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【コミカライズ掲載中】電気代払えませんが非電源(アナログ)ゲームカフェなので問題ありません  作者: 東方不敗@ボードゲーム発売中
本編

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競馬ゲームセット【バナナとレモン水】

競馬ゲーム回を分割して加筆した話です。


参考ゲーム

ソリティ馬

ステークスウィナー

「あー、数字ばらけすぎ」


「懐かしいなソリティア」

 だいたいパソコンに標準搭載されているゲームなので、暇つぶしによくプレイしていた。


 本来ソリティアとは一人ソロで遊ぶゲームのことなのだが、『クロンダイク』というゲームがソリティアという名前で収録されていたため、クロンダイク系のゲーム全般をソリティアと呼ぶようになったという。


 今プレイしているのは『ゴルフ』と呼ばれるタイプのソリティアだ。

 ルールは単純。

 自分の手札の数字プラスマイナス1のカードを取ることができ、場にあるカードを全部取ればクリア。




5←プレイヤーの手札


※プレイヤーの手札が5なので4か6の場札を取れる。ただし列の一番前にあるカードしか取れない(この例だと4)。



8Q2A64K

J692JK4

K324QA5

49JA677


※ゲームはだいたい縦7列で始まる



 場に取れるカードがなかったら山札から1枚引く。

 山札がなくなったらゲームオーバーだ。


「くっ! ガッツが足りない!」


「ガッツ?」

「ソリティアでパーフェクト取らないと中々ガッツが溜まらないのよ」

「……なんだこれ。なんで競馬ゲームでソリティアやってるんだ」


「TCGのアニメでもバイクに乗りながらデュエルしてるじゃない」


「アニメでもなんでバイクに乗ってカードゲームしてるのかまったく説明がないだろ!」

「人は騎乗ライドしながらカードゲームをしたくなる生き物なのよ」

 ……ライディングデュエルもこれもどうしてこうなったのかまったくわからないが、とにかく世にも珍しい『競馬ソリティアゲーム』だ。


 その名も『ソリティマ』。


 マは馬のことらしい。

「地味だけどコンパクトにまとまってて結構人気があるのよ。地味だけど」

「地味を強調するな」

 一人でポチポチと単純作業をするのが好きなプレイヤーにはたまらないゲームだろう。

 とりあえずやってみる。


 ストーリーは『馬に蹴られて死んだ新人ジョッキーが競馬の神さまの力で生き返り、お前の趣味のソリティアと同じぐらい馬を上手に操れるようにしてやろう』というカオスな展開だった。


 荒唐無稽な導入はともかくとして、そこからはわりと普通(?)の競馬ゲームである。

 スタートは枚数の少ない変則ソリティアだ。

 場にあるすべてのカードを取る必要はない。


 どこでもいいので縦1列のカードを素早く全部取ればスタートダッシュ成功。


 取るのが遅れると出遅れてポジショニングが悪くなる。

 馬の脚質(逃げ・先行・差し・追い込み)ごとにベストポジションがあり、ポジションを確保できればガッツを上げやすい。

「レベル2か」

 ポジションにはレベルがあり、3が最高、0だとガッツが上がらない。

 レベル2なら悪くないはずだ。

 そして本格的にソリティアが始まる。


「5・4・5・6・7……と」


 数字がいい感じにそろっており、なかなか小気味よくトランプを取れた。

 一度にたくさんトランプを取ると馬の機嫌がよくなり、スタミナが減りにくくなってガッツも溜まる。


 ガッツがあるほど最後の直線でスピードが速くなるようだ(馬ごとに最高速度が設定されており、ガッツをたくさん溜めると100%の力で走れる)。


 ただしスタミナがないと失速してしまう。

「2回目か」

 レース中にプレイするソリティアは1回だけではない。

 長距離になるほど回数が多くなる。

 そして1回のソリティアが終わるたびに、ベストポジションの位置がずれるのでポジショニングを調整しなければならない。


 馬を移動させるには『折り合い』というポイントが必要だ。


 最大値は100で、折り合いがないと移動すらできなくなる。

 移動後に残った折り合いはガッツに変換したほうがいい。

 機嫌がいいときほど変換されるガッツの量が多くなるので、機嫌が悪い場合はストックしておくという選択肢もある。

「このポジショニング中に流れてくるカードはなんだ?」

「レース中に効力を発揮するアイテムと経験値」

「経験値?」


「レース中に拾ったアイテムと、レース後に残ってるスタミナを経験値に変換して馬をレベルアップさせるのよ」


「育成要素もあるのか」

 拾えるアイテムは経験値(ステータス経験値とスキル経験値の二種類ある)、ブースト(最後の直線で加速できる)、スタミナ・ガッツ・ご機嫌上昇(回復)、お邪魔カード(これを取るとソリティアに並ぶトランプが増える)の4種類。

