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【コミカライズ掲載中】電気代払えませんが非電源(アナログ)ゲームカフェなので問題ありません  作者: 東方不敗@ボードゲーム発売中
本編

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遊園地ゲームセット【クレープとコーヒー】

参考ゲーム

THEジェットコースター

「ジェットコースターでGO!」

 自作のコースでジェットコースターを爆走させる。


『THEローラーコースター』


 レールを敷いてジェットコースターを走らせるシンプルなゲームだ。

 ジェットコースターを自作して与えられた課題をクリアする『チャレンジモード』と遊園地を運営する『経営モード』がある。

 経営モードでもジェットコースターは自作しないといけないので、チャレンジモードは事実上のチュートリアルといえる。


「あ、脱線した」


 ジェットコースターがカーブを曲がりきれず、盛大に吹っ飛んだ。

「カーブが急すぎるんだろ」

「でもこれ以上カーブをゆるくすると敷地外に出ちゃうし」

「調整が難しいな」

 脱線を防ぐため、ちまちまレールの角度をいじる。

「えーと、クリア条件は……」

 チャレンジのクリア条件は複数の項目に分かれていた。

 最高速度、最大G、スリル、安全性。

 スピードを出すためには高さが必要だ。

 レールを高くすればいいだけなのでそれは難しくない。


 問題はどこで高度を稼ぐかということ。


 基本は発車直後だ。

 なぜなら発車直後は速度0からでも最大高度まで登ることができる(機械的に頂点まで上げてもらえる)からである。

 しかし一度走り出してしまうと、自力で登らなければならない。

 もちろんスピードが足りなければ途中で力尽きてしまう。

 なので走行中に最大高度を目指すのは得策ではない。

 だが最初のチャレンジゆえに敷地が狭く、発車直後に最大高度まで登って加速してしまうと安全に曲がるのが難しい。

 確実に曲がれるようにするとレールが敷地外へ出てしまう。

「どうすればいいの、これ」


「レールを90度傾けろ」


「は?」

「車体がまっすぐな状態だから遠心力で外に引っ張られて脱線するんだろ。車体を傾ければ外に引っ張られてもレールが止めてくれるから、物理的に脱線しない」

「なるほど!」




     レレレレレ

    レ■■■■■

   レ■

  レ■

 レ■

レ■

レ■

レ■

レ■

レ■


車体を横に倒せば、外側にレールがくるので急カーブで曲がっても物理的に脱線しようがない




「問題はGね」

 物理的に脱線を防いでも急カーブでは強烈なGがかかる。

 課題の最大Gを超えてしまうとチャレンジ失敗だ。

 テスト走行で過度のGがかかったレールは赤く表示されるので修正はしやすい(ただしレールを1ついじると元の色に戻るので、赤い部分が複数ある時は修正しにくい)。

「登りのレールを曲げるしかないな」

 登りの内に曲がっておけば、下りのカーブを緩やかにできるのでGも抑えられる。


「……序盤のレールをいじるとひどいことになるわね」


 レールは最初から最後まで繋がっているため、一部を動かすと他のレールも動いてしまう。

 特に最初の方のレールは影響が大きい。

 ここを動かすと、延長線上にあるレールはすべて動いてしまうのだ。


 このゲーム、真っ直ぐレールを敷いているつもりでも微妙に曲がってしまう。


 特に上下のゆがみが大きく、最初のレールの角度を下げると全体のレールが敷地の下まで沈む。

 敷地の広さを最大限に利用してレールを敷いていると、微調整した時に上下左右のどこかが必ずはみ出してしまう。

 最後に調整することを考慮して、レールは余裕を持って敷いたほうがいいのかもしれない。

「やっと最後まで繋がった!」

 周回型のコースターなので、最後はスタート地点のレールに繋げる必要がある。

 これまではレールを敷いている途中でテスト走行していたので、


『脱線しました』


 レールが途切れると脱線して宙を舞っていた。

 これでようやく完走できる。

「しゅっぱつしんこー」

 最大高度までゆっくり登り、加速しながらカーブを曲がる。

 そしてループ(宙返り)やコークスクリュー(螺旋状に回転)でぐるぐる回っていく。

 そのたびに、



気持ち悪くなった人 3

ゲロ吐いた人 2

失禁した人 1

失神した人 1

記憶喪失になった人 1

行方不明になった人 1



 なる項目が表示された。

 上4つはまだわかる。

 ……だが下2つはなんだ。

