2Dゲームセット【プロセスチーズとインスタントコーヒー】
全面改稿中です。
何話か投稿しますが、基本的に長い話を2~3話に分割して再構成したものなので、真新しいネタは特にありません。
参考ゲーム
スーパーマリオ3Dランド
メタルギア
「やっぱりゲームは2Dのほうがいいな」
「えー、3Dのほうが色々やれて面白いでしょ」
「色々やれすぎるんだよ。シンプルなほうがプレイしやすい。それに3Dアクションは欠点が多すぎる」
「たとえば?」
「そうだな……」
適当に思い浮かぶことだけでもたくさんあって、どれから挙げればいいのかわからないレベルだ。
個人的に嫌なものだと、
2D時代よりボタンが多くなって操作が複雑。
走れない、もしくはダッシュや移動速度が遅い。
ジャンプできない、あるいはジャンプの挙動がおかしい。
真っ直ぐ歩けない(細い足場だと高確率で転落する)。
カメラワークが悪い。
酔う。
マップが見にくい、どこに行けばいいのかわからない(迷いやすい)。
ロードが長い。
イベントシーンが長い。
課金要素。
「思いついただけでもこれだけある」
「典型的なおっさんゲーマーの意見ね」
「うるさい」
『昔のゲームのほうがおもしろかった』と語るゲーマーの大半は、だいたいこれらが原因でゲームから遠ざかっている。
最近のゲームならこれらの欠点はほぼ解消されているのであまり問題はないのだが……。
その分、どれも似たような操作性で没個性化している感じだ(最適化されていると考えたら必ずしも悪いことではない)。
そして最近の3Dゲームに慣れてしまうと、古い3Dゲームをプレイするのがつらい。
同じシリーズのゲームでも5年前、10年前になると操作性がぜんぜん違う。
だから逆に2Dぐらい昔にさかのぼったほうが面白く感じるのだ。
「2Dと3Dのいいとこどりをしたゲームがあればいいんだけどな」
「なら『超万里夫3Dランド』じゃない? 2Dっぽい3Dアクションよ」
「2Dっぽい3D?」
「3D万里夫はスターとかコインを集めるのが目的だけど、これは2D時代と同じでゴールを目指すシステムなの」
「お、わかりやすく2D要素を取り入れた3Dアクションだな」
国民的ゲームである万里夫でさえ、3Dは苦手だからあまりプレイしないという人が多い。
3Dランドは2Dのようにステージはだいたい一本道。
横スクロールのように障害物を避けながらひたすら横へ移動してゴールを目指す。
だいたい横スクロールだと進行方向の逆から(右から左へ)敵が来る。
だがこれは3Dなので画面の奥からも敵が来た。
2D
◇→ ←○
※進行方向から敵が来る
2D的3D
○
↓
◇→
※進行方向だけでなく、画面奥からも敵が来る
2Dでも3Dでも、ジャンプで敵や障害物を避わすことは変わらない。
横へ移動することで2Dっぽさを演出しつつ、3D特有の奥行きを利用した障害もある。
それが面白い。
ボスであるパック大王の倒し方も2D時代と同じだ。
パック大王が吐く火の玉を避わしつつ橋を渡り、後ろにあるスイッチを踏むと橋が崩れて大王がマグマに落ちる。
3Dだと橋が長い。
道は一本道だが曲がりくねっていたり、奥へ進んだりする。
2D版 パック大王ステージ
◇ ○(パック大王)
橋橋橋橋橋橋□←スイッチ
※パック大王はジャンプしながら炎を吐いてくるので、炎とパック大王を避わしつつ後ろのスイッチを踏む
3D版 パック大王ステージ
橋橋橋□←スイッチ
橋
橋橋橋
橋
橋橋橋
※パック大王は画面奥から炎を吐いてくる
橋橋橋橋橋橋橋
橋◇橋橋○橋橋□←スイッチ
橋橋橋橋橋橋橋
※3Dでは橋の上を前後左右に動き回れるので、パック大王の横を通り抜けてスイッチを踏むこともできる
3Dでも2Dらしさを失っていない良質なステージ構成だ。
「これでダッシュが速ければ完璧なんだけど……」
