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【コミカライズ掲載中】電気代払えませんが非電源(アナログ)ゲームカフェなので問題ありません  作者: 東方不敗@ボードゲーム発売中
本編

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RTSセット【ボルツクとスーテーツァイ】

全面改稿中です。

何話か投稿しますが、基本的に長い話を2~3話に分割して再構成したものなので、真新しいネタは特にありません。


参考ゲーム

シヴィライゼーション

「これが噂の『リンクファンボーイ』ね」


「なんだそれ」

「『シム・シヴィライズ』は文明シミュレーションなんだけど、日本の代表が北条時宗なのよ」

「あー、『リンクの伝説』の紋章デルタフォースと北条氏の家紋が同じデザインだからか」


 まさか北条氏も外人にファンボーイ扱いされるとは思わなかっただろう。


「えーと……。まずは首都かしら」

 『開拓者』というユニットを操作して都市を造る。

 都市の名前はプレイヤーが自由に決められるものの、デフォルトでは『京都』だった。

 瑞穂もそこが気になったのか、首都は鎌倉にした。

「ノブナガ・ビー・アンビシャスみたいなゲームか?」

「その世界史版ね。ノブシャスと違って1から文明作らなきゃいけないんだけど……」

「原始時代からか……。最終的に文明はどこまで発達するんだ?」

「宇宙移民ができるまで」

 長丁場になりそうだ。

「まあ、だいたいは宇宙移民の『科学勝利』になる前に終るみたいだけど」

「科学勝利?」

「勝利条件がいくつかあるのよ」


 説明書によると自分の文明以外を滅ぼす『征服勝利』、世界の人口の半分と土地の3分の2を支配する『制覇勝利』、2050年の時間制限までに一番スコアを稼ぐ『時間勝利』、一定の文化ポイントを溜める『文化勝利』、国連の選挙で勝つ『外交勝利』、そして宇宙移民を成功させる科学勝利があるらしい。