 殺意しかない。


『完走しました』


 行方不明にならないようにレールを修正し、無事にスタート地点へ戻った。

 最高速度、最大G、スリル、安全性、すべて基準を満たしている。

 なのに総合評価が伸びず、チャレンジクリアにはならなかった。

「なんで!? 赤い部分はないのに」

「スリルと安全性が足りないみたいだぞ」

「レールを延ばせばいいのね」


「スリルは加点式だから延ばせば延ばすほどポイントは伸びるな。でも安全性は減点式だから延ばすほど下がりやすくなるぞ」


「とにかく総合点を伸ばさないことには始まらないでしょ」

 強引にレールを延ばしていく。

 明らかにレールとコースターが接触しているような気がするのだが、


『完走しました』


 当たり判定がめちゃくちゃで(というか当たり判定がない)、幽霊のごとくレールをすり抜けて完走した。

 スリルは伸びたものの、安全性が伸びない。

 むしろ減点されている。

「レールに赤い部分がないからどこを直せばいいのかわかんない」

「なら一番速いコースターを設置してみろ」

「脱線するでしょ」

「それでいい」

「は?」

「赤く表示されるのは過度のGがかかる部分だ。当然コースターの速度によってかかるGは違う」


「あ、速いコースターを走らせればどこにGがかかってるのかわかるんだ!」


「そういうことだ」

 遅いコースターはGがかからないので、逆に危険な場所がわかりにくい。

 というわけで最速のジェットコースターを走らせる。


『脱線しました』


 見事に3つ目のカーブで脱線した。

 そして狙い通りGのかかった部分が赤く表示され、修正しやすくなる。

「ループでもGがかかるのね」

「盲点だったな」

 遅いコースターでは気づかなかったが、ループしている部分が赤くなっている。

 ループもカーブには違いない。

 Gがかかって当然なのだ。

 もう少し早く気付くべきだった。

 最速のコースターでは途中で脱線してしまい、後半のチェックができないので2番目、3番目のコースターを走らせてGをチェック。

 レールを微調整し、


『完走しました』


 最終的に2番目の速さのコースターでも完走できるだけの安全性を手に入れた。


『チャレンジ達成』


「やった!」

 ようやくチャレンジ1をクリア。

 だいたいコツがつかめてきたらしく、チャレンジ3までクリアしたところで経営モードへ移行。

 リアルタイムで時間が流れる経営シミュレーションだ。

「とにかく設備を買って設置していけばいいのね」

 最初は設置できるものが少ないので、アトラクションの『研究』に限度額の1000ゴールドをつぎ込み、


『ゴーカートが作れるようになりました』


『お化け屋敷が作れるようになりました』


「ん、いい感じ」

 どんどん作れるアトラクションが増えていった。

 客を増やそうとアトラクションを中心に設置していく。


『メリーゴーランドが作れるようになりました』

『バイキングが作れるようになりました』


「え、ちょっと待って」

 作れるアトラクションが増えていくたびに資金が減っていく。

 アトラクションの試作には別の費用がかかっているようだ。

 そうなると当然、


『ピラミッドが作れるようになりました』

『観覧車が作れるようになりました』


「あああ!?」

 研究費をケチらなかったのが災いした。

 どんどん新しいアトラクションが開発され、湯水のごとく資金が消えていく。

 そしてとうとう資金が底をついて借金生活。

 しかもアトラクションをたくさん設置しているのに客足が伸びない。

 借金は一向に減らず、


『ゲームオーバー』


「ええ!?」

 赤字が一週間以上続いたのであえなくゲームオーバー。

 見切られるのが早すぎる。

「アトラクションはあんまり集客効果がないんじゃないか?」

「……たくさん設置しないといけないんでしょうね。研究費をつぎ込むのは自殺行為かも」

 やはりジェットコースターを設置しないと客足は伸びない。

 研究費とアトラクション設置は最小限にし、ジェットコースターを自作して設置。

 ほんの少しだが客足が伸びた。

 しかし、


『トイレが少ないと苦情が来ています』

『迷子になるお子さんが増えています』

『空気が汚いと苦情が来ています』

『アトラクションがつまらないと苦情が来ています』


「出た、モンスター!」

 続々とクレームが届き、そのたびに客が一定期間減っていく。

 『空気が汚いので木をたくさん植えろ』というのは意味不明だが、とにかくトイレや案内板(迷子予防)、木、アトラクションを設置。

 特に『アトラクションがつまらない』と客が20%減るので致命的だ。

