表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

368/382

探偵ゲームセット【キャロットケーキとインドネシア】

探偵ゲーム回を分割した回です。

特に加筆はありません。


参考ゲーム

金田一少年の事件簿 星見島悲しみの復讐鬼

倒叙とうじょ系のミステリゲームはあるのか?」


「とうじょ?」

「犯人視点の作品だよ」


「名探偵をダマして完全犯罪をやり遂げるゲームならあるわよ」


「マジであるのかよ」

 しかも名探偵は『金田少年』だ。

 『金田一かねだ・はじめ』の孫という設定のミステリ漫画『金田少年の事件簿』の主人公である。

 ゲームとしてはシンプルなテキストアドベンチャーだ。

 プレイヤーがちゃんと選択肢を吟味しないと、基本的に犯人は行き当たりばったりに行動してしまう。


『今ならコーヒーポットに毒を入れられるんじゃないか?』


「いやいや。毒を盛れそうだからって、安易に行動しようとするなよ。どうやって偽装工作するつもりなんだ。絶対バレるだろ」

 一応計画を立てることはあるものの、その場の気分でターゲットと殺害方法を決めるので詰めが甘い。

 何より問題なのは、

「よし、成功した! これならバレないはず」


『この2人は同じ部屋で殺されているのに、殺害方法が違うのはおかしい』


「!?」

 すかさず金田少年が突っ込みを入れてきた。

『一人目をナイフで殺したのなら、ナイフが抜けないことでもないかぎりもう一人もナイフで殺そうとするはずだ。なのに彼女は絞殺されている。同じ部屋で殺されていたからといって、同じ時間に殺されたとは限らない』

 少しでも犯行に穴があると即座にバレてしまう。

 恐ろしく観察眼が鋭く、カマをかけるのもうまい。

 犯罪者にとっては悪魔のように恐ろしい存在だ。

 主人公も頭の回転はわりと早いのだが、


『しまった! ニンジンを捨て忘れていた!』


「……こいつはアホなのか天才なのかわからん」

「プレイヤー次第よ」

 たまに信じられない失敗をする。

 勘違いで関係のない人物へ復讐してしまったり、毒を仕込んだ飲み物をターゲット以外の人物が飲んでしまうのは序の口。


 ひどいのはポケットだ。


 凶器や証拠の品をポケットにしまった時、高確率で金田少年に発見される。

 不自然にポケットが膨らんでいるのを見とがめられるのならまだいい。

 しかしこの主人公、思いっきりポケットから証拠品がはみ出していたり、その場にポトリと落としてしまうのだ。


 ニンジンがスーツの胸ポケットから飛び出しているCGが『2枚』あるのは笑うしかない。


 シリアスな笑いとしては嫌いではないものの、やっと完全犯罪成功と思った時にこういうミスをやられると殺意が芽生える。

 ちなみにこのニンジンのシーンは『島に潜伏している男が犯人なら、食事はどうしているのだろう』という金田少年の疑問を解消するために、浅はかにも調理場へ直行して『食料が盗まれた偽装工作』をしようとした結果だ。

 完全に金田少年に誘い出された形だ。


「ニンジン食べたい」


「キャロットケーキぐらいしかないぞ」

「じゃあそれ」

「あいよ」

 ゲームではコーヒーに毒を盛っていたので飲み物はコーヒーにする。

 キャロットケーキにはスパイスが使われているから、インドネシアが無難だろう。

 スパイス風味なケニアでもいいかもしれない。


「……これ、完全犯罪ルートっていくつあるんだ?」


「選択肢で選ぶタイプのトリックだと、完全犯罪になるルートは1つだけよ」

「やっぱりか!」

 どうすればこの方法で完全犯罪出来るかと考えても、正規ルート以外では絶対に失敗する。

 それに気づかないと、ムダにゲームオーバーを繰り返すことになる。

 ただルートの少なさや主人公の突拍子もない行動・ミスはともかく、アドベンチャーとしてはそれなりによくできていた。

 トリックも斬新さには欠けるものの、堅実で実際にやれそうなものばかりである。

 コマンド総当たりで選択肢をしらみつぶしにしていればクリアできるだろう。

 ただし例外はある。


「ん、なんだこれ」


 唐突に画面が切り替わり、斜め見降ろし視点のミニゲームが始まった。

「ステルスゲームよ。人に目撃されずに鍵を盗んだり、殺人現場から逃げられたらクリア」

「……操作性悪いな」

 こういう斜め見下ろし型のゲームは、十字キーの操作で微妙に混乱する。

 普通、画面の上に行こうと思ったら十字キーの上を押す。


 だが斜め見下ろし型のゲームは『マップが斜めに傾いている』ため、十字キーの上を押すと右斜め上に進む。


 直感的に動かしにくい。

 ダッシュも遅いので、時間制限があるとかなり焦る。

 コントローラーを90度傾ければ、十字キーの右が上になるのでプレイしやすい。

 金田少年や刑事もステルスゲーム特有の視野の狭さなので、フェイントにさえ引っかからなければクリアできるだろう。

「慣れればこういうこともできるわよ」

 廊下に何人もいる状態で人を殺し、現場から脱出するミニゲームに突入した。


「Bダッシュ!」


「はあ!?」

 完全に金田少年や刑事の行動パターンを把握しているらしく、死角ギリギリのところを突っ走って人ごみを抜けた。

 意味が分からない。

「トリックってどうやっても証拠が残るじゃない? だから力技で逃げたほうが完全犯罪になりやすいのよ」

「……その発想はなかった」

 推理漫画が原作なのでどうしてもトリックを重要視しがちだが、このゲームはあくまで『完全犯罪を実行するゲーム』であって『推理ゲーム』ではない。

『犯人はどうやって現場から逃げ出したんだ?』

 さすがに『超人的な身体能力で死角から死角へ素早く移動し、誰にも見つからずに廊下を抜けた』とは金田少年も推理できず、めでたく事件は迷宮入りした。


 やはり身体能力フィジカル


 身体能力フィジカルはすべてを解決する。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