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【コミカライズ掲載中】電気代払えませんが非電源(アナログ)ゲームカフェなので問題ありません  作者: 東方不敗@ボードゲーム発売中
本編

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見敵必殺将棋セット【ジャムとジャワ】

リビングメイルはF-0さん、オートマタは朱身つめさん、その他のモンスターはササッティーノ伯爵さんに描いていただきました。

転載禁止。


「ねこー、ねこー」


「きしゃー!」

「……嫌がってるだろうが」

 腹が減った時や寒い時は自分から来るくせに、こっちが呼んでも見向きもしない生き物。

 それが猫である。

 もみくちゃにされるのを嫌い、狭い隙間に潜り込んでしまった。

「ほれみろ」


「うー、猫もかわいがれないカフェに何の価値があるのよ」


「お茶を飲め」

 いちごジャムとジャワティーを出す。

「う、濃い」

「ロシアンティーだからな。薄めてジャムを舐めながら飲むのが作法だ」

「『吾輩は猫である』みたい」

 主人公の珍野苦沙弥ちんのくしゃみ先生は異常にジャム好きで、ずっとジャムを舐めているのだ。



「近頃はどうです、少しは胃の加減がいいんですか」

「いいか悪いかとんと分りません、いくら甘木さんにかかったって、あんなにジャムばかりなめては胃病の直る訳がないと思います」

「そんなにジャムをなめるんですか、まるで子供のようですね」

「ジャムばかりじゃないんで、この頃は胃病の薬だとか云って大根おろしを無闇になめますので……」

「驚ろいたな」

「何でも大根おろしの中にはジヤスターゼがあるとかいう話を新聞で読んでからです」

「なるほどそれでジャムの損害をつぐなおうという趣向ですな。なかなか考えていらあ、ハハハハ」

「この間などは赤ん坊にまでなめさせまして……」

「ジャムをですか」

「いいえ、大根おろしを……」



 ロシアンティーはかなり濃く淹れて、サモワールという紅茶用の湯沸かし器で薄め、ジャムを舐めながら飲む。

 いちごジャムはうちの特製で、ゼリーやヨーグルトのように単体でも食べられる。

 濃厚なジャワティーと合わせればなおうまい。

 ちんくしゃ先生がジャムを舐める理由がよくわかるだろう。


 もちろん大根おろしはない。


「そんなに猫をかわいがりたいなら魔法の言葉を教えてやろう」

「魔法?」


「てゅーる」


「にゃー!」

「わっ!?」

 ねこまっしぐら。

 CMなみのスピードで突っ込んできた。

 やはりてゅーるの威力はすさまじい。

 鰹節や缶詰でも駆け寄ってくるものの、てゅーるに対する反応はレベルが違う。

 なにがここまで猫を引き付けるのか。

 夢中になって食べている。

「これをゲームにするのも面白いぞ」

「は?」


「『取る一手将棋』っていう有名な変則将棋があってな。『取れる駒がある場合、絶対に取らないといけない』」


「取れる駒が2つある場合はどうなるの?」

「どちらを取るか選択できる」

 動かさねばならない駒をどの位置に動かすかで戦況が変わるわけだ。


「ただ玉だけは例外だ。王手された時や、ヒモのついてる駒は取らなくていい。ゲーム性が崩壊するからな」


「おもしろそう」

 早速指してみる。

「イラストは魔法生物系にするか」



挿絵(By みてみん)

スライム


挿絵(By みてみん)

スケルトン


挿絵(By みてみん)

ゴースト


挿絵(By みてみん)

ガーゴイル


挿絵(By みてみん)

ゴーレム


挿絵(By みてみん)

リビングメイル


挿絵(By みてみん)

スフィンクス


挿絵(By みてみん)

オートマタ



「『視界内にいる敵を倒せ』って命令されてるから、倒してはいけない状況でも敵を倒しに行ってしまうわけだな」


見敵必殺サーチアンドデストロイ!」


 まさしく魔法生物まっしぐら。

 安易に戦場へ無人兵器を投入したらこうなるというゲームだ。

 敵と味方を完全に見分けることができるだけマシかもしれない。

 ……まあ、ここに一般の兵士が混じったら同士討ちになるだろうが。

「あ、これ角道開けるのも飛車先を突くのもダメだわ」

「さすがにそれぐらいはわかるみたいだな」


 角道を開けると相手の歩を取らないといけなくなり、角が敵陣に突っ込んで死ぬ。


 飛車先の歩を突いた場合、飛車の前に歩を打たれるとそれを取らねばならず、後ろに下がれず死ぬ。



挿絵(By みてみん)

