オートマタチェスセット【人形焼きと深蒸し煎茶】
リビングメイルはF-0さん、オートマタは朱身つめさん、ゴーレム・ガーゴイル・スケルトンはササッティーノ伯爵さんに描いていただきました。
転載禁止。
「同時に複数の駒動かしたい」
「……だいたいゲーム性が崩壊するタイプのアイデアだな」
自分の手番に2枚以上の駒を動かすのは珍しいアイデアではないが、将棋やチェスのようなシンプルなルールだとまず破綻する。
チェスゲームは一手(1ターン)に1枚しか動けないことが前提になっているからだ。
シンプルなだけにバランス調整が難しい。
「1ターンで同時に動かせる駒は何枚までなのか、そしてその駒はなぜ動けるのか、駒が同時に動けることによるメリットとデメリットはなにか。それをちゃんと考えないとゲームにならんぞ」
「う……」
「強い駒が多いと一瞬で詰むしな」
「じゃあ弱い駒でデッキ組めばいいじゃない」
「極端すぎるだろ」
現在の駒の性能で破綻するのなら、駒を弱くしてしまえばいい。
理屈としては単純だ。
だが『駒の力を50%にすれば、2枚動かせば100%になる』なんて単純なものではない。
2枚同時に動くことで格段に詰みやすくなるはずだからだ。
調整が難しい。
「……ナイト以外の駒は1ターンに1マスしか進めない。これなら同時進行しても成立するかもしれん」
「どういうこと?」
「ルックやビショップ、クイーンのように『進行方向に何マスでも進める駒』は1ターンに1マスしか進めない。ただし場所を指定したら、次のターンでも1マス進めるってことだ」
「?」
「言葉だけだとわかりにくいな」
サイコロの1の目を上にして飛車の上に置く。
そしてもう一つのサイコロも、1の目を上にして将棋盤に置いた。
1
□
□
1←飛車
「なにこれ」
「飛車の目標地点だ。サイコロは駒を区別するための番号。たとえば2つの駒を同時に動かすのなら、サイコロの2を別の駒に乗せて将棋盤に置く」
今度は角の上に2のサイコロを置き、将棋盤にも2のサイコロを置く。
1□□□□2
□□□□□□
□□□□□□
1□2←角
「目標地点を設定した駒は、1ターンに1マスだけそこへ向かって動くことができる。これを『突撃』と呼ぼう」
1□□□□2
□□□□□□
1□□2□□
1□2□□□
※1ターンで飛車と角を同時に1マスだけ動かせる
「ただし途中で止まったり、曲がることはできない」
「ちゃんとデメリットもあるんだ。『チャージは手番を消費せずに動かせる』わけだから、これとは別にポーンとかナイトを動かしてもいいの?」
「ああ」
将棋なら飛車・角・香車の4枚、チェスならルック・ビショップ・クイーンの5枚、そして手番に動かせるそれ以外の駒が1枚。
つまり最大で1ターンに6枚の駒を動かせる。
対戦相手の駒も含めればさらにカオスだ。
これで持ち駒制度があると読むのが大変なので、チェスをベースにしたほうがいいのかもしれない。
「イラストはゴーレムにしよう。術者に命令されたら自動的に行動するタイプのキャラだ」
「自動人形チェスね」
「誰がうまいこと言えと」
オートでチェスのように駒を動かすデジタルゲームが海外を中心に流行している。
オートマタ・チェスというネーミングは悪くない。
「魔法使いの駒は古将棋でいう鼓だ。魔法生物は魔法使いを取られたらチャージできなくなる」
「いいじゃない」
特に複雑なルールではないので、導入しても問題はないだろう。
「よし、じゃあ何かつまみながらイラスト描くか」
「人形チェスなんだから人形焼きでしょ!」
「あいよ」
ホットケーキのタネを金型に流して焼き、あんこを乗せるだけだ。
生クリームはお好みで。
基本は七福神の金型だが、最近はいろんな型がある。
「かわいい」
パチモンやトラえもんなどは子供にも好評だ。
色的にも土で作られた人形っぽい。
どら焼きみたいなものなので、お茶は深蒸し煎茶がいいだろう。
釜炒り茶や玄米茶もオススメだ。
「よし、これでイラストは完成だな」
ポーンはスケルトン、ナイトはガーゴイル、ルックはゴーレム、ビショップはオートマタ、クイーンはスフィンクス。
スケルトン
ガーゴイル
ゴーレム
スフィンクス
オートマタ
オートマタのモチーフは『アニー・オートマタ』のB2。
目隠しではなく戦闘用ゴーグルだ。
外見上は目隠しにしか見えないので、独特の存在感がある。
「問題はゲームとして成立しているかだ」
「チャージしても1マスしか動けないんだから問題ないでしょ」
とりあえず駒を並べて指してみる。
「チャージイン!」
さっそくサイコロを置き、人形を突撃させてきた。
「アホか、こっちは進路がわかってるんだぞ。そこへ突撃するのに何手もかかるんだから、いくらでも対応できる」
「ああー!?」
人形は毎ターン1マス動ける機動力こそあるものの、敵に動きを読まれるという欠点がある。
突撃を避わされたり、先回りして攻められたら弱い。
同時行動で駒を一点に集中させたり、あるいは逆に分散させるなどして工夫しないと、チャージは逆に自分の首を絞めることになる。
「こうやって交差させる手もある」
1□□□
2□□2←ルック
□□□□
□□□1←ビショップ
※お互いの進路に割りこめる
「人形は途中で止まることはできないが、進路上に味方が割り込んできた場合は別だ」
「あ、味方に進路をふさがれたら止まれるんだ」
駒を動かす順番は自由なので、どちらがどちらの進路を塞いでくるのかわからない。
これで相手は対応しにくくなる。
「ナイトを使うのもありだな。ナイトのガーゴイルだけは1手で2マス動けるから、人形より足が早い。ガーゴイルで先回りして進路をふさぐこともできる」
「なるほど」
「ちなみに人形ならこういうこともできるぞ」
「え」
サイコロを乗せたオートマタを2マス動かした。
「王手」
「二手指しでしょ!」
「チャージで1マス、自分の手番でさらに1マス動かしただけだ。二手指しじゃない」
「ぐぬぬ!」
『チャージで目標地点に到達した人形でのみ成立する』裏技だ。
さらに、
「チャージ、1・2・3・4・5」
「はあ!?」
同時に5枚の駒へサイコロを置く。
「チャージの指示をできるのは1ターンで1枚だけとは言ってない。どうせ動けるのは次のターンからだしな、一気に駒を動かせたほうが面白いだろ」
「そういうことは先に言いなさいよ!」