 リスクはあるが研究費をつぎ込んでアトラクションを増やす。

 赤字にならないように悪戦苦闘すること数日。


『緑の多い遊園地と紹介されました』


「やった!」

 空気清浄と見栄えを重視して桜を植えまくったのが功を奏し、雑誌で紹介され、客足が劇的に増えた。

 資金に余裕も出てきて、どんどんアトラクションを設置する。

 アトラクションが増えれば客も増える。

 経営が軌道に乗ってきた。

 こうなるとゲームオーバーになるほうが難しい。

 わずか2ヶ月ほどでもうやることがなくなってしまった。

「これ、どうなったらクリアになるのかしら」


「説明書には総資産200万ゴールドって書いてあるぞ」


「……放置してれば達成できるわね」

「だな」

 クレーマー対策のため、苦情の種はすべて排除してある。

 リアルタイムの経営ゲームなのでプレイヤーが操作しなくても、放置していれば勝手に資金が増えていく。

 難しいのは資金のない序盤だけで、後半はやることがない。

 経営シミュレーションとしてはかなり作りこみの甘いゲームだ。

「ヒマだわ」


「フリーウォークってのがあるらしいぞ」


「なにそれ」

「プレイヤーが客になって遊園地を歩ける。主観視点でアトラクションを体験できるモードだな」

「買い物もできるんだ」

 ハンバーガーショップやクレープ屋などを設置すると、ちゃんと買い物をすることもできるらしい。

「やっぱり遊園地といえばクレープよね」

「……そうか?」


「『恋人っていうのは2人で遊園地に行って、手をつないでクレープを半分こする事だろ!』ってクソナードも言ってたでしょ」


「それはオタク(ナード)の妄想だろうが」

 そもそもゲームでは2人で歩けないし、クレープ半分で足りるわけもない。

 だが面倒なので突っ込むのはやめた。

「飲み物はコーヒーね」

「あいよ」

 クレープを用意し、さっとコーヒーを淹れてコーヒーカップを渡す。


 取っ手を左にして。


 普通は利き手でスプーンを持って砂糖を入れるので、左手でカップを支えられるように取っ手を左にして出すのがマナーだ(ただし店や国によって作法は違う)。

 そしてスプーンでかき混ぜ終わったらカップを半回転させて取っ手を右に持ってくる。

 瑞穂もいつもより少なめの砂糖を入れ(アイスが甘いので砂糖ひかえめ)、カップを半回転させた。

「え?」

 カップの絵柄を見て動きが止まる。

「なにこれ」


「コーヒーカップカップだ」


「かわいい」

 これは『遊園地のコーヒーカップ』を意識したカップで、『客が乗り降りする出入り口』がデザインされているのだ。

 カップを半回転させる仕草を、遊具のコーヒーカップが回転している様子に見立てた遊び心のある一品である。


「あ、何かここだけ感触が違う」


「だろ?」

 出入り口の部分は飲み口なので、そこだけカップの質感が違う。

 これは食器にままあることだが、たとえばザラザラしている陶器でも口当たりがいいように飲み口だけ特別な加工をしたりするのだ。

 見た目に楽しく、飲む人への気配りも忘れない。

 お手本のようなデザインだ。

「やっぱりメインはジェットコースターね!」

 一服したところでジェットコースターを改良する。

 研究によって最大高度は200メートルになった。

 これなら時速200キロで爆走することも難しくない。


「あれ、Gと安全性が基準値を超えててもいいんだ」


「完走できるんなら設置することはできるみたいだな。……行方不明と記憶喪失が多発して潰れるだろうけどな」

「面白そう」

「おい、やめろ」

 調子に乗って高Gで安全性マイナスのジェットコースターを作り始めた。



記憶喪失になった人 20

行方不明になった人 26



「あははは! 見ろ、人がゴミのようだ!」

「……なんで潰れないんだよ、この遊園地」

 カーブを曲がるたびにジェットコースターから人が吹っ飛んでいく。

 記憶喪失も多発して社会問題になってもおかしくないのに、なぜか客足は増えていた。


 どうやら最高速度とスリルでポイントを稼いでおけば、どれだけ高Gや安全性でマイナスされても総合評価はプラスになるらしい。


 高Gと安全性が-3000でも、最高速度とスリルが+6000なら総合評価は3000。

 たとえ何人が記憶喪失で行方不明になろうとも悪評は立たず、むしろ総合評価3000の効果で客足は増え続けるのだ。


「目指せ、行方不明者100!」


 ……もはや経営シミュレーションでもなんでもない。


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