 スクロールしてくるアイテムを拾いつつ、自分の馬をどこに動かすか決める必要がある。


 他の馬に接触したり、コースの外側に移動する(走る距離が長くなる)とスタミナを消費するので注意。


 ガッツが低いときに他馬と接触すると押しのけられる。

 場合によっては吹っ飛ばされることもある。

 吹き飛ばされたらポジショニングが滅茶苦茶になるので、ぶつかりそうな場合は折り合いを消費してでも迂回したほうがよさそうだ。


『人馬一体!』


「なんだ!?」

「ベストポジションにいるときにソリティアでパーフェクトを達成するとこうなるのよ。人馬一体の最中はスタミナが減らなくて、流れてくるアイテムも吸い込んでくれるから」

「強いな」

 スタミナを消費しないのでガンガン敵に体当たりして削ることもできるし、わざわざ移動しなくても驚きの吸収力で経験値などのアイテムを回収してくれた。

 いかにソリティアを成功させて人馬一体になれるかで勝負が決まる。


「げ、前が開かない!?」


「競馬ゲーム名物『モブロック』ね」

 最後の直線ではリアルタイムで馬を動かすことになるのだが、前の馬が邪魔で抜け出せない。

 これを避けたいなら最後の直線前に馬を大外へ持ち出しておかないといけない。

 最高速度ガッツに自信があるのなら、スタミナを消費してでも大外から仕掛けるのが一番安全だ。

 万が一囲まれてしまっても、

「ぶち抜け!」

 ブーストやムチを打つことで馬群をかき分け、強引に前へ出ることができる。

 ただしムチを打つとスタミナを消費するし、スタミナがなくなるとムチを打つこともできない。


 スタミナを温存すれば経験値に変換できるので、使いどころを見極めないとレースに勝っても強くなれないのだ。


「さすがに新馬戦は楽勝だな。でもアイテムほとんど取り逃したから経験値少ないな。……そもそも経験値入ってるか、これ?」

「経験値はアイテムと残存スタミナでしか入手できないわよ」

「勝っても経験値なし!?」


「だからなるべくたくさんレースに出る必要あるんだけど、出走レースは自動的に決められるからプレイヤーは勝敗でコントロールするしかないのよね」


「どのレースに勝つかで出れるレースの数が変わるのか」

「逆よ。勝ったらレベルの高いレースに直行するから、わざと負けてレベルの低いレースにたくさん出走するの」

「……他の競馬ゲームでもあったよな。わざと負けてランクを調節する」

 同じ題材なので必然的に似てしまうのかもしれない。

 なお途中からG1ばかりになるので、わざと負けるなら新馬戦や未勝利戦がベストである。


「システムはだいたいわかった」


 色々競馬ゲームとしてのシステムが存在しているものの、結局はソリティアの腕がものをいう。

 一時期プレイしていたこともあって2歳馬のレースは楽勝だ。

 コツは状況に応じて内や外に行くこと。


 コースの内側はスタミナの消費が少ない代わりにソリティアの難易度が高くなり、外はスタミナを浪費する代わりにソリティアが優しくなる。


 スタミナに余裕のある時や、人馬一体の時は積極的に外へ出したほうがいい。

 ソリティアのコツは縦に残さないこと、そして数字の繋がっているトランプはあえて取らないこと。




※縦に残ると1枚ずつしか取れず、取ることのできる札の種類も限られる



354


※横なら一気に取れる



32

 5


※たとえば3を取れるシチュエーションがあっても、わざと3を残しておく

3がない場合、5を取った後、1か3を引かないと2を取れない

3が残っていれば、5を取った後、1・2・3・4のいずれかを引けば両方とも取れる



『人馬一体』


「よし!」

 初のG1挑戦も難なく快勝した。


『朝日杯、ゲットだぜ!』


「……どこかで聞いたことのあるセリフだな」

「このゲーム作ったの『パチモン』の会社だもの」

「セルフパロディかよ」

 そういえば馬の名前も微妙にパチモンっぽいものが多かった。

 販売元は花札やトランプを作っている会社なので、ソリティマ柄のトランプが発売されたら買うかもしれない。


「ちっ、さすがに三歳になると簡単には勝てんな」


 ここから一気にレベルが上がってくる。

 基本的に人気上位の馬はこちらより速い。

 正攻法ではとても勝ち目がない。


『人馬一体』


 なので人馬一体を確実に決めてスタミナを温存しつつ、体当たりで相手のスタミナを削るしかない。

