将棋パズルセット【ブリオッシュとハワイコナ】
投稿するのを忘れてた将棋パズル回です。
全面的に改稿を進めています。
第一話には擬人化した古将棋の駒のイラストを加え、設定も少し変更しました。
パチ パチ
アリスが黙々と碁石を並べていた。
チェス盤に。
「なにしてるの?」
「『ナイトツアー』ですヨー」
「夜のツアー?」
「チェスのナイトだろ。たぶん『桂馬拾い』だな」
「なにそれ」
「チェス盤は8×8マス。ナイトを動かして64手ですべてのマスを踏むゲームだ」
「もちろん同じマスをスタンプしてはいけまセン」
「……なんか途中でわけがわからなくなりそうね」
碁石が置かれているのはナイトが踏んだマスだ。
碁石は数が多いので、こういう時は頼りになる。
パチ パチ
アリスはほとんど迷う様子もなく、ナイトを完走させる。
そしてピラッと何かの数字が書かれた紙を見た。
「ぬ、ダメでした」
「え、成功したんじゃないの?」
「オイラーには勝てまセン」
01 48 31 50 33 16 63 18
30 51 46 03 62 19 14 35
47 02 49 32 15 34 17 64
52 29 04 45 20 61 36 13
05 44 25 56 09 40 21 60
28 53 08 41 24 57 12 37
43 06 55 26 39 10 59 22
54 27 42 07 58 23 38 11
「? この順番通りに行かないとダメってことか?」
「イエス」
「何の数字?」
「どの縦列も横列も合計が260になりマス」
「……それはもはやナイトツアーじゃないだろ」
「っていうか、ナイトツアーでよくここまでできたわね」
数学者は頭がおかしい。
ちなみに9×9マスの将棋でも、桂馬(八方桂)で同じゲームが可能である。
「将棋とかチェスのパズルって他にもあるの?」
「普通に駒を並べてから、市松模様になるように駒を動かすっていうのもあったな」
「ほわい?」
「チェス盤みたいに駒の置いてあるマスと、空白のマスが交互になるようにするんだ」
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「上下対称なわけだから、考えるのは盤の半分だけでいい」
歩歩歩歩歩歩歩歩歩
角 飛
香桂銀金王金銀桂香
初期配置
「こういうこと?」
瑞穂がすっすっと駒を動かしていく。
歩 歩
歩 歩 歩 歩
桂 歩 歩 歩 桂
角 金 金 飛
香 銀 王 銀 香
「惜しい。逆だ。それだと両端の歩が前に出てるから上下対称にならない」
「あ、そっか。じゃあこうね」
角 歩
歩 歩 歩 歩 歩
歩 歩 歩 飛
香 銀 王 銀 香
桂 金 金 桂
「……あれ?」
「角がおかしいデスね」
「筋違いに動かさないといけないってこと?」
「そういうことだ」
まず角を敵陣に突っ込ませて馬に成り、真ん中に戻って筋違いに移動する。
それが正解だ。
馬 歩
歩 歩 歩 歩 歩
歩 歩 歩 飛
香 銀 王 銀 香
桂 金 金 桂
解答例
「じゃあ、ここの駒を角と入れ替えよう」
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□■□■□■□■□
■□■□■□■□■
□■□■角■□■□
■□■□■□■□■
□■□■□■□■□
■□■□■□■□■
「この市松模様に並んだ駒を、角で全部取ってみろ。もちろん一筆書きだ」
「ええ!?」
「まあ、これはそれほど難しくないんだけどな」
「あ、ぐるっと回ればいいだけなんだ」
■□■□■□■□■
□■□■□■□■□
■□■5■7■□■
□■4■6■8■□
■□■3■9■□■
□■2■角■一■□
■□■1■二■□■
九■七■五■三■□
■八■六■四■□■
アラビア数字の1から順番に移動し、漢数字へ移動、あとは□マスを順番に移動すればいいだけ
「楽勝楽勝」
「碁にパズルはナイのデスか?」
「『碁石拾い』っていうパズルはあるけど、ルール的に囲碁っていうか将棋っぽいのよね」
変な形に駒を並べる。
歩歩歩歩歩
歩 歩
歩 歩
