だけでも期待値に差があるのに、偶数奇数サイはゾロ目が出やすいからさらに偶数が強くなる。



奇数

1+3=4

1+5=6

3+5=8

1ゾロ=4

3ゾロ=12

5ゾロ=20


偶数

2+4=6

2+6=8

4+6=10

2ゾロ=8

4ゾロ=16

6ゾロ=24



 平目で2、ゾロ目では4の差がある。

 この差はかなり大きい。

「期待値で差があってもプライムが作れない上に、奇数マスにベアリングインできないのはきついだろ」

「しかも奇数オッドナンバーをヒットできまセン」

「ヒットされる心配がないからブロットも作り放題ですね」


「そこでスキルの出番よ! 1手ごとに偶数奇数が切り替わるわけだから、追撃とかフレアーエムブレムでサイコロを一回余計に振ったり、溜めるで手番をパスすれば相手を偶数にできるでしょ」


「アナログゲームで乱数調整するな」


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