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【コミカライズ掲載中】電気代払えませんが非電源(アナログ)ゲームカフェなので問題ありません  作者: 東方不敗@ボードゲーム発売中
本編

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ルドーセット【グラブジャムンとヨーグルト】

「ルドーをしまショー!」


「なんだそれ?」

「わかりやすく表現するなら4人プレイのバックギャモンですね」


「あー、『世界の遊技大全51』に収録されて話題になったやつだっけ?」


「いえす」

 世界の遊技大全51は世界中のアナログゲームが収録されているソフトらしい。

 話題になったというからには、51個のゲームの中でもトップクラスに面白いのだろう。

「各プレイヤーには駒が4個ずつ与えられます」

 先生が十字型のボードを広げ、丸の中に4つの駒を置いた。


「すべてのプレイヤーは時計回りに駒を動かして十字型のボードをグルっと一周し、自分の色が4つ並んでいるマスに駒を4個すべてゴールさせたら勝ちです」


挿絵(By みてみん)

ルドー

※矢印のマスがスタート地点で、自分の色のマスが4つ並んでいるところがゴール


「相手の駒のあるマスに止まった場合はどうなるんですか?」

「バックギャモンと同じように、相手の駒がいるマスに止まると相手の駒を振り出しに戻すことができます。ただしブロックポイントは作れません」

「自分の駒がいるマスには止まれないってこと?」

「止まれまセン」

 細かいルールは違うが、たしかに4人プレイ用のバックギャモンだ。

「平安京でもやれそうだな」

 平安京ボードの大路を拡大してルドー盤を作る。


挿絵(By みてみん)


 色は白黒赤青黄で分けることにした。

 東は青龍の青、西は白虎の白、南は朱雀の赤、北は玄武の黒、中央は黄龍の黄色。

「これ、大内裏の南東よね? なんでこんな中途半端な場所をボードにしたの」


「ここは百鬼夜行が出ることで有名な『あわわの辻』だ」


「若かりし頃の安倍晴明が百鬼夜行に遭遇したのもここではないかといわれてますね」

「AWAWAとはなんデスか?」


「百鬼夜行に遭遇した人が『あわわ……』ってなるからあわわの辻だ」


「絶対ウソでしょ」

「本当です」

「ええっ!?」

 事実は小説より奇なり。

 なお大宮大路と二条大路の交差する場所なので、現在では二条城の敷地内になっている。


「フレアーエムブレムの素材でボード作ってもいいな」


挿絵(By みてみん)


 平安京やドット絵は使い廻しをしやすいので助かる。

 とりあえず今回は平安京でプレイすることにした。

「ではやってみましょう」

「アーレア・ヤクタ・エスト!」

 アリスがサイコロを1個振る。


ころころ



「パスですネ」

「は?」

「バックギャモンでは駒をヒットされるとバーに飛ばされて、バーからボードに駒を戻せないと一回休みになりますよね?」

「はい。エンターとダンスですね」


「ルドーはバーに飛ばされた状態からゲームが始まります。サイコロで6を出したら自陣ふりだしから矢印のマスに駒を出してボードを進むことができます。逆にいうと6を出さない限り、スタートすることすらできません」


