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【コミカライズ掲載中】電気代払えませんが非電源(アナログ)ゲームカフェなので問題ありません  作者: 東方不敗@ボードゲーム発売中
本編

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チャンバラゲームセット【ういろうとソーダ水】

参考ゲーム

侍道

時代ジェダイ劇のゲームがやりたいデス」


「……範囲が広いわね。とりあえず『武士ロード』あたりがいいんじゃない?」


「シヌことと見つけタリ!」

 こういう変な言葉だけは知っている。

 武士道といっても、主人公は仕えるべき主のいない浪人だ。

 とある町に立ち寄り、そこでさまざまな事件に巻き込まれる。

 町は三つの勢力に分かれており、どの陣営に味方してもいい(どこにも所属しなくてもいい)。

 とにかく自由度が高い。

 ゲーム開始直後に村娘が目の前でかどわかされるのだが、この最初のシチュエーションからして選択肢が多い。


『無念!』


 だいたい最初は助けようとして返り討ちに合うのがお約束。


『命だけはお助け!』


 戦っても勝てそうになければ降伏することもできる。


『あっしには関わりのないことでござんす』


 勝てないと判断したのなら見捨てることもできる。

 ……と見せかけて、


「隙アリ!」


 後ろから敵を切り殺すことも可能。

 刀ではなく言葉で誘拐犯を説得してもいいし、逆に自分から仲間に加わえてもらってもいい。

 すべてのイベントは街中で起こるのでスケールはあまり大きくないが、シナリオは狭くて深い。


「バトルは時代ジェダイ劇の殺陣タテデスね」


「たしかに殺陣だな。敵が複数いても、ロックオンしている敵しか攻撃してこない」

「そういえば時代劇って同時に攻撃してこないわね」


「一応、敵も侍だからな。一人を多人数で襲うのは卑怯。言い方を変えれば『一人ずつ順番に襲い掛かれば卑怯ではない』ってことだ」


「……その考え方が卑怯でしょ」

 仮に1対3であろうとも『1対1を3回やっているだけだ』と言い訳できる。

 時代劇のお約束をゲームに導入しているところが心憎い。

 問題はロックオンだ。

「アンロック!?」

 実は完全にロックされない。

 動き回ると別の敵にロックが移る。


 ダメージが分散する上に、予想していない方向から攻撃されるので危険だ。


 ガードはボタンを押しているかぎりガード状態なので有能。

 ただし刀には短い耐久度ゲージが何本かあり、ゲージが全部赤くなるとゲージが一本消え、最終的に折れる。

 赤ゲージは時間経過ですぐ回復するものの、ガードだけでなく攻撃でも赤ゲージは増えるので要注意。

 危ないと思ったら刀を持ち替えるか、倒した敵の刀を奪ったほうがいい。

「ヤクザキック!」

 敵のガード崩し技は発動が遅いので蹴りで潰せる。

 格闘ゲームのようなコマンド入力はあるものの、基本はボタン連打でどうにかなる。

 駆け引きも簡単だ。


 攻撃には縦斬りと横斬りの2種類あり、ガードしている状態で前を入力すると縦斬りを、後ろに入力すると横斬りをいなして敵の体勢を崩せる。


 崩れた敵を攻撃すれば大ダメージ。

 耐久度の高い刀でガードを固め、崩して攻撃すればだいたい勝てる。

 敵の体力ゲージが黄色い時に崩しを成功させれば、


「マタつまらぬモノを斬ってシマッタ」


 次の攻撃は一撃必殺になる。

 これが気持ちいい。

 悪人を斬って名が上がると、色んなやからがすり寄ってくる。


『お主も悪よのう』


越後屋エチゴヤも斬れマスか?」

「ほぼすべてのキャラを殺せるわよ」

「斬り捨てゴメン!」

 ……会話の最中でも刀を抜いて殺せるのがある意味すごい。

 もちろん辻斬りをしまくれば手配され、店で買い物ができなくなり、街を歩くたびに『御用だ』『父の仇だ』と命を狙われる。

 最強の剣豪を目指すのならこれもありだろう。

 殺さなければ手に入らない刀もあるので、刀をコンプリートするなら辻斬りは必須。


「へろーわーく」


口入屋くちいれやな」

 さすがに最強を目指すと血で血を洗う殺し合いになるので、最初は口入屋で地道に仕事を探す。

 斡旋される仕事は偏っている。


 人探し、秘密文書の受け渡し、スリ、借金の取り立て、人斬りなどなど。


 勢力ごとに仕事はパターン化されており、基本的に1勢力につき仕事は5種類ぐらいしかない。

 ひどいのは内容も毎回ほぼ同じこと。

 人探しでも借金の取り立てでも、対象になる人間は3人しかいない。

 場合によっては毎回同じ人間を探すことになる。

 赤ん坊捜索の仕事は特にひどい。

 毎日のように赤ん坊が誘拐され、身代金を受け取った誘拐犯が町のどこかに赤ん坊を放置する。

 カオスすぎる。


「てんちゅー!」


 なんとか誘拐犯を見つけて斬り殺しても、

「クエストに出てくるモブは何回殺しても復活するわよ」

「ふぁっ!?」

