聖地巡礼セット【あぶり餅と抹茶カプチーノ】
参考ゲーム
桃太郎電鉄
鉄道にっぽん! 路線たび 叡山電車編
イナズマイレブン
幕末ロック
遥かなる時空の中で
戦国無双
戦国BASARA
龍が如く見参・維新
仁王1・2
新鬼武者
風雲新選組
薄桜鬼
イケメン幕末
ライズオブローニン
ウマ娘プリティーダービー
新桃太郎伝説
鬼神降臨伝ONI
「まずは『金鉄』ね」
修学旅行2日目、京都の自由行動。
ゲーマーらしく金太郎電鉄の攻略本やガイドブック(ゲーム内に出てくるご当地グルメの案内書)を取り出し、さっそく京都の物件を確認する。
「食い物なら湯豆腐、あぶり餅、生八つ橋あたりか。老舗コーヒー店も要チェックだ」
「京都なのにコーヒー?」
「お茶といえば静岡か京都だからな。まずい店は生き残れないし、文化人のサロンでもあったから京都の喫茶店は有名なんだぞ」
「へー」
とりあえずあぶり餅と抹茶カプチーノで一服することにする。
あぶり餅は餅に竹串を刺してきな粉をまぶし、白みそを塗ったもの。
あぶっているので香ばしく、きな粉と白みその組み合わせも斬新だ。
「え、何本買ったの」
「一人前15本だぞ」
「ええっ!?」
小ぶりなので女性でも普通に食べきれる。
抹茶カプチーノは宇治の抹茶で富士山のラテアートが施されていた。
……うちの店よりよっぽどうまい。
京都おそるべし。
「車窓の風景もかなり忠実に再現されてるわね」
「わりと最近のゲームだしな」
『鉄道ジャパン! 路線旅・叡山電車編』を電車内でプレイしながら京都をめぐる。
リアルとゲームを重ね合わせながら景色を眺めるのも間違い探しのようで面白い。
「京都御所はゲームイベントだと禁門の変、二条城は新選組の将軍警護や大政奉還あたりか」
「二条城といえば『天誅ロック』のライブバトルと、『イカヅチイレブン』のサッカー対決でしょ」
「なんで二条城でサッカーするんだよ」
「大政奉還するために決まってるじゃない」
こいつは何を言ってるんだ。
……だが調べてみると、本当に幕末にタイムスリップしてサッカー対決をしている。
これが噂の超次元サッカーか。
「天誅ロックは幕末にロックが反体制ソングとして伝来する音ゲー? 『ジャズ殿様』みたいだな」
「え、ジャズ時代劇なんてあるの?」
「あるぞ。これも幕末にジャズが伝来した話だな」
「じゃあ幕末にロックが伝来しててもおかしくないのね」
「おかしいに決まってるだろ!」
天誅ロックの主人公は坂本龍馬で、高杉晋作や桂小五郎とバンドを組み、新選組とライブバトルをするらしい。
……まるで意味のわからないところが最高にロックだ。
「ゲートはどこだ?」
「異世界転移するときは古井戸に吸い込まれてたでしょ」
「あー、そうだったな」
乙女ゲーの先駆け的作品『彼方なる時空の中で』シリーズは女子高生が異世界の京都に飛ばされるゲーム。
転移で重要になる場所が二条城の隣にある『神泉苑』だ。
龍神の召喚やラストバトル、デートスポットとしてもたびたびお世話になる。
特に3では雨乞いの舞をした主人公を帝が見初めるのだが、源義経が『この者は私の婚約者なのでご容赦ください』と嘘を吐いてその場を切り抜けるという、いかにも乙女ゲームなイベントがある。
東寺と西寺の雨乞い対決でも有名な場所だ。
西寺の守敏は世界中の竜神(雨を降らせる神)を甕に閉じ込めるものの、東寺の空海は世界で唯一残っていた『善女竜王』を呼び出して雨を降らせたという。
ゲームでもリアルでもエピソードに事欠かないザ・聖地だ。
作中では東寺も名所として登場するが、西寺は寂れてしまって影も形もない。
