表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

341/382

テニスゲームセット【梅干しと昆布茶】

オリジナルボードゲーム【平安京バックギャモン】のクラウドファンディングを実施中です。

https://camp-fire.jp/projects/view/632371?utm_campaign=cp_po_share_c_msg_mypage_projects_show


参考ゲーム

テニスの王子様

マリオテニス

「エースをねらえ!」


「ちっ!」

 スピードが速いので、サーブを拾うのすら難しい。

 テニスはサーブを打つプレイヤーのほうが有利なスポーツだ。


 自分がサーブを打つ『サービスゲーム』で勝つことを『キープ』と呼び、レシーバーの時の『リターンゲーム』を勝つことを『ブレイク』と呼ぶ。


 6ゲームを先取したら1セット、基本は3セットマッチで2セット先取したプレイヤーの勝ち。

 サービスゲームは交互に来る。

 サービスゲームで勝つのは当たり前、いかにブレイクするかが重要なのだ。

 それだけサーブを強打で返すのは難しい。

 少しでも緩い球になると、


「ボレー!」


「ぐっ!?」

 前に出てボレーを打ち込んでくる(相手の球をノーバウンドで返すのがボレー、ワンバウンドで返すのがストローク)。

 いわゆる『サーブ&ボレー』だ。

 ただ初級者でも遊べるテニスゲームである以上、サーブに目が慣れてしまえばかろうじて対応できる。


「そこだ!」


「ああ!?」

 サーブからボレーを狙うということは、ゆるい返球が来ることを前提に前に出ている(サーブを打ったら前にダッシュする)ということである。

 しっかり対応できれば横を抜いたりロブで頭の上を越せるのだ。

 現実でもサーブ&ボレーはかなり少なくなっているらしい。


 トレーニング技術の発達で今の選手は昔よりも格段にパワーがあり、ラケットも進化している。


 とりあえず相手のバックハンド(利き腕とは逆の方向で打つこと)に打っておけば強くて精度の高いボールは返ってきにくいとされていたが、現代の選手はバックハンドでも両手でフルスイングしてくる上にコントロールもいい。

 筋肉とラケットから生まれるパワフルな打球をきわどい場所へ打ち込み続ければ、リスクを背負って前に出ずとも勝ててしまう。

 しかもこのゲームにはスタミナがない。

 サーブさえ凌げれば、無限にダッシュしてどんな球でも拾い続けることができるのだ。


「シコりすぎ!」


「それがテニスだろ」

 シコるとは自分からは仕掛けないで相手がミスをするまでしつこくねばること。


『全てのボールに追いつき、それをコントロールできれば理論的には負けない』


 パワーのないキャラでも、素早くボールを打てる位置に移動すればチャージできるのもありがたい。

 ボタンを押している時間が長いほど力がチャージされ、強い球を打ち返せるのだ(チャージしている間は移動力が落ちる)。

 ライジング(バウンドした直後のボールを打つ)ならなおよし。

 問題は必殺技だ。


『スーパーノヴァ!』


「ぐっ!?」

 スマッシュよりも格段に強いボールを打ち込まれると反応するのが難しい。

「ディフェンスキャラにチェンジするか」

 防御系の必殺技ならどんなボールでも拾えるが、


「……これいつまで続くんだ」


「ゲージ次第ね」

 お互いに防御系キャラで戦うとラリーが永遠に続く。

 必殺技ゲージを完ぺきに管理しなければ決着がつかない。


「……一旦休憩しよう」


「さんせい」

 10分ラリーし続けた末にポイントを取られた時の疲労と、10分で1ポイントしか入らない絶望感はすさまじい。

 防御系キャラは禁止にしたほうがいいだろう。


「今日は梅干しと昆布茶ね」


「あいよ」

 テニスらしからぬメニューだが、一応これはテニスアニメ『ジャイアントストライド』で対戦相手が休憩中にたしなんでいたものである。

 塩分を含んだ温かい飲み物をゆっくり補給するのは理にかなっているらしい。

 梅干しのクエン酸も疲労回復に効果的なのだとか。

 梅昆布茶にするのもおすすめだ。


「毎回必殺技演出が入るのもわずらわしいな」


「じゃあ演出カットしましょ」

 オプションで演出をカットする。

 これでゲームのテンポも良くなるだろう。

 ……そう思ったのが甘かった。


『スーパーノヴァ!』


「げっ!?」

 必殺技発動時のカットイン演出がカットされたため、通常時と同じモーションで必殺技を打ってきた。

 小さいモーションで必殺技が飛んでくるので、常人の反射神経では反応しきれない。


 ……わざわざ演出を入れるのも、ちゃんと理由があったのだ。


 仕方ないのでオプションを戻す。

「そろそろ本気出すわよ」

「重量級のパワーキャラか。そいつでボール拾えるのか?」


「拾えないのなら拾わずに勝てばいいじゃない」


「?」

 言葉の意味はわからなかったが、試合は大方の予想通りに進んだ。

 重量級のパワーがあるのでサーブやストロークは重いが、やはり足が遅いのでボールを拾えない。

 ここからどうやって逆転するつもりなのだろう。


『バロンホームラン!』


「ぐっ!?」

 ヤマを張って何とかラケットには当てたが、パワー系の必殺技を不安定な体勢で打つとラケットを破壊されてしまう。

 返球できてもラケットが壊れてはどうしようもない。

 だがどれだけ強力でも一度に取れるのは1ポイントだけ。

 俺の有利に変わりない。

 ……はずだったのだが。


『ゲームセットアンドマッチウォンバイ万里男』


「は?」

 唐突にゲームが終わって俺の負けになった。

 意味が分からない。

「なんだこれ」


「ラケットのストックがなくなったからよ」


「はあっ!?」

「初期設定だとラケットは3個しか持ってないの。だから3個壊されたらその時点で負け」

「そんなめちゃくちゃなルールがあるか!」


「ラケット破壊なんてまだ可愛いもんよ。『テニスの王女様』なんて体力ゲージまであって、体力が0になったらKOされるんだから」


 俺の知ってるテニスと違う。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