 それでも元のスピードが違いすぎるので、どうしても限界がある。

「スピード差2倍!? ……一匹だけならともかく、格上しかいないぞ。どうやって勝てばいいんだ、こんなの」


「わざと当たり負けして前にワープすればいいじゃない」


「は?」

「自分よりガッツの高い馬に当たると吹き飛ばされることがあるでしょ。これ、当たり所がよければ前に吹っ飛ぶのよ」

「相手も動いてるんだぞ、狙って前に吹き飛べるのか?」


「そこはギャンブル」


「競馬はそんなギャンブルじゃねえ」

 だいたい後ろに吹っ飛ばされるので無難にソリティアを攻略し、そして順当に負けた。

 育てた馬同士で子供を作って能力と優秀なスキルを引き継がなければG1完全制覇は難しいだろう。

 手軽にプレイできるので『あと1回だけ』という気持ちでプレイしていると、気づけば数時間が経過していることも珍しくない。

 変わり種だが良質な競馬ゲームだった。


「馬ってリンゴとバナナも好きなのよね」


「甘党だからな、角砂糖もボリボリするぞ。レモン水をやることもあるらしい」

「レモン水?」

「遠征で水が合わないと体調を崩すんだよ。レモンを入れれば臭いは気にならないし、普段からレモン水をやってればいつも飲んでる味になって安心する」

「……もしかしてラーメン屋にレモン水が置いてあるのって」


「飲食店の種類にもよるが、レモンを使うメニューがないのにレモン水があったら水道水がカルキ臭くてまずいからだと思って間違いない」


「やっぱり!」

 レモンティーやスイーツ、唐揚げなどでレモンを使う店は、スライスレモンのあまりを入れたりする。

 うちもレモン水を出す場合はこのパターンだ。

「他に競馬ゲームっていったらこれね」

 古いパッケージを取り出した。


『ステイヤーズウィナー』


 聞いたこともない。

「どういうゲームなんだ?」

「昔ながらの連打ゲー」

「……勝てる気がしないんだが」

「私はアイテム使わないから大丈夫」

 どうやらこの競馬ゲームでもパワーアップアイテムが落ちてるらしい。

 何も知らない状態では勝負にならないので、先に練習することにする。

 操作は簡単。

 手綱を押す、引く、ムチ、仕掛け(特定のポイントでボタンを押すと体力が回復し、パワーアップする)だけ。


 仕掛けのタイミングは馬のタイプによって違うものの、GOマークが表示された時にボタンを押すだけなので難しくはない。


 このゲームも折り合いのようなものがあり、馬の顔色をうかがいながら手綱とムチを使い分ける必要がある。

 手綱を入れると加速、ムチを入れるともっと加速。

 とうぜん加速し続けると折り合いが悪くなり、スタミナが減る。

 手綱よりムチのほうがスタミナの消費が激しい。


 なのでムチを入れ、顔色が悪くなったら手綱で調整、よくなったらムチだ。


 そして仕掛けでスタミナを回復し、途中でアイテムを拾って、

「うおおおおお!」

 ラストの直線ではひたすらムチを連打。

 ……非常に疲れるゲームだ。


「よし、アイテムゲット! って減速した!?」


「毒ニンジンだもの」

「なんで毒が落ちてるんだよ!」

「そういうゲームだからよ。ちなみにモグラでも減速するから注意してね。このゲーム、どれだけリードしててもマイナスアイテム取ったらまず勝てないから」

「マジか」

 たちの悪いことに走るスピードが速いので、アイテムを確認するヒマがほとんどない。


 マイナスアイテムを素早く判別して避けないと即死。


 さんざん連打しまくった後にマイナスアイテムを拾ってしまったときの絶望たるや。

 競馬場によってはアイテムが2回登場するので、即死する可能性も2倍になった。

 ……とことん連打の苦手なプレイヤーに優しくない仕様である。


「くそ、進路妨害するしかないのか!」


「甘い!」

「な!?」

 後ろから体当たりされ、態勢の崩れたところを抜かれた。

「ふっふっふ、これが『馬群割り』。審議対象技よ!」

「ならこっちも同じ技を使うまでだ!」

「なんの!」


ピシッ


「げ!?」

 今度はムチで顔を打たれた。

「もう審議対象とかいうレベルじゃないだろ!」


「反則認定されても賞金が減額されるだけだからセーフ」


「アウトだよ!」


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