「敵は本能寺にあり!」
「信長が主人公の場合もあるけどな」
「戦・国士無双なら濃姫と森蘭丸が主人公の場合は信長側で、長曾我部元親と小少将が主人公の場合は明智側で本能寺に乱入するのよね」
「……濃姫と蘭丸はわかるとして元親と側室の小少将? たしかに光秀が謀反を起こした理由の一つが四国関連とはいわれてるが」
「戦国KABUKIでは前田慶次が乱入するし」
「格ゲーみたいなノリで乱入するな!」
松永久秀が黒幕の場合もあれば、秀吉が黒幕の場合もある。
光秀が謀反を起こした理由が不明なだけに、バリエーションが多い。
光秀が主人公だと本能寺の変の信長戦と、山崎の戦いの秀吉戦がクライマックスになる。
山崎の戦いといえば天王山だが、京都にあるとはいえさすがに山へ行くのは厳しい。
「……幕末はゲームも名所も多すぎる」
「わ、新選組の拠点だけで4つ!?」
壬生寺、前川邸、八木邸、そして拠点ではないが新徳寺(浪士組の指導者・清川八郎が尊王攘夷をやると演説した場所。芹沢・近藤らは清川と対立して脱退し、壬生浪士組を結成、のちに新選組となる)は中京区に集中しており、まとめて巡礼しやすい。
新選組が拡大すると隊員を収納しきれなくなったので、少し離れた場所にある西本願寺へ移転した。
前川邸は山南敬助が切腹したり、乙女ゲー『薄桜紀』だと悪鬼を生み出す実験施設になっている。
八木邸は初代局長の芹沢鴨が暗殺されることでお馴染みの屋敷だ。
暗殺前に芹沢が遊んでいた島原の角屋も建物が現存しており、薄桜紀だと主人公が芸者に化けて潜入している。
坂本龍馬が伏見奉行に襲撃された寺田屋は『虎が如く維新』の拠点であり、『幕末風雲伝』では2つの寺田屋事件のイベントがある(薩摩藩から脱藩した志士たちのいる寺田屋を、薩摩藩士が襲撃したもう一つの寺田屋事件)。
長らくパチンコ店になっていた池田屋跡も、現在は池田屋を再現した居酒屋になっていた。
「メインは坂本龍馬が暗殺された夜に食べようとしてたシャモ鍋にしよう。それとお茶漬けに土方の好物のたくあんを乗せるか」
「あ、まぐろのげんこつおにぎりもある」
「……これは近藤勇ネタなのか?」
タイガードラマでも有名なシーンだが、局長の近藤勇は『口の中に自分のげんこつが入った』という逸話がある。
これは尊敬する戦国武将・加藤清正のマネだ。
「はい、あーん」
「入るか!」
幕末ファンには嬉しいメニューがそろっており、幕末関連作品とのコラボもあるのでオススメだ。
「ちゃんと階段があるのもいいな」
「『イケメン新選組』だと池田屋の階段から落ちた主人公が、池田屋事件当日にタイムスリップするところから始まるのよ」
「……突っ込みどころが多すぎる」
斬られた志士が豪快に転がり落ちる『階段落ち』は池田屋事件を語る上でも欠かせない名シーンなのだ。
名作映画『蒲田マーチ』に登場する全35段・高さ8メートルの大階段は圧巻である。
「階段落ちたい」
「おいやめろ」
池田屋の階段といい、清水の舞台といい、危険なスポットほどオタク心を駆り立てられるのが困る。
「清水寺はライズオブローシで薩長同盟のために西郷隆盛と戦った場所ね」
「ある程度ダメージ与えると愛犬が乱入してきてビビるんだよな」
上野の西郷隆盛像が連れているあの犬がツンである。
とにかくカバーしている範囲の広いゲームで、幕末ファンが知っている人間はだいたい出てくると思っていい。
このゲームのスタッフは『幕末オールスターを総登場させて、全員と戦えるようにしたら歴史オタクは喜ぶんでしょ?』と考えている節がある。
