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本編

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アリバイチェスセット【クラッカーとグレープフルーツジュース】

「オリジナルのチェスをデザインしてみまシタ」

「どういうルール?」


一手ワンアクションごとに3時間アワーすぎマス」


「は?」

「こういうことデス」


 アリスが駒を右に90度かたむけた。



挿絵(By みてみん)


 おそらく3時を示しているのだろうが、意味が分からない。

「時間に何の意味があるんだ?」


「これは不在証明アリバイデス。たとえばポーンが9オクロックなら、0オクロックピースではゲットできまセン」


「? えーと、9時にアリバイがあるっていうことは『9時までは生きていた』ってことだから、9時より前の駒では取れないってこと?」

「イエス」

「……ややこしいな」

 『自分よりも過去の時間の駒は無条件で取れる』ということだ。

 時間の経過している駒ほど強くなるわけだが、そんな単純なルールではないだろう。

「一手動かすと3時間経つけど、6時の駒で9時の駒取れる?」

「取れマス」

「時計はいつでも合わせられるのか?」


「ムーブする駒だけ時計をセットできマス」


「取る時に時間を調整できるわけだな」

 0時の駒で18時の駒を取りたいのなら、0時の駒を18時にして取ればいい。


 ようするに『0時の駒で18時の駒を取ったら自動的に18時になる』ということだ。


 『その場から動かずに時間だけを操作する』こともできる。

 事実上のパスに近い一手だが、これでステイルメイトを防ぐこともできるはずだ。

 普通のチェスより引き分けが少なくなるかもしれない。

「問題は時間経過だな。時計が進みすぎるとペナルティがあるんだろ?」


「24(とぅえんてぃーふぉー)になると動けなくなりマス」


「相手に王手されても?」

「動けまセン」

「アリバイの調整が重要になるな」


 たとえ最弱のポーンでも、それが24時の駒だった場合、取った瞬間にその駒は動けなくなる。


 かなり厄介なルールだ。

「午前と午後をどうやって見分けるの?」

「駒をリバースしてくだサイ」

 駒を裏返す。

 表と裏で色が違うらしい。

 これなら見分けられる。

「キャスリングはあるのか?」


「キングとルックが3時間のコストを払えばキャスリングできマス」


「アリバイを入れ替えたほうがよくない?」

「アリバイの入れ替え?」

「変装してアリバイ工作してたみたいなイメージ。キャラの位置と時間を入れ替えるの」

 瑞穂がキングとルックの駒を入れ替えた。



K   R


  ↓


R   K


※アリバイ・キャスリング

キング(K)とルック(R)の位置を完全に入れ替え、キングとルックのアリバイも入れ替わる(ただしキングもルックも+3時間される)



「キャスリングは一度も動かしてないことが条件だぞ。位置はともかくアリバイは0なんだから入れ替わらないだろ」

「別にキャスリングと同じ条件にしなくてもいいでしょ。これはあくまで『アリバイ・キャスリング』。ゲーム中に一回だけキングはルックと入れ替われるの」

「ないすあいであ」

 まとめると『敵に王手されていない状況、そしてキングとルックが3時間以上動ける場合のみ、ゲーム中に一度だけ位置とアリバイを入れ替えられる』。

 緊急回避には便利だ。


「これはリアルタイムで事件が起きてるわけじゃないな。事情聴取をしてアリバイを整理してる感じだ」


「つまり棋譜が事件簿になるってことね」

「いぐざくとりー」

 容疑者を事情聴取してアリバイを整理し、『これから殺されるキング』を誰が殺したのか調査するイメージだ。

「アリバイチェスだと味気ないな。いいタイトルが思いつかん」


「The game is afoot!」


「一般人に伝わらないだろ」

「ぐぬぬ」

 『獲物が現れた』と翻訳されるシャーロック・ホームズのセリフだ。

 シェイクスピアの『ヘンリー五世』の引用である。

 ちなみに映画やドラマなどでは『The game is on』になることも多い。


「『警視庁24時』でいいんじゃないの」


「それだ」

 ゲームの内容を端的に表現している。

 権利的に問題がありそうな場合は『歌舞伎町24時』のような感じで、微妙にタイトルを変えることになるだろうが……。

 舞台は現代。

 以前使った殺人鬼やアイドル、一般人の駒にした。

 今回はボードを横向きにして、プレイヤーは別々の駒を使う。


 駒の向きで時間を管理するため、同じイラストを使うと敵味方の区別ができないからだ。


挿絵(By みてみん)


「とりあえず何か食いながら指してみるか」

「じゃあクラッカーとグレープフルーツジュースね!」

「なんだその組み合わせ」


「『夕刻のモリアーティ』に出てきたのよ」


 モリアーティ教授がモデルのアニメらしい。

 グレープフルーツのマーマレードと、グレープフルーツのジュースがキーアイテムとして登場するそうだ。

 ネタバレになりそうなので詳しいことは聞かないことにする。

「んー、すっぱい!」

「さわーぐれーぷふるーつ」

 マーマレードだけでも酸っぱいのに、さらにジュースが加わると強烈だ。

 塩気のあるクラッカーも、いい感じにグレープフルーツの甘さを引き立てる。

 酸っぱいもの好きにはたまらない。

「じゃあ始めるか」


「The game is on!」


 やはり基本はポーンだ。

 どんどんポーンを前に進めていく。


「……取れるけど取りたくない」


 取れば必ず3時間経過。

 場合によっては即座に動けなくなる。

 重要度の低い駒で取るか、あるいはスルーするか。

 しかしポーンだからといってスルーしているとクイーンに成ってしまうし、本陣に踏み込まれてから取ったら一気に時間を消費してしまう。

 もどかしい。

「絡め手で行くか」

「え」

 キングを前に出す。


「あ、キャスリング!?」


「これがチェスだ」

 チェスには持ち駒制度が存在しないため、相手のキングを取るためには自分のキングも攻めに参加しないといけない。

 アリバイ・キャスリングするとキングがルックと入れ替わるから厄介だ。

 キング相手なら大丈夫だろうと思っていると、いきなりルックに刺されて死ぬ。


「チェック」


「させないわよ」

「チェック」

「え」

「チェック」

「あああ!?」

 とにかく王手しまくってキングを動かし、あるいは時間を進めた駒をキングに取らせ、24時にして行動不能にする。


 いかに相手のキングを8手動かすか。


 それが重要だ。

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