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【コミカライズ掲載中】電気代払えませんが非電源(アナログ)ゲームカフェなので問題ありません  作者: 東方不敗@ボードゲーム発売中
本編

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競馬ゲームセット【タイ焼きとコーラ】

参考ゲーム

ウマ娘プリティダービー

「うまぴょいってなんだ?」


「哲学」


 意味が分からない。


『ウマ女 ビューティダービー』


 実在する名馬を擬人化したアニメだ。

 擬人化しても四足歩行はできるはずなのに、なぜか二足歩行でレースをしている。

 実質、ただの徒競走だ。

 だが不思議とおもしろい。

 時代を超えて歴代の名馬が一堂に会するお祭り作品なのかと思いきや一味違う。


「架空戦記だな、これ」


 アニメは驚くほど史実に忠実だった。

 少なくとも主人公『スペリオルウィーク』を始めとする黄金世代の成績は、現実とほぼ同じである。

 レース展開も史実通りだ。

 しかしここぞという場面でIFを入れてくる。

 たとえば日本ダービー。

 坂でスペリオルウィークがトップに立つところまでは史実通り。


 そこから当時の規定でダービーに出走できなかった『ヨロコンドルパサー』がさっそうと現れ、最後の直線で一騎打ちを繰り広げる。


 ヨロコンドルパサーが出走していたらこうなっていたであろうという展開だ。

 競馬を知らなくても普通にスポ根ものとして面白く、IF展開もあるので史実を知っている競馬ファンでも楽しめる。

 史実では安楽死させられた『サイエンススズカ』の復帰も『本能寺の変で信長が死ななかったら』のような架空戦記の定番だ。

 名馬の擬人化だからこそできる展開。

 まさか擬人化作品で架空戦記を観ることができるとは想像だにしていなかった。

 思わぬ拾い物である。

「このアニメ、ゲームが原作なんだろ。これやれよ」


「まだサービスが始まってないのよ」


「は?」

「権利関係でちょっともめたみたいだし。こういう業界ではよくあることよ。『アニマルともだち』なんてアニメ放送前にサービス終了したんだから」

「……ゲーム終わってるのにアニメ放送する意味あるのか?」

「アニメが大ヒットして違う形でゲームが復活したから意味はあったんじゃない? いまは別の意味でコンテンツが死んでるけど」

 事情はよくわからないものの、アニメとアプリゲーム業界の闇は深い。


 ……そして2年後、とうとうサービスが始まる前にアニメの二期が放送された。


 アニメ放送中にゲームのサービスが開始されたのが唯一の救いか。

「ポチッとな」

 アニメに登場したカスタードのタイ焼きとコーラ(炭酸抜き)を片手に、さっそくゲームをインストールしてプレイ開始。


「ときプロだな」

「ときプロね」


 ゲームシステムはほぼ『実況ときめきプロ野球』。

 ウマ女の数だけ個別ストーリーが存在するので、ときプロのシステムのベースになったギャルゲー『ぱわふるメモリアル』とも同じ感覚で遊べる。


 ときプロは『野球もできるギャルゲー』とネタにされることはあるものの、あくまでメインは野球でありキャラ育成だ。


 作中に登場するのは『ときプロくん』をはじめとする二頭身のデフォルメキャラなので、恋愛ゲーム向きのキャラデザではない。

 ウマ女は『ときプロのシステムでぱわメモを作る』という、いいとこどりのゲームだ。

 シナリオはアニメのように史実に忠実(+史実で達成できなかった目標や怪我を乗り越えるストーリー)、システムはときプロやぱわメモですでに完成されている。

 これでつまらないわけがない。

 『クオリティアップのため発売サービス延期』を繰り返す作品は、だいたいゲームが破綻しているかバグまみれなのだが……。

 本当にクオリティアップのために延期して破綻していないゲームは珍しい。


『失敗率7%』


「つまり25%ね」

「ときプロ基準で考えるな」

 基本はトレーニング。

 スピード、スタミナ、パワー、根性、賢さのトレーニングをして各パラメータを上げ、レースに勝ってファンを増やす。

 トレーニングするごとに体力が減り、50以下になるとトレーニングで失敗する確率が増える(失敗するとパラメータが上がらず、確率でバッドコンディションがついてしまう)。