その通りだ。
さすがに犬はやりすぎだが。
「『虎が如く維新』だと中岡慎太郎と共闘して土佐勤皇党と戦ったり、シリーズ恒例の裏ボスとも戦ってたわね」
「虎が如くなら『見参』の武蔵と宍戸梅軒の決闘も印象的だった」
「そうそう、梅軒が清水の舞台から突き落されたところで爆笑しちゃった」
「笑うところじゃねえ!」
梅軒が序盤の吊り橋で落ちたので、まさか清水の舞台からも落ちるんじゃないだろうなとは思っていたが、本当に落とすやつがあるか。
プレイヤーの期待に応える素晴らしいシナリオともいえる。
「『水落ちは生存フラグ』ってネタにされるぐらいだから安心だけど、さすがに清水の舞台はやりすぎ」
「いや、生存率は85%らしいぞ」
「85!?」
「ちなみに記録に残っているだけでも200人以上飛び降りてる」
「……清水の舞台から飛び降りる覚悟があれば本当に何とかなるんだ」
当時の人間からすると、少し危険なバンジージャンプ感覚だったのかもしれない。
「武蔵関連だと蓮台野と三十三間堂もあるわね」
「映画でも一番面白いところだな」
ゲームでは蓮台野で吉岡清十郎、三十三間堂で祇園藤次と戦っている。
小説や映画だと三十三間堂で戦うのは吉岡清十郎の弟・伝七郎だ。
映画版は全5部作。
吉川一門VS宮本武蔵の73対1の決戦を描いたシリーズ4作目『一乗寺の決闘』が一番人気だろう。
ただ映画も時代劇も衰退期だったので、5作目は予算を減らされてしまったのが痛い。
巌流島はもっと予算をかけて撮ってほしかった。
「伏見城って意外とイベント多くない? 『羅王』では伏見城の戦いで鳥居元忠を救出しに雑賀孫市と戦うし、無双でも伏見城の戦いと七将襲撃事件、『新鬼夜叉』ではラストバトルの舞台だし」
「たしかに知名度の割には事件多いな」
伏見城の戦いは関ヶ原の戦いの前哨戦である。
鳥居元忠がわずか1800の軍勢で、4万を超える西軍相手に13日も持ちこたえたことが、関ヶ原の戦いの勝敗を分ける一因になった。
七将襲撃事件の七将とは福島正則や加藤清正らのことで、三成とともに秀吉に仕えていた武将である。
「昔馴染みに襲撃されるのが切ないのよね」
「しかも勝利条件が『徳川屋敷への到達』だからな。どっちが敵なのかわからない」
最前線で戦う武断派(福島・加藤)と内政などの文治派(三成)は対立することが多く、秀吉と前田利家が死んだことで仲裁役がいなくなり、ついには三成襲撃事件にまで発展してしまう。
かつての戦友たちに襲われ、三成の逃げこんだ先が豊臣家最大の敵である家康の伏見屋敷(伏見城下に諸大名の屋敷があった)。
家康の取りなしによって事なきを得たが、三成の信用は地に落ちた。
そして間もなく家康との直接対決である関ヶ原の戦いが始まる。
敵の総大将こそ家康だが、『なぜこうなる前に腹を割って話し合うことができなかったんだ』と後悔している福島・加藤と戦うのが一番つらい。
なお伏見城は秀吉が最後を迎えた城であり、謹慎中の加藤清正が慶長伏見地震で身動きの取れない秀吉を助け出して謹慎を解かれる『地震加藤』というエピソード(落語や歌舞伎の演目)もある。
一般的な知名度は低いものの、歴史オタクやゲーマーにとってはかなり重要な場所といえるだろう。
「桜を見たら俺を思い出してくれないか」
「名シーンだな。……桜さえ咲いてれば」
醍醐寺は晩年の秀吉が催した『醍醐の花見』で有名だ。
全国各地から700本の桜を集めて植樹したらしい。
『羅王2』や『新鬼夜叉』では醍醐の花見で戦うことになる。
「果心居士は許さん」