「2D並みの速度で走り回れたらたぶん死ぬぞ」
「そういえば3D万里夫にパンチとキックがあるのも、3Dだと敵を踏みにくいからだったっけ」
3Dでも敵を踏んだら倒せる。
ただ2Dと違って(自分も敵も)前後左右に動くので踏みにくい。
このゲームの死因の1位は落下死だ。
スピードが速くなったらなおさら事故が増えるだろう。
多彩なアクションも欠点をカバーするためのもの。
クリエイターの試行錯誤がうかがえる。
「他に2Dも3Dもあるシリーズっていうと『ギガマン』『ブリッツ・ザ・ヘッジホッグ』『リンクの伝説』『テイルズ』『Yith』あたりか」
「やっぱり3Dのほうがいいじゃない」
「でもお前、テイルズは2Dのほうが好きだろ」
「それはそれ、これはこれ」
……結局、ゲーマーは面白ければ何でもいいらしい。
「あとは『オタルギア』かしら」
「ん、そういえばソリッドじゃないオタルギアもあったな」
オタルギア・ソリッドといえばステルスゲームを定着させた3Dアクションだが、実は原点は2Dである。
もともとミリタリー系のアクションゲームの製作を企画していたのだが、当時のゲーム機の性能が低くて激しいアクションは作れなかった。
そこで監督が『アクションゲームを作れないのなら、アクションを避けるゲームを作ればいいじゃない』と逆転の発想をし、ステルスゲームというジャンルが誕生した。
……ちなみに移植版は監督が苦言を呈するレベルだったのでヒットはしなかったらしい。
だがソリッド3の特典にファン待望の完全移植版が収録されていた。
これはやらねばなるまい。
「お、ちゃんとレーダーがある」
「ソリッドにあるシステムはだいたい搭載されてるわよ」
「マジか」
ソリッドと同じくレーダーに敵兵が点で表示されていた。
■■■
■□■ 自分のいるマップを中心に、周囲八方向のマップがレーダーで表示されている
■■■
隣のマップの生体反応を見て、敵兵に死角ができた瞬間にマップを移動し、敵地へ潜入できる。
それだけではない。
戦闘ヘリとのバトルでは、9つのマップを縦横無尽に移動するヘリをスティンガーミサイルで撃ち落とす。
スティンガーを構えると主人公の『蛇』は移動できなくなるものの、レーダー上に表示される照準を動かし、ヘリの移動進路を予想してミサイルを発射する。
■■・
■□+ +(照準)を移動してレーダーに表示されている・(ヘリ)を撃つ
■■■
『スプリンターマン』というボスは、移動速度が速すぎて蛇の足では絶対に追いつけない。
ボスのいるマップへ移動しても、それ以上の速度で逃げるので目視することすらできない(戦闘中にボスの姿を肉眼でとらえることはできない)。
なのでレーダーでボスの行動パターンを予想し、進路上に地雷を設置する。
こうすれば画面外で爆殺できる。
レトロゲームなのに『自分のいるマップの外にいる敵を倒せる』のが新鮮だ。
スナイパーライフルで隣のマップの敵を倒せたらもっと面白かったのだが、さすがにすべての敵にレーダー攻撃を採用するのは難しかったようだ。
レーダー以外にもソリッドで登場した要素はほとんどある。
『こちら蛇。隔離施設に潜入した。だが赤外線が張り巡らされていて、うかつに先へ進めない』
『タバコを吸うんだ、蛇。煙で蜘蛛の巣をあぶりだせ』
タバコの煙で赤外線を見えるようにする。
匍匐前進で車やテーブルの下に隠れる。
ダンボールをかぶって移動し、監視カメラの目をごまかす(動かなければどれだけ不自然な場所にダンボールがあっても監視カメラはごかませる。ただし生身の敵はダンボールに不審を抱いて撃ってくる)。
壁を叩いて音で敵を誘い出す。
消音装置のついた銃で音もなく暗殺(つまり音が出る状態で銃を撃つと気づかれる)。
敵を尾行して秘密施設の位置を突き止める。
この時代にステルスゲームとしてのシステムがほぼ完成しているのが驚きだ。
敵兵の行動も凝っている。