 休めば体力がランダムで30、50、70回復する。

 100以上にはならない。

 ちなみに賢さのトレーニングでは体を動かさないので、体力が5回復する。


「賢さで体力を調整するのがキモだな」


「そうね」

 50を少し切るぐらいの体力なら賢さを上げつつ体力を50以上に戻して、そこからさらにトレーニングをして体力を30以下にする。

 体力が50前後のときに70回復したら、その分だけ損してしまうからだ。

 できるだけ70フル回復したい。


 レースに出るのも有効だ。


 このゲームは『バビスタ』と違って怪我をしにくい。

 3ターン以上連続でレースに出走しない限りバッドコンディションにはならない。

 体力が少ない状態でレースに出ても結果や怪我に関係ないのだ。

 なので安心してレースで体力を減らせる。

 レースに出れば大量のスキルポイント(スタミナ回復や直線・コーナーでの加速、有利なポジション確保、雨や重馬場・特定のレース場への対応力上昇などのスキルを習得するのに必要なポイント)を得られるのも大きい。


「……どのパラメータに振ればいいのかわからん」


 とりあえずスペリオルウィークを育てているのだが、一番人気でも勝率が安定しない。

 アドバイスによるとパワー不足らしい。

 周りを囲まれてしまった場合、パワーがないとブロックされて前に出られないようだ。

 スペリオルウィークは差し。

 レース中盤ぐらいまで中~後方で待機して、最終コーナー前後から一気に加速してぶち抜く戦法を得意とする。


 必然的に前方には何人ものウマ子がおり、囲まれたら脱出できずに死ぬ。


 スペリオルウィークのメインの戦場は芝の2000~2500mの中・長距離。

 かなりのスタミナが必要だ。

 しかしスタミナとパワーを鍛えてもスキルを使わないと勝てない。

 スキルは確率で発動するものであり、賢さが高いほど発動確率が上がる。

 安定してスキルを発動させるために賢さも上げないといけない。

 もちろんスピードもなければ話にならない。

 バランスが難しい。


「根性ってなんの役に立つの?」


「スタミナのサブタンクみたいだな。スタミナが尽きても根性があれば失速しない」

「じゃあスタミナ上げればいいじゃない」

「それは言わない約束」

 トップに立てるスピード、失速しないだけのスタミナ、当たり負けしないパワー、スキルを安定して発動させる賢さ。

 それに比べて根性はわかりにくい。

 他のパラメータと違って『根性があったから勝てた』という実感がないのだ。


 スタミナ+100と根性+100でどう変わるのか検証できればいいのだが、スキップ機能で既読イベントを飛ばしても1プレイに1時間以上かかる。


 何度も周回して調べるしかないだろう。

 スタミナの下位互換というのは考えづらいので、スタミナよりも根性のほうが加速するのかもしれない。

「同じ脚質・距離適性でもシナリオによって育て方が変わるな」

 育成期間は3年で、3年目の12月後期で終了。

 中・長距離特性のある馬はクラシック三冠(皐月賞2000m、日本ダービー2400m、菊花賞3000m)に挑み、年末は有馬記念(2500m)。

 そして春(3200m)と秋(2000m)の天皇賞、宝塚記念(2200m)、ジャパンカップ(2400m)、三年目のラストレースもだいたい有馬記念になる。

 2500以上が長距離だ。


 各レースには目標順位が設定されており(だいたい1~5着。たまに出走するだけで目標クリアになる)、後半のレースは1着を獲らないとクリアにならないので長距離の有馬記念を勝つためにスタミナは必須。


 史実で牝馬だったキャラは牝馬三冠の桜花賞(1600m)、オークス(2400m)、秋華賞(2000m)が目標になる。

 スキルは距離や脚質が限定されているものもいくつかあり、


「あ、中距離適正なのにラストが有馬記念だから中距離スキル使えないじゃない!」


「目標は最初に確認しとけよ」

 『クイーンヘイロー』にいたっては序盤はクラシック三冠路線なのに、途中で自分には中・長距離適性がないと認めて短距離・マイル(1400~1800)に切り替えるシナリオだ。