「はあっ!?」

「運ゲーじゃない!」

「それがルドーのヨーグルトテイストなのデス」

「醍醐味って言え」

 サイコロの出目で一喜一憂する。

 たしかにそれはダイスゲームの醍醐味ではあるが、


ころころ



「あわわ……!」

「……なんだこのプレーンヨーグルト」

 砂糖もフルーツも入ってなくて味気ない。


 ……サイコロ運が悪いと何もできない虚無のゲームだ。


 話題になったのも純粋な面白さからではないだろう。

 これは想像以上にやばいゲームらしい。


ころころ


「よし、6だ!」

「6を出したらもう一度サイコロを振れます」

「6が出るかぎり何個でもボードに駒を出していいんですよね?」

「はい。6を出して複数の駒をボードに出すこと、それがこのゲームにおける数少ない駆け引きです」


「……6を出せないプレイヤーは駆け引きすらできないってことじゃない」


 地獄のようなゲームだ。

 6が出る確率は約16.7%。

 高すぎず低すぎず、出るときは続けて出るし出ないときは泣きたくなるほど出ない。

 絶妙な塩梅あんばいだ。


ころころ


「追い越してしまいますから、これは後ろの駒を動かしたほうがいいですね」

「ちっ」

 一番安全なのは敵の後ろ。

 大きい出目を出したからといって、相手の駒を追い越してしまうとヒットされる可能性が高まってしまうからだ。

 ただしボード上に駒が一つしかない場合はこの駆け引きができない。

 サイコロの出目に従って機械的に駒を動かすことしかできないわけだ。


ころころ


「やった! 1個ゴール!」

「シット!」

「運のいい奴め」

「ふふん」

 だがここからが本当の地獄だった。


ころころ


「あぁっ、6が出ない!?」

 どれだけ絶好のスタートダッシュを決めても、6を出さない限り2個目、3個目の駒を動かすことはおろか、ボードの上に出すこともできないのだ。

 さらに、


ころころ


「ヒット!」

「ぐっ!?」

 ブロックポイントを作れないので、どうしてもヒットされてしまう。

 4人対戦だから攻撃される機会も多い。

 そしてヒットされたら、また6を出さないとボードに復帰できない。

 サイコロを振っても振っても6が出ず、苦労して先へ進んでもヒットされて振り出しに戻る。


 ……石を積んでは崩され、また積んでは崩されるのを繰り返す『さいの河原』のようなゲームだ。


「うぃなー!」

「……なんだ、この疲労感は」

「負けたときの絶望も半端ないわね」

 単純なゲームであるにもかかわらず1ゲームに40分ほどかかった。


 ちなみに世界の遊技大全51の中では、『1ゲームの平均プレイ時間が一番長い』らしい。


 あらゆる要素がプレイヤーを苦しめる方向に働いている奇跡のゲームだ。

「ヨーグルトちょうだい。疲れたから甘いやつね」

「あいよ」

 要望に応えてプレーンヨーグルトを用意し、缶詰を開けた。

「あ、ローズの香り。それなんのフルーツ?」


「グラブジャムン。『世界一甘いお菓子』として有名なドーナツだ」


「ドーナツのシロップ漬け!?」

「インドはカルピスを原液で飲む国ですから」

「くれいじー」

 ローズウォーターで香り付けしたシロップが、丸いドーナツの芯までたっぷり染み込んでいる。

 これがどれぐらい甘いかというと、


「あああぁっ、甘すぎて苦しい!?」


「そのためのヨーグルトだ。そのまま食べるとしばらく甘いものが食えなくなるぞ」

「先に言いなさいよ!」

 甘党の親父が『俺はもう一生甘いものを食べない』というレベルである。

 ブラックコーヒーやヨーグルトのような甘味を中和するものは必須だ。

 ヨーグルトに牛乳を混ぜてラッシーにしてもいい。


 ……まあ、この程度で中和しきれるほど甘くはない甘さだが。


 苦さや辛さ、酸っぱさで悶絶することはあっても、甘さで悶絶することはあまりない。

 人生で一度は体験してもらいたい甘味の爆弾である。

「でもこのままのルールだと友情破壊ゲームにしかならんな」

「一応ボード上に駒がないときは、無条件で駒を出せるというルールもあります」

「それでいきましょ」

「『ノーパッシング』もオススメですヨ?」

「なんだそれ」


「追い越し禁止ですね」


「駒を追い越せなくなるルールか」

「とりあえずそれも採用してみましょ」

「あとはダブリングキューブだな。ポイント制にして、二人以上がテイクかパスをしたらダブルかパスが成立する」

「おーけー」

 新ルールでプレイ再開。


「6出さなくても場に駒を出せるのは気楽だな」


「ダブリングキューブありだとパスをした時点でそのゲームが終了しますから、泥沼感が薄れるのもいいですね」

「ちょっと物足りない気もするけど」

「みーとぅー」

 ……やはりゲーマーたちは頭がおかしい。


ころころ


「あ、追い越し禁止だからこれ以上進めないじゃない」

「……本性を現してきたな」

 追い越しありだと、追い越してしまうことでヒットされる危険性が高まった。

 だが追い越し禁止のルールだと、一回休みになる可能性が高まってしまう。

 つまり、


「ブロック!」


「くそっ!」

 わざと自分の駒を動かさないことで相手の駒をブロックできてしまう。

 相手の前にいるのでヒットされる危険性はあるものの、ヒットされる確率は6が出る確率と同じだと考えれば怖さも薄れる。

 出るときは出るし、出ないときは嫌というほど出ない。


ころころ


「あわわ……!」

「くっくっく、俺の独走だな!」

 早くも2個目の駒をゴールさせようとして、

「あ」

 手が止まった。


「ゴールにいる駒も追い越せませんよ?」


「しまった!」

 ゴールは4マス。

 追い越しありなら自分の駒を追い越してしまえばいい。

 サイコロの出目さえ合えばすぐにゴールできる。

 だが追い越し禁止のルールでは、最初の1マス目に1個目の駒が止まっていたら2個目の駒は絶対にゴールできない。


 全ての駒をゴールさせるには、2マス目、3マス目、4マス目と、ゴールにある駒をあらかじめ後ろに動かしておかなければならなかったのだ。



※1マス目に駒があると他の駒がゴールできない


 すでにゴールにいる1個目の駒を4マス目に移動させることができればいいが、


ころころ



「くそ!」

 現実はそううまくいかない。

 2個目をゴールさせるために1個目を1マスだけ動かして、そして2個目の駒を1マス目にゴールさせたら、次は3個目をゴールさせるために1個目と2個目をまた動かさないといけない。

 4や5を出してしまったら駒を動かせずに一回休み(6はもう一度振れる)。

 ロスが多すぎる。

 2個目の駒がゴール前に着いてから1個目を動かすのも遅すぎた。


 1・2・3の目が出たときは、ゴールにいる駒を優先的に動かしておくべきだったのだ。


 追い越しありよりも、追い越し禁止のルールのほうが俺好みかもしれない。

「結構盛り上がったわね」

「……めちゃくちゃ疲れたけどな」

 欠点の多いゲームだが話題になるのもわかる。


 多人数プレイの運ゲーだからこそ味わえる泥沼の面白さだ。


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