「死にゲーではよくあることでしょ」
羅王2では秀吉を倒して安心していると、果心居士(信長や秀吉に幻術を披露した伝説がある謎の男)が現れて連戦になり、回復アイテムを使い切って死ぬ。
一定のダメージを与えると分身して四方から襲い掛かってくるのもひどい。
苦労して果心居士を倒しても、遺体に近づくと復活して3戦目に突入する地獄。
プレイヤーにまで体力ゲージ幻術を仕掛けてくる恐ろしいボスだ。
「ディープバンドに串カツとどて煮」
「じゃあ私はアイアムバローズ」
京都競馬場では菊花賞、春の天皇賞、秋華賞、エリザベス女王杯、マイルチャンピオンシップが開催されている。
馬券は買えないので、負けたほうが奢る単勝勝負だ。
先生いわく『競馬場の入場料は100~200円(15歳未満は無料)、野球などのスポーツ観戦では安い席でも2000円ぐらいなので、800円でご飯を食べて1000円賭けるのがオススメです』らしい。
『負けてもチケット代だから痛くない』という考え方だ。
ギャンブルという性質上、ゲン担ぎにカツ(串カツ・カツ丼・カツカレー)を売っている店が多い。
どて煮は競馬場ならほぼどこでも売られている定番メニューで、牛筋などを味噌で煮込んだもの。
どちらも安いので800円で買えてしまう。
「お、ライスだ」
「ささやき、いのり、えいしょう、ねんじろ……!」
『ウマ女ビューティダービー』の人気キャラ、ライスフォール碑があったので必勝祈願しておく。
G1・3勝すべてが京都競馬場の長距離レースで、『淀(京都競馬場)を愛した孤高のステイヤー』と呼ばれる。
アニメでライスが活躍した直後にゲームのサービスが始まったため、最初の育成でライスを選んだプレイヤーは多い。
「……春天は地獄だった」
「スタミナが足りませんね」
「たまに正しいアドバイスするのやめろ」
ライスは初期キャラの中でもトップクラスに難易度が高い。
特に育成目標である『春の天皇賞1着』が鬼門だ。
長距離はスタミナが足りないと絶対に勝てない。
スタミナが600以下の場合は体力回復スキルが必須だ。
ちなみに『スタミナが足りませんね』はレースに負けたときに表示されるナビゲーターからのコメントなのだが、パラメータをMAXにしていてもそういう風にアドバイスされるので、まったく参考にならない。
むしろこのアドバイスを参考にすると負けるまである。
恐ろしい罠だ。
「どて煮うま」
「……カツはレース前に食うべきだったな」
必勝祈願もむなしく、応援していた馬は来なかった。
仕方ないので自腹で串カツとどて煮を買う。
まあ1000円すらずにすんだので、馬券を買えなくてよかったのかもしれない。
「木刀買おっと」
「……修学旅行で木刀買うやつ初めて見たぞ」
「お約束でしょ」
なぜ人は修学旅行で木刀を買いたがるのか。
永遠の謎だ。
京都なのになぜか木刀には『洞爺湖』『風林火山』と彫られている。
「最強の武器に進化しそう」
「たまにあるよな、最弱の武器が最強の武器になるイベント」
魔剣伝説の『錆びた聖剣』や人外魔境2の『形見の剣』のように、なにか由来のある初期装備が最強クラスの武器に進化するとテンションが上がる。
「でも魔神降臨伝ONIの『ぼくとう』みたいに、何の変哲もない武器が最強の武器になるパターンは困るんだよな。他のゲームでも進化するんじゃないかと思って、最初の装備を捨てにくくなる」
「それをすてるなんてとんでもない!」
「お、おう」
……おそらくこの木刀も最強装備に進化することはなく、ゲームと同じように倉庫で眠り続けることだろう。