 序盤は中・長距離レースで5着以内に入らねばならず、長距離の菊花賞直後の高松宮記念(1200m)で1着にならないといけない。

 そして短距離とマイルの重賞で1~3着以内の目標を達成すると、ラストは2000mの秋の天皇賞で1着になれという。

 嫌がらせのようなシナリオ構成だ。

 おまけに育成シナリオをクリアすると『NRAファイナル』というゲームオリジナルのレースが予選・準決勝・決勝と3戦ある。

 NRAファイナルはすべての距離のレースが用意されており、『育成シナリオで一番多く走った距離』のレースに自動的に出場することになる。


 この3連戦ですべて1着にならないとベストエンディングは見れない(育成シナリオをクリアすれば一応ノーマルエンドは見れる)。


 育成中に何度も長距離レースに出走すればファイナルも長距離になるので、ベストエンドを見たいのなら自分でファイナルの距離を調整するのは必須。

 さらにこのゲームではレーティングがファンの数で管理されており、グレードの高いレースに出るためにはレースで勝ってファンを増やさないといけない。

 トレーニングばかりしていると、大レースに出場するためのファン数が足りずに苦労することになる。

 手っ取り早くファンを調達しようとグレードの高いレースに出走して惨敗するのはお約束。

「スキルは脚質と距離の関係ないやつを優先して、ここでファンを稼いで……」

 脚質、距離、シナリオ目標、NRA、スキル、ファンを綿密に計算しなければ、ベストエンドは見られない。

 基本無料のアプリゲームとは思えない奥深さがある。


「ヤクシンヤクシンヤクシン!」


 ……まあ、『サクラヤクシンオー』のようにスピードへ極振りするだけでNRAまで勝てるキャラもいるのだが。

「あれ、ぜんぜん勝てない」

 大躍進政策だけでどうにかなるほど甘くはない。

 プレイヤーの育てたキャラ同士で戦うチーム戦や、イベント戦(1998年のジャパンカップなどの名レースを作中キャラで再現した期間限定イベント)で勝てないからだ。

 やはり短距離とはいえスタミナ不足で失速しているのだろうか。

 対人戦だと自分のランクと同じランクのプレイヤーと戦うことになる。

 高レベルになるとスタミナやパワーでスピード極振りキャラは封じ込まれてしまうようだ。

 スピードだけSSにするよりも、全パラメータBのようなバランス型のほうが強い印象がある。

 イベント戦に出てくるヨロコンドルパサーやエアグループがまさにその典型だ。


「エアグループ強すぎ!」


 イベントの主役である(史実のジャパンカップを制した)ヨロコンドルパサーより、出走相手のエアグループのほうが強い(史実では2着。スペリオルウィークが3着)。

 ヨロコンドルパサーに勝ってもエアグループにやられ、エアグループに勝ってもヨロコンドルパサーにやられる。

 体調は基本的にランダムで決まるのだが、絶好調のスペリオルウィークを引いてしまうと最後の直線で差してくるのでタチが悪い。

「どうすればいいのよ」


「エアグループでやればいいんじゃないのか?」


「は?」

「ヨロコンドルパサーを倒すイベントだからヨロコンドルパサーを使うことはできんが、俺のスペリオルウィークは使えてるぞ。そして俺がスペリオルウィークを使うとCPUのスペリオルウィークは消える」

「あ、ヨロコンドルパサー対策をしたエアグループを育てればいいのね!」

「そういうことだ」

 対策を立てる方法はいくらでもある。

 このイベントは出走メンバー、東京レース場、左回り、晴れ、良馬場が固定で、だいたいヨロコンドルパサーが一番人気になる。

 対ヨロコンドルパサーのデバフスキル(特定の脚質のパラメータを下げるなど)と一番人気の能力を下げる『徹底マーク』、そして東京レース場、左回り、晴れ、良馬場が得意になるスキルを積めば絶対に勝てる。

 ただし、


「ああ、バブルガムアローに勝てない!?」


 それで育成シナリオをクリアできればの話だが。


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