警備が厳重な場所でも、一定時間が経過すれば見張りを交代するために持ち場から離れる。
何も起こらないと退屈で眠りだす。
敵に見つかった場合も、ただ銃を撃ってくるだけではない。
電気を消したり(暗視ゴーグルがないと何も見えなくなって敵にボコられる)、毒ガスを散布したり(ガスマスクがないと死ぬ。あっても酸素が切れたら死ぬ)、床に電流を流して攻撃してくる(スイッチを切るか、小型ミサイルで遠距離から電源を破壊するしかない)。
そのくせ目の前で仲間がやられても無反応だ(アラートにならない)。
それに殴ると一瞬意識が飛ぶようで、目の前を通過しても気づかれない。
音で敵を誘い出す時もパンチで壁を殴るので、弾もサプレッサーもない序盤ではパンチが重宝する。
「ザルだな」
「そうじゃないと潜入できないもの」
慣れればパンチで敵をかく乱し、泳ぐように警戒網を突破できるだろう。
だが、
『敵だ!』
「げ!?」
ある時を境に、ザル警備が厳重になった。
なぜかマップ移動した瞬間に見つかってしまう。
「おかしいだろ。どう考えても死角だぞ、ここ」
「つまり別の理由があるってこと」
「別の理由?」
少し考えてみたが原因がまったくわからない。
とりあえず、いつ頃からマップ移動した瞬間に見つかるようになったのかを思い返してみる。
たぶん敵の捕虜になったイベントの後からだ。
あれから問答無用で敵に発見されるようになった。
ということは、
「げ!? 所持品の中に発信機がある!?」
「罠にハメられてたわけね」
あまりにさりげなく所持品の中に紛れ込んでいたので気づかなかった。
捕虜になって所持品を没収された時に仕込まれていたらしい。
これで居場所を特定されていたのだ。
慌てて発信機を捨てる。
「これでよし」
移動しても簡単には見つからなくなった。
ヒントがなければもっと死んでいただろう。
このように気づかなければあっという間に死んでしまうトラップが満載だが、遊び心も満載で今プレイしても普通に面白い。
「お、レーションだ」
レトロゲームなのに回復アイテムのレーションは3種類あり、ちゃんと中身の解説もある。
B1ユニット 牛肉、豚肉、ハムエッグ、ツナフィッシュ、チョコレート、クラッカー
B2ユニット 豆とミートボールのトマト煮、豆とフランクフルトのトマト煮、牛肉のポテト煮
B3ユニット スライスハム、鶏と七面鳥肉、スパゲッティ、チーズ、コーヒー
「ただの回復アイテムなら3種類もいらなくないか?」
「どのユニットもイベントで出番があるのよ」
「へえ」
B1のチョコで濃硫酸を中和、B2の豆で伝書バトを捕まえ、B3のチーズで毒ネズミを誘い出す。
レトロゲームとは思えないイベントだ。
特にチョコの苛性ソーダで濃硫酸を中和するというのが、いかにもオタルギア。
「戦闘糧食食べたい」
「あいよ」
レーションといえばアメリカの悪名高いMRE(加工済み個人糧食)。
そのまずさから戦地の飢えた子供すら投げ捨てたとされ、MRE(Meal Rejected by Ethiopian=エチオピア人も嫌がる食べ物)と揶揄されている。
初代MREから改良は重ねられているが、アメリカの飯はまずいというのがおおむねの見解だ。
活動するのに必要な栄養をいかに効率的に摂取するかを追求し、味は二の次になっているからだろう。
まあ、昔のレーションなんてどこの国も同じようなものだが。
「オタルギアに出てくるやつだとB3だな。でもレーションならチーズスプレッドのイメージなんだよな」
「すぷれっど?」
「クラッカーとかパンに塗って食べるやつだよ」
だがB3にはクラッカーもパンもないし、ネズミを誘い出したのならプロセスチーズだろうか?
コーヒーはエチオピアのインスタントにした。
「まずっ!?」
「レーションの再現だからな」
「そんなところまでこだわらなくていいから!」




