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【コミカライズ掲載中】電気代払えませんが非電源(アナログ)ゲームカフェなので問題ありません  作者: 東方不敗@ボードゲーム発売中
本編

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トロフィーセット【パンケーキと野菜ジュース】

参考ゲーム

ニーア・オートマタ

ロックマン

スターオーシャン4

ストリートファイター5

ロストプラネット2

魔界戦記ディスガイア

リメイク版テイルズオブデスティニー

ペルソナ3


「………………………………」


 ひたすらノベルゲームの文章をスキップし続けている女子高生が一人。

 完全に目が死んでいる。

「……なにやってんだ?」

「トロコン」

「実績解除か」

 最近のゲームには『トロフィー』、あるいは『実績』と呼ばれるやりこみ要素が実装されている。

 トロコンとは『トロフィーコンプリート』、つまりトロフィーをすべて獲得することだ。

 トロフィーを獲得すると、


ピコン


『トロフィーを獲得しました』

『すべてのバッドエンディングを見た』


 と、このように表示される。

「やっぱりノベル系のトロコンは楽ね」

「トロコンしたら何か意味あるのか?」

「え、何もないけど?」

「……じゃあ何でわざわざこんなことしてんだよ」


「そこにトロフィーがあるからさ」


 聞いた俺が馬鹿だった。

「トロフィーの取得状況は非公開にしない限り他のプレイヤーも見ることができるんだから、たくさん取っておいたほうがかっこいいでしょ」

「……まあ、ゲーマーならトロコンしてて当たり前とは思うがな」

 こんな方法で世の中のゲーマーがトロフィーを稼いでいたのかと思うと泣けてくる。


ピコン


「どのゲームでもトロフィー獲得した時の音が同じなのは味気ないな」

「シリアスなストーリーが展開してる時もピコンって鳴るから、たまに邪魔なのよね」

 昔ならプレイヤーが自発的に行っていたやりこみプレイを、製作者サイドに『これをやりこめ』と押し付けられていると感じるプレイヤーもいるらしい。

 一応、設定で表示されないようにすることはできるものの、あるのとないのとではやはりあったほうがいいので結局そのままだ。


『すべてのエンディングを見た レア32.8%』


 全プレイヤーのトロフィー獲得率も見れるのが面白い。

「クリア率は80%しかないんだな」

「これでも高いほうよ。50%以下も珍しくないんだから」

「50以下!?」


「逆に『買ったゲームを全部クリアするプレイヤーのほうが珍しい』のよ」


「マジか」

 積みゲーが増えるわけだ。

 『オープニングを見た』『チュートリアルをクリアした』『1章をクリアした』など、チャプターごとに管理しているゲームも少なくない。

 なので『ゲームを起動していながらチュートリアルもクリアせずに辞めているプレイヤー』が数%いる。

 ……なにが気に入らなくてやめたのだろう?

 見切りをつけるのが速すぎる。

 武器やスキルの種類が豊富なゲームなら『〇〇の武器を限界まで鍛えた』などのトロフィーから、プレイスタイルの傾向がわかった。

 マルチエンディングならプレイヤーがどの選択肢を選んだのか(どういう結末を好んでいるのか)もわかる。

 普通のエンディングよりも特定の条件を満たさないと見れないエンディングのパーセンテージのほうが高いことからして、攻略サイトを見ながらプレイしているのだろう。


 トロフィーの取得率から様々なものが見えてくるのが楽しい。


 高難易度の死にゲーにもなると最初のボスで50%以上が脱落していた。

 ただ最初の難関を潜り抜けると楽になるのか、クリア率自体は20~30%前後、トロコンも10%近くあったりするのが興味深い。

「トロフィーを集めたくなる理由もわかるな」

「でしょ? 新作ゲームはダウンロード版にして、トロフィーを確認しながらプレイするのもオススメね」

「? なんでダウンロード版なんだ?」


「パッケージだとお店で買わないといけないし、通販にしても配送時間の関係もあるからプレイできるのは朝8時から10時ぐらいでしょ。その点ダウンロード版は日付が変わった瞬間にプレイできるし、どのトロフィーも取得率低いからレアなトロフィーも取り放題!」


「なるほど。発売当初は『普通のトロフィーでもレアになる』からお得なんだな」

「そういうこと」

 もちろん時間が経てば取得率は上がっていくものの、リアルタイムだからこそ得られる感覚だ。

 自分が一般的なプレイヤーに比べてどこまで進んでるのかもわかる。


 人よりも早く進める、人よりも早くクリアする。


 それだけで気分がいい。

 ほとんどのプレイヤーが取っているのになぜか自分が取れていないトロフィーなどは気になりそうだ。

 取れそうなものがあるとつい取ってしまうだろう。

 難易度ハード以上のトロフィーには手を出しにくいものの、『ハード以上でボスを倒した』系ならやりたくなる(ステージをハード以上でクリアするのは辛いが、ボスだけなら楽しめる)。