「……多いな」

「それだけ奥が深いんでしょ」

 『民兵』というユニットを作り、周囲を探索する。

 探索しないと周囲になにがあるのかわからないのだ。

 この世界には自分の文明を含めて7つの文明がランダムに配置されている。

 プレイヤーの選択した日本はあくまでモチーフに過ぎず、地球によく似た惑星のどこかに配置された『日本っぽい文明』なのだ。

 現時点では自分の位置も敵の位置もまったくわからない。

「……敵はいないわね」

 近所に文明は存在しなかった。

 当分は安全だろう。


『建築が発明されました』


「発明?」

「科学技術を発明して文明を発達させていくのよ。科学には『技術ツリー』っていうのがあって、特定の技術を発明してないと次の技術は発明できない仕組みなの」

 説明書には横長の技術ツリーが収録されていた。

 建築を発明していれば他の技術と組み合わせて『建設』が発明できるようになり、水道や競技場、要塞などを建設できる。

 さらにレベルを上げると橋梁(橋を架けられる)→鉄道→工業化(輸送船・工場など)のようにツリーが続く。

 簡素化されてはいるが技術の歴史を辿れるので、勉強にならないこともない。

「じゃあ次は『陶器』ね」


 発明する科学技術はプレイヤーが自由に選べるようだ。


 陶器を発明すると食料の保存ができるようになり、穀物庫を作ることができる。

 余剰食糧があれば人口も増えるらしい。

 科学技術は他の文明との交流や戦争で手に入れることもできる

 どのタイミングでなにを発明するか、いかに効率よく技術ツリーを広げていくかが重要になりそうだ。

 とりあえず技術を発明しつつ探索を続け、開拓者ユニットで新しい都市『京都』を造る。

 文明の発達は順調だ。

 ただ、

「……いないわね」

 相手の文明がどこにもいない。

 嫌な予感を抱いて探索を続けると、知りたくもなかった事実が明らかになった。


「なんで島スタートなのよ!」


「ランダムで配置されるんだから仕方ないだろ」

「うう……」

 日本が配置されたのはどこかの島だった。

 これでは相手と戦争どころか交流さえできはしない。

 仕方ないので予定を変更して『アルファベット』を発明し、もう1ランク上の『地図』を発明。

 これでガレー船を作れるようになった。

 なによりも優先してガレー船を造り、東の大陸へと渡る。

「嘘でしょ……」

「……なんとなくそんな気はしてたけどな」

 大陸だと思っていた土地もまた島だった。

 文明の影も形もない無人島である。

 やむなく外洋へ漕ぎ出した。

 すると、


『ガレー船は沈んでしまいました』


「ああー!?」

 まだ航海技術が未熟なので、外洋に出ると(ガレー船ユニットが陸地に接していないと)高確率で沈んでしまうらしい。

 つまりガレー船より航海技術の高い船を発明するまで他の文明と接触することはできないということだ。

「……ポチッとな」

「あ」

 リセットした。

 止める暇もない。

「なんでリセットするんだよ。交流できないデメリットはあるかもしれんが、競争相手がいないメリットもあるだろ」


「私は戦争したいのよ!」


「……ぶっちゃけすぎだ」

 こういうゲームは内政を楽しんでなんぼだと思うのだが、交流も戦争もないのはやはり一般のプレイヤーには辛いらしい。

「世界史的な料理ってなんかある?」

「塩、コショウ、お茶あたりじゃないか? ボストンティーパーティーなんかいいかもな」


「それお茶を海に投げ捨てたやつでしょ。アメリカ独立戦争の発端的な事件」


 海が紅茶で赤く染まったという世界史の教科書にも載っている事件だ。

「今日はお茶に塩を入れてみよう」

「ええ!?」


「バター茶では普通のことだぞ。有名なのはモンゴルのスーテーツァイだな」


「あ、ロンリーなグルメに出てきたやつ」

 味は普通にミルクティーだ。

 そもそもスーテーツァイに入れる岩塩がしょっぱいどころか、ほのかに甘い。


「ダンク!」


 『ボルツク』というドーナツのようなもの(ただし甘くない)をスーテーツァイに浸して食べればなおよし。

 基本的にスーテーツァイは紅茶で作るものではないが、紅茶でもソルトミルクティーは作れる。

 ちなみに今回はアッサムだ。

「戦争の時間だ!」

 気を取り直して最初からプレイする。

 今度は島スタートにならないように、全ての文明が1つの巨大な大陸に配置される『パンゲア』モードにした。

 首都を造ってユニットで探索していると、初めて他の文明と接触。

 インカ文明の王『マンコ・カパック』が会談を求めてきた。


『陶器の技術をよこせ』


「……なにこいつ」

「こっちよりも文明が発達してるんじゃないか? それで強気なんだろ」

「生意気ね」

 態度がむかついたらしく要求を拒否。

 するとマンコは怒って帰ってしまった。

 交渉する余地もない。

「……決めた、最初の獲物はこいつよ」

「ちょっと待て!」


『貴殿の首は門前にさらされるのがお似合いだ!』


 いきなりの宣戦布告。

 初めて接触した文明だというのに、無益な戦争へ突入した。

「う……。なかなか攻め落とせないわね」

「まだ攻撃専用のユニットを作ってないんだから当たり前だろ」

 序盤で開戦するのは得策ではない。

 戦力がそろっていないし、相手の文明もそれほど発達していないので都市を落としても得るものが少ない。

 おまけに都市を維持するための費用がかさむ上に、


『暴動が発生しました』


「ああー!?」

 占領した都市では暴動などが起きやすく、都市を守るためのユニットも置かなければいけない。

「……占領せずに焼けばよかった」

「だな」

 無暗に侵略で都市を増やしていると破綻する。

 序盤は地道に自分の都市を大きくして勢力を広げ、科学技術を発明することに集中するべきだろう。

 無駄な戦いは切り上げて、インカとは早々に和睦わぼくした。

 ただし軍は引き上げない。

 軍事ユニットを相手の領内に置いておくと労働効率が落ちるからだ。

 和睦しておきながらやることがせこい。

「内政の時間よ!」

 穀物倉庫や兵舎、図書館などを次々と建造。

 そうしている内に『文化圏』というのが広まっていった。

 どうやら特定の建物を造ったりすると文化ポイントが溜まるらしい。

 国境は文化圏によって決定され、相手の勢力圏にまで文化圏を伸ばすと、文化圏に飲み込まれた都市は影響を受けてこちらに寝返ったり、自国への不満が溜まって内乱を起こしたりするようだ。