簡略図(わかりやすいように普通の将棋盤で説明)


※相手がこちらの歩を取る→飛車で相手の歩を取る→相手が飛車の前に歩を打つ→その歩を取る(後ろに下がれない)→金に飛車を取られる

 飛車で端歩を取ることもできるが、それでも香車に飛車を取られる



「これを応用するとこういうことになる」

 7六歩と進めた。



挿絵(By みてみん)



「あ」

 瑞穂の角が死んだ。

 この歩は取れるので、瑞穂は必ず同歩と取らなければならない。

 すると角道が開き、瑞穂の角は敵陣に突っ込んで死ぬ。

 序盤は角をいかに取られないようにするかが重要だ。


「……機動力のある駒は取られやすいってことね」


「そうなるな」

「ならこれでどう?」

「お」

 俺から奪った駒を打ってきた。

 普通の将棋なら詰む形だ。

 しかし、

「じゃあ、ここに持ち駒を」

「あ」

 持ち駒を打って瑞穂の駒を誘い出す。


 こちらに駒の動きをコントロールされてしまうので、普通の将棋と同じパターンでは詰まないのだ。


 瑞穂の攻めを潰し、逆に反撃に転じる。

 満を持して敵陣に飛車を進めた。

 ただし、


「え、不成?」


「このゲームでは成ると不利になるからな」

 うかつに成ると移動範囲が広がり、任意の場所に誘導されやすくなる。

 そして、

「王手」

「……あ」

 反射的に俺の駒を取った。

 このゲーム特有の悪癖だ。

 取れる駒でも、王手をされた場合は取らなくていい。


 だが今まで取れる駒は全部取ってきたので、反射的に取ってしまうのだ。


 これで準備完了。

「ここでこう打つ」

「え、なにその手」

「時間稼ぎ」

 瑞穂の駒の前に持ち駒を打つ。

 これで俺の駒が縦に3つ並んだ。

「ああ、攻められても玉を逃がせないじゃない!」



 ←ここに持ち駒を打つと、相手は3つの駒を取らないといけなくなる



 瑞穂が強制的に駒を取らされている間、俺は自由に動けるという手筋だ。

「……参りました」

「まあ、初めてにしては健闘した方だな。次は本気で行くぞ」

「……嫌な予感しかしないんだけど」

「それはお前次第だ。罠に気づけば助かる。気づかなければ死ぬ」

 端歩を突く。

 すると瑞穂も端歩を突いた。


挿絵(By みてみん)


「詰んだぞ」

「え」

「ここで俺が歩を突いたら、お前はそれを取らないといけない。俺が香車で歩を取り返し、お前も香車で取り返す。ここで飛車を端に振る」


挿絵(By みてみん)


「するとお前は飛車を取って香車が金に成り、と金で桂馬も取る。そしてここで俺が銀を成金の上に動かしたら、お前はずっと歩を取り続けることになる」

「ぎゃー!?」



歩歩歩歩歩歩歩歩

 角     銀

香桂銀金王金 ▽←成金


※相手はずっと歩を取り続けることになる



「お前が歩や金銀桂香を取らされ続ける間、逆サイドの角で攻めるわけだな」

「……本陣を攻められても歩を取り続けることしかできないって地獄でしょ。完全に先手必勝じゃない」

「必勝じゃない。お前が歩を突いたからだ」

 うかつに歩を突くと一手で負けが確定する。

 変則将棋だからこそ起こる恐ろしい罠だ。


「あれ? でも飛車を取る時に金に成らなきゃいいんじゃないの?」


挿絵(By みてみん)

この場面で香車が金に成らない


「その時は香車の前に歩を打つ」

「? それ取らせて意味あるの?」

「おおありだ。将棋のルールを忘れたか。『動けない駒を作ってはならない』。歩や香車は盤の端に行ってしまうと動けなくなるだろ。つまり絶対に成らないといけないんだ」

「あ」



端端端

歩桂香


※歩も桂馬も香車もこれ以上前に進めない(動けない)

『動けない駒を作ってはならない』ので、こういう駒は必ず成らないといけない



「な、なら次は逆サイドから攻めるまでよ!」


「ちなみに逆サイドでも同じことができるぞ」


「ぎゃー!?」


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