 ゲームをクリアするだけでトロフィーを8割以上取れたり、トロフィーの数が少ないゲームならトロコンのモチベーションも上がる。

 逆にトロフィーが多すぎると集める気になれない。

 これはプレイヤーしだいなので製作者も迷うところだ。


「『アニー・オートマタ』はクリアデータがあればトロフィー買えるから楽ね」


「……こんな方法あったのか」

 ゲーム内通貨なので、金稼ぎさえすれば誰でもトロコンできる。

 トロフィーを稼ぐだけなら、基本プレイ無料のゲームをプレイしてもいい。

 課金前提なので無課金だとトロコンは難しいだろうが、地道にプレイしていればいつかは取れる。


 ……アニー・オートマタの例からすると、たぶん課金すればトロフィーを取れるゲームもあるはずだ。


「逆にトロコンが難しいのはどういうゲームなんだ?」

「そうね。『ギガマン10』みたいにノーコン、ノーミス、ノーダメとか」

 ノーコンはノーコンティニュー、ノーミスは一回も死なないことらしい。

「あと嫌われがちなのはオンライン必須のやつね。『ストライキファイター』は『オンライン対戦で100勝』とか『オンライン対戦で10連勝』しないといけないし、『ロストプラント2』の『世界ランキング1位』は伝説よ」

「……頭おかしいんじゃないのか」

「トロフィーのシステムが始まったばっかりの頃だから加減が分からなかったんでしょうね。古いゲームになるとオンラインサービスが終了してるからトロコンそのものが不可能だし」

 嫌われる理由が嫌というほどよくわかる。

「単純作業系も地獄よ。有名なのだと『スター・シー4』のアーツコレクションかしら。『100コンボ』とか『闘技場で200連勝』とか『敵を30000体撃破』みたいに戦闘中の行動をコレクションするシステムなんだけど、それがキャラクターごとに100項目あるからトロコンまで500時間ぐらいかかるんだって」

「500!?」

「『天界戦記ディスウラヌス』の『レベル99999999』、『所持金1000億』、『総ダメージ100兆』なんてのもあるわね」

「インフレしすぎだろ!」


「放置プレイすればいいじゃない」


「放置プレイ?」

「オートプレイに設定して放置」

「オート操作が実装されてないゲームはどうするんだ?」

「古典的な方法だとコントローラーのアナログスティックを輪ゴムで固定したり、テープを貼ってボタンを押しっぱなしにするのが有名ね。こうしておけばキャラがフィールドを歩き続けて、自動的にコマンドも入力されるでしょ」

「……そこまでしてトロコンしたいのか」


「これ、もともとはオートレベルアップなのよ。放置してるだけでレベルが上がってお金も稼げる裏技」


「あー、レベル上げの裏技をトロコンに使ってるのか」

 目的のためには手段を選ばないのがゲーマーらしい。

「そういえば『テイルズ・オブ・フェイト』もトロコンしてなかったわね。えーと、『総移動距離100000キロ』あたりは放置プレイできそう」

 さっそくスティックをゴムで固定し、ボタンにセロハンテープを貼って放置した。

 トロフィーを獲得するまで暇なので何か食うことにする。


「パンケーキと野菜ジュースね」


「あいよ」

 どちらもゲーム中に登場するものだ。

 特にパンケーキは料理対決イベントのものなので印象深い。

 『世界中の珍味を集めて包み込んだ』らしく、切ると変な汁が出る。


 作ったキャラいわく『パンケーキなしでもうまい』。


 ……もちろんパンケーキ対決のコンセプトに反しているので失格になった。

 イベント後は小麦、卵、ミルク、ブタウサギ肉(ブタとウサギが融合したような動物の肉)で作れる。

 パンケーキにキャラの顔を描くのが特徴的だ。

「この絵ってどうやって描くの?」


「まずは絞り袋にパンケーキの生地を入れて、フライパンに絵を描く。フライパンはまだ温めるなよ」


「はーい」

「描き終わったら焼き色を付けて、残りの生地を流し込んでパンケーキを焼けば出来上がりだ」

「お肉いれなきゃ」

 ウサギ肉はないのでブタのひき肉を入れてパンケーキを焼く。

 こういうベーコンや肉を中に入れるガッツリ系のパンケーキもたまには悪くない。

 パンケーキの甘さと肉のしょっぱさのバランスが重要だ。


 野菜ジュースのレシピはレタス、トマト、リンゴ。


 『あおじる』のレシピもあり、こちらはレタス、リンゴ、レモンだ。

 一応、現実でも作ることはできる。

「……まずい」

 ジュースとしておいしく調整するには慣れが必要だが。


『貴様ら、こんな所で長々と何をしている? 鼠の様に逃げ仰せるか、この場で死ぬか……どちらか選べぃ!』


「なんだ?」

 パンケーキを切っていると、不意にドスの利いた声が響く。

 オート操作中のテイルズで何やらイベントが発生していた。

「え、うそ。もしかしてこれ『永久パターン防止キャラ』!?」

 慌ててゴムやテープを外して迎え撃とうとするものの、


『魔法なんざ使ってんじゃねえ!』


「ぎゃー!?」

 あっさり皆殺しにされてしまう。

 おそらく絶対に勝てないように設定されているのだろう。

「永久パターン防止キャラって、シューティングでわざとボスを倒さずにスコア稼ぎを続けてると出てくるやつだろ。なんでRPGにそんなキャラが出てくるんだよ」


「……開発者にとっては永久パターンのスコア稼ぎも放置プレイのレベル上げも同じって認識なんでしょうね。似たようなパターンだと改造チートしたら『チートキャラ絶対殺すマン』が出てくるし」


「不正や裏技を使うのは許さないってことか」

「それが逆効果になる場合もあるけどね」

「逆効果?」


「『マスカレイド3』ではチートしたら『あなたがそんなことをする人だと思いませんでした』ってボイス付きで怒られるんだけど、この隠しイベントを見るためにチートするプレイヤーが増えたのよ」


 ……ゲーマーの業は深い。


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