『日本でヒンドゥー教が発明されました』


「宗教を発明?」

「宗教があると国民の幸福度を上げたりできるみたいね」

「へえ」

 国教を同じにすれば他の文明と仲良くなれるし、国教が違えば仲が悪くなることもある。

 同盟国でなくても同じ宗教の国を襲うと不満が溜まるのだとか。

 文化と同じように宗教による侵略もあり、勢力を広げれば相手の都市や文明も改宗させられる。

 宗教の違いによる悪影響を懸念するのなら、国教を定めなければいい。

 なお新しい宗教を発明するとその文明の都市が聖地となり、宗教の中心地となる大神殿を建設すると、同じ宗教を信仰する都市からお布施を徴収できるらしい。

 なかなか面白いシステムだ。


 『宗教を発明する』というのも皮肉でいい。


 やがて瑞穂は量産したユニットを1つのマスに集め始めた。

 1つのマスにユニットが集まることを『スタック』と呼び、スタックはまとめて動かすことができる。

 侵略するならスタックを組むのがセオリーらしい。

 ただしスタックを組んでいると『投石器』や『大砲』のような攻城兵器でまとめて攻撃されてしまうので注意が必要だ。


「貴殿の首は門前にさらされるのがお似合いだー!」


 本日2度目の宣戦布告。

 スタックを組み、攻城兵器で瞬く間に都市を占領した。

「占領した都市はしばらくレジスタンスが暴れてユニットや建物を造れないのが厄介だな」

 しかもその都市の文化ポイントはなくなり、元の文明に戻りたいという不満も溜まってしまう。

「レジスタンスはともかく、他のは大丈夫よ」

「なんでだ?」


「相手の文明を滅ぼせば『元の文明に戻りたい』っていう不満は消えるじゃない」


「……たしかに『不満はなくなる』な」

 物理的な意味で。

 日本はインカの首都クスコを落とし、インカを滅ぼして見事に市民の不満を消しさった。

 ゲームでは有能な指導者だが、現実に存在したら最悪の暴君である。

「あとは世界遺産と偉人ね」

「ある意味ここからが本番か」

 世界遺産は世界で1つの文明しか作れないもので、作るのにかなりのターンを要するものの、完成すれば多大な恩恵を受けられる。

 いかに強力な世界遺産を他の文明に先んじて作るか(あるいは完成した世界遺産を強奪するか)でゲームの流れが決まるといっていい。

「じゃあビラミッドを造るとして……残るは偉人ね」

 偉人は預言者、技術者、科学者、商人、芸術家の5種類。

 世界遺産ほどの力はないものの、生まれた偉人の種類によってさまざまな恩恵を受けられる。

「あ、ダ・ヴィンチが生まれた。文化爆弾の出番よ!」

 さっそく占領したばかりで不満が溜まっている都市にダ・ヴィンチを派遣。


「芸術は爆発だ!」


 するとダ・ヴィンチが歴史に残る傑作を次々と描き、文化ポイントが爆発的に入った。

 幸福度が上がり、文化圏も急速に広がっていく。

 正しく文化爆弾だ。

「……世界遺産も宗教もユニットも、名前とグラフィックが固定だからシュールだな」

「それが魅力なのよ」


 鎌倉でヒンドゥー教が創始され、ピラミッドが建造され、古代戦車チャリオットが走り回り、芸術家ダ・ヴィンチや預言者モーセが生まれる。


 なんというカオスな世界観。

「んー、なんか物足りないわね。……あ、MODあるんだ!」

「MOD?」

「ユーザーが独自に作った追加ファイルみたいなもんね。公式MODもあるけど。MODを導入したら操作が快適になったり、ユーザーが作ったシナリオで遊べたりするわけ」

「へえ」

「あ、このキャラ可愛い。これも、これも……」

 さまざまなMODをダウンロードしてデータを改造していく。

 嫌な予感しかしない。

「できたー!」

 予感は当たった。

 舞台は現代だろうか。

 世界はアニメチックなキャラで溢れていた。

 ……もはやシム・シヴィライズの硬派な雰囲気は何も残っていない。

「主人公も時宗じゃなくて私に似てるこの子にしよ。国の名前も変えた方がいいわね。なにがいいと思う?」


「『豊葦原千五百秋瑞穂国とよあしはらのちいおあきのみずほのくに』でいいんじゃないか」


「なにそれ」

「由緒正しい日本の別称だ」

「略して瑞穂の国ね」

「……略すなよ」

 こうして国名は瑞穂の国に、首都は秋葉原になった。

 そして、

『瑞穂の国で新たな宗教が発明されました』

「あ、MODだとこれも自由に名前つけられるんだ」

「おい、まさか……」


「ふふ、名前はもちろん瑞穂教よ。さあ、私を崇め奉りなさい!」


 どんどんヤバい国になっていく。

 世界遺産も国ごとに固有の名前とグラフィックが与えられ、奈良の大仏、東京タワー、都庁(ロボットに変形できる)、ビッグなサイト、ファミリーなコンピュータなどが建造可能になった。

 固有ユニットも侍や忍者、巫女、ヤクザなど充実しており、偉人も漫画家やハイパーメディアクリエイターなど粒がそろっている。

「芸術は爆発だ!」

 文化爆弾を落とし、文化ソフトパワーでアメリカの領地を切り取ることに成功。


 大都市ハリウッドが日本家屋に改築され、名前も映画村に変えられてしまった。


「ふふ、これでオタク文化圏が広がったわね!」

「……なんて恐ろしい世界だ」

 清王朝を築いた満州族が中国の文化力に呑まれ、支配者でありながら中国化シニサイゼーションしてしまった感じだろうか。

 以後も鷲宮、光が丘、尾道、大洗と文化ポイントで文化圏を広げ、世界はどんどん瑞穂の国の文化に染まっていった。


「これが本当のクールジャパンよ!」


「全然クールじゃねえ!」


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