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本編

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VRゲームセット【かき氷とほうじ茶】

参考ゲーム

バイオハザード7



「念願のVRを手に入れたぞ!」


「でかいな」

 ヘッドセットなので頭と同じぐらいの大きさがあり、プレイの邪魔になりそうな太いケーブルも伸びている。

 技術的に無線はまだ難しいのだろうか?

 微妙に説明書が分かりづらくて配線に少し手間取るものの、

「これでよし」

 モニターの上にカメラ(これでヘッドセットやプレイヤーの位置情報を読み取っているのだろう)をセットすれば準備完了。


「ざ・げーむいずおん!」


 満を持してヘッドセットをかぶってVRホラーゲーム『レジデントデビル7』を起動した。

 そして数分後。


「……ぎもぢわるい」


「早すぎだろ。……というか、どこに酔う要素があった? ただ歩いてるだけだろ」

「それだけで酔うのよ!」

「マジか」

 三半規管が弱いのもあるのだろうが……。


 『キャラのCGがリアルであればあるほど、現実の人間との些細な違いで不気味に感じる』という『不気味の谷現象』に近いのかもしれない。


 モニターで確認する限り(モニターに繋いでいるので、VRで見ている映像はモニターにも映っている)、ゲームの映像はほぼ実写だ。

 しかしリアルに近すぎるほど、リアルとの違いで脳が混乱を起こし、些細なことで酔ってしまうのだろう。

「歩くときに頭を揺らしたらどうだ?」

「は?」


「酔いにくいように、プレイヤーが頭を動かさない限りゲーム画面は揺れないようになってるだろ」


「そうね。なんかスライドして前に進んでる感じかも」

「だからあえて自分から頭を動かす。いま自分は歩いていると脳に錯覚させるんだ」

「なるほど」

 景色は動いているものの、歩いているときのように視界が上下に揺れないし、プレイヤーの体も動いていないので脳が混乱してしまう。

 ならば自分で体を動かし、ついでに映像も動かせばいいという発想だ。

 立ってプレイしてもいいかもしれない。

 その場で足踏みすれば視界もいい感じに揺れるだろう。


「あ、少し楽になったかも」


 しかしそれも長くは続かない。

 というか長く続ければ続けるほど酔いはひどくなっていく。

 腕のツボを押すなどして酔い止めを試みるものの、


「……ばたんきゅー」


「……想像以上にひどいな」

 最初のステージである洋館に入っただけでダウンした。

 まだ敵と遭遇エンカウントすらしていない。

 本当にただ歩いているだけで酔ってしまったのだ。

 TPSのレジデントデビル4でもひどい酔い方をしていたが、4とは比較にならないレベルである。


「こういう時は冷たいものがいいな」


「なんで?」

「酔い止めになるらしい。氷を口に含むのが一般的だ」

「へー」

 ロンリーなグルメに出てきた栗のかき氷とほうじ茶で一服しながらプレイ開始。

 ヘッドセットをしている状態では外の様子がわからないので、氷をぶちまけないように注意しなければ。


「う、本当に歩くだけできついな」


「でしょ?」

 ひどく画面が揺れるわけでもないのに気持ち悪い。

 さすがに数分でダウンするレベルではないものの、30分ぐらいで休憩したほうがいいだろう。

 ぶっ続けでプレイし続けると確実に寝込む。

 だが酔うのを覚悟でプレイするだけの価値はある。


「ホラーとの相性は最高だな」


 リアルなゲームをプレイしたとき、高いところから飛び降りてヒヤッとした経験のあるプレイヤーは多いだろう。

 まるで自分が飛び降りたようなあの感覚が、VRでは数倍に感じられるのだ。

 映像がリアルなので高所恐怖症や閉所恐怖症も発生する。

『これでもくらえ!』

「うおっ!?」

 自分に向かって何かが飛んでくるのも、普通のゲームに比べてはるかに怖い。


 反射的に頭を動かして避わすレベルだ。


 この『頭の動かせ方』も色々と考えられている。

 わかりやすいのは曲がり角。


「絶対何かいるじゃない!」


 プレイヤーが頭を動かすとゲームキャラの頭も動く。

 基本的に移動はパッドで行うが、プレイヤーのヘッドセットの動きが反映されるので、プレイヤーが歩けばゲーム中のキャラも動く。

 なのでプレイヤーが前に首を伸ばし、横を向いて曲がり角を覗き込むことができるのだ。

 何かがいるとわかっているのに、安全のためにそこを覗き込まなければならない恐怖たるや。

 おまけに、


ガタンッ


「ぎゃー!?」

 音に反応して振り向くと、やはりそこにも化物がいる。

 いかにプレイヤーの頭を動かすか。

 それが巧みに計算されていた。


『ねえ、遊ぼうよ』


 だるまさんが転んだシチュエーションもある。

 つまりプレイヤーが後ろを向いているときだけ、敵の動きが止まるパターンだ。

 それなら後ろ向きに歩けばいいのではと思うかもしれないが、トラップが仕掛けられているのでそうもいかない。

 トラップは目視できる雑なものだが、見えなければ避わしようがない。

 後ろを向いて敵の動きを止めつつ、トラップを回避しながら逃げるというシチュエーションだ。

 ひどいときには、


『おぎゃー!』


 赤ん坊を抱いているときに敵が襲い掛かってきた。

 両手で抱いているので武器は使えず、逃げても両手がふさがっているのでドアを開けるのも手間取る。

 ではどうするのか?

 答えは簡単。


『くらえ!』


 頭突きするのだ。

 ちなみに近接攻撃では最強の破壊力がある。

 ……使いすぎると自分もダメージを食らってしまうが。

 死ぬよりはマシだ。


『やつの目を見たら死ぬぞ』


 顔をそらしながら戦うというシチュエーションもあった。

 驚いて敵から顔をそむけると、


「ひえっ!?」


 当然のように別の化物が横にいる。

 ……よくここまで人を怖がらせられるものだ。

 逆にこれを利用する敵もいる。


『ハッ!?』


 敵が驚いた顔をして横を向いた。

 いったい何が現れたのかと思って横を向くと、

「ん、何もないぞ?」


GAME OVER


「は?」

 気づいたら死んでいた。

 意味がわからない。

「……何が起こった?」

「よそ見戦法じゃないの」

「なんだそれ」


「ボクシングの世界チャンピオンがやってたでしょ。驚いた顔をして横を向くと、相手も釣られて横を向いてしまう。その瞬間にパンチをドンッ!」


「そんなめちゃくちゃな戦法があるか!」

「現にあんたも引っかかったじゃない」

「ぐ」

 ……まさかVRでそんな戦法を食らうとは。


 世界チャンピオンおそるべし。


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