歩歩歩歩
飛
「同じマスを通っちゃ行けないんだけど、ジャンプする場合は別なの」
「ジャンプ?」
「こういうこと」
歩歩歩歩歩
歩 歩
歩←←飛
歩歩歩□
□
※□は飛車が通過したマス
歩←←←飛 一度通過したマスなら飛び越えることができる
□ □
□ □
□□□□
□
四987三
一 二
3 2
4561
0
解答例
「なるほど、たしかにこれは碁石拾いっていうより駒拾いだな」
「でしょ?」
「ルックツアー!」
「他に有名な問題だとこれかしら」
飛
歩歩
歩歩歩
歩歩歩歩
「駒が少ないから解きやすいな」
「べりーいーじー」
0
21
637
9548
解答例
「次はエイトクイーンをやりまショー!」
「どういうルール?」
「クイーンがクラッシュしないように、ボードへ8ピース置きマス」
「クラッシュって?」
「つまりこういう風に……」
Q→Q
「クイーンの攻撃範囲内にクイーンを置いてはいけないってことだ」
「でもクイーンって全方向に走れる駒でしょ。8個も置けるの?」
「置けマス」
「解けたら余ってるパンを奢ってやるぞ」
「やった!」
嬉々として問題を解き始めた。
10分後。
「……なんか意味わかんなくなってきた」
「パンはお預けだな」
「ああー!?」
「パンがなければブリオッシュを食べればいいのデス」
「それ死亡フラグでしょ。ギロチンで首切られるわよ」
「っていうか、なんでブリオッシュなんだ? それをいうならケーキだろ」
「マリー・アントワネットのルーツはブリオッシュなのデス」
「へー」
「まあ、玉子やバターを使ってるから、普通のパンより高級な扱いだったのは何となく想像できるが」
とりあえずブリオッシュを用意する。
飲み物はコーヒーだろう。
個人的にはハワイコナがいい。
モカもオススメだ。
中煎りにすれば芳醇な香りと一風変わった酸味、コクが味わえる。
ブリオッシュやベーグルのように、副材料(パンを作るのに必要な小麦粉・イースト・水・塩以外の材料)を使ったパンとは相性がいい。
パンがなければブリオッシュとハワイコナ。
それが優雅なティータイムである。
「これ、どうやって解けばいいの?」
「クイーンではなく、ルックとビショップで考えまショー」
「まずはそこからだろうな」
●
●
●
●●●R●●●
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●
●
「ルックは縦と横に走れるわけだから、同じ列には置けない」
「あ、ルックなら1マスずらして置いていけばいいのね」
「そういうことだ。そしてそこにビショップを加える」
● ●
● ●
● ●
B
● ●
● ●
● ●
「安全地帯はここデス」
●□●□●
□●●●□
●●Q●●
□●●●□
●□●□●
□が安全地帯
「この形、どこかで見たことがないか?」
「あ、ナイト!?」
「ピンポン!」
「同じ列に置かない。ナイトが安全地帯。つまり女王のナイトツアーだ。それがわかればだいぶ解きやすくなる」
「なるほど」
□□□□□Q□□
□□□Q□□□□
□□□□□□Q□
Q□□□□□□□
□□□□□□□Q
□Q□□□□□□
□□□□Q□□□
□□Q□□□□□
エイトクイーン解答例
「日本版エイトクイーンだと『利かずの駒並べ』だな。エイトクイーンと同じルールで、将棋盤に40枚の駒を並べる」
「40!?」
「さすがにこれは解説するのも難しいな」
「れっつちゃれんじ」
アリスが黙々と駒を並べていく。
金□香香銀香香□玉
□飛□□□□□□□
歩□歩銀銀銀歩□金
□□□□□□□飛□
金□歩歩歩歩歩□歩
□□□桂□桂□□□
歩□歩□歩□歩□王
桂□□歩□歩□□□
桂□歩角歩角歩□金
解答例
「なにこれすごい」
「まあ、将棋では『次の一手で移動できない場所に駒を動かすのは反則』だけどな」
そもそもすべての駒が同じ向きに並んでいるのもおかしいので、そこは突っ込むだけ野暮なのかもしれないが。
「では問題を解いたのでブリオッシュをぷりーず」
「もうないぞ」
「ブリオッシュがなければケーキを食べればいいのデス!」
「クビにするぞ」