 特に重要ではないキャラはかなり扱いが雑だった。

 おまけに時間制限が厳しい。


 手間取るとすぐ時間切れになるし、クエスト中でも別のイベントが発生すると時間が経過してしまうので強制的に仕事は失敗になる。


 仮に仕事を成功させても時間内に報告できなければ報酬はもらえない。

「べいびーはどうすればいいのデスか?」

「もう死んだことになってるわよ」

「しっと!」


 赤ん坊を取り戻しても時間に遅れたらクエスト失敗になるという理不尽。


 時間が経過すると気力が減り、0になると倒れてしまうので定期的に寝るか食事をして回復しないといけない。

 体力ゲージも自然回復しないので、気力と一緒に回復させないといけない。

 寝ればタダで気力も体力も回復するものの、ゲームの制限時間は1週間なので寝すぎると大変なことになる。

 序盤は金がないので回復するのも一苦労だ。

 食事は茶屋や料亭に通うか、アイテムを使うことで食べられ、種類も豊富。

「ずんだもち、ところてん、みたらし団子……。よりどりグリーンデス」


「武士ロード名物といえば『ひよこういろう』でしょ。飲み物はお酒ばっかりだから、飲めそうなのはソーダ水ぐらいね」


「ソーダ!?」

「一応、明治時代だし」

 海外には天然の炭酸水があるため、この時代に持ち込まれていたとしても不思議はない。

 とりあえずフルーツを使ってういろうを着色・味付けした。

 余ったフルーツはジュースにしてソーダ水で割る。

 ういろうは米粉と砂糖を混ぜて蒸すだけなので難しくはない。

 ……和菓子とは思えない味付けだが。


『奉行所の犬め!』


 中盤からは特に難しい。

「おー、ヤクザ!」

 奉行所の仕事をこなしていると、敵対勢力であるヤクザに絡まれることが多くなる。

 いきなり斬りかかってくるのが厄介だ。

 このゲームでは抜刀しないと攻撃も防御もできない。

 相手が襲い掛かってきてから刀を抜くのでは遅すぎる。

 不意打ちで何度も殺されてしまう。

「どうすればいいのデスか?」


「先にヤクザ見つけて殺せばいいじゃない」


「サーチアンドデストロイ!」

「手配されるだろ」

「なら奉行所まで逃げることね。街中で刀を抜くとお縄になるし。わざとヤクザを蹴って刀を抜かせれば完璧」

 ……どっちがヤクザかわからない。

「ロード中に目的地に行ってもいいわね」

「ロード?」


「マップを移動するとデータを読み込んでゲーム画面が切り替わるわけだけど、ロードが終わって主人公を動かせるようになっても、町人が出てこないことがあるでしょ」


「たしかに町人が出てくるまで間があるな」

「少しでもロード時間を短くするために、主人公とフィールドを先に出して、町人は後回しにしてるわけ。この間を利用して目的地までダッシュ!」

「ローディングなう!」

 ロード時間のあるゲームならではのテクニックだ。

 夜は辻斬りに注意。

 町では普通に辻斬りが歩いており、容赦なく斬りかかってくる。

 奉行所の人間も油断できない。

 なぜなら乱戦で刀を振っていると、奉行所の人間に当たってしまうことがあるからだ。


『御用だ!』


「がっでむ!」

 そうなると味方のはずの奉行や同心が襲い掛かってくる。

 敵対するつもりがないのに好感度が下がり、好感度を戻すために汚れ仕事をやらざるをえない。

 この仕事がまた危険なのだ。

 暴れるヤクザ集団を始末しなければならない。

 一番危険な乱戦である。

 ボスが居合いを使うのも厄介だ。


 縦斬りや横斬りのように振りかぶるモーションではないので崩しにくい。


 相手のガード崩し技も発動は遅いものの、だいたい初見の技なので蹴りで潰すこともできずにやられる。

「……トリッキーすぎて見切れまセン」

「どうやって倒せばいいんだ、このボス?」

「居合いを見切れないんならザコごと倒すしかないわね」

「ほわい?」


「ロックオンしてるからボスが攻撃してくるんでしょ。だったらロックオンをザコに切り替えて、攻撃範囲の広い技でザコと一緒に斬ればいいじゃない」


「……その発想はなかった」

天才じーにあす

 基本的に1対1なので、ロックオンさえ切り替えてしまえばボスは攻撃してこない。

 この方法を使えば簡単にボスの体力を削ることができる。

 ゲームシステムを利用した面白いテクニックだ。


 このテクニックの性質上、乱戦のボスより周りにザコがいない一騎打ちのほうが難しい。


「ノーロックオンでもアタックされマス」

「当たり前だろ」

 さすがに一対一だとロックオンしなくても攻撃されてしまう。

 そう都合よくはいかない。

 細かい部分で粗は多いものの、独特のシステムや自由度の高さで楽しめるゲームだった。

「余は満足じゃ」

 アリスもご満悦である。

 よほど気に入ったのか、作中の浪人の真似をして髪をポニーテールにまとめた。


「どうしたら立派な浪人ローニンになれマスか?」


「それ絶対なったらいけないやつ」


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