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【コミカライズ掲載中】電気代払えませんが非電源(アナログ)ゲームカフェなので問題ありません  作者: 東方不敗@ボードゲーム発売中
本編

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運命のRPGセット【お好み焼きとフルーツジュース】

テイルズ・オブ・デスティニーは、しゃべる魔剣で天上人(空中都市に住む支配階級)を倒す話です。


参考ゲーム

テイルズ・オブ・デスティニー(リメイク版)

テイルズ・オブ・デスティニー2


『平家にあらずんば人にあらず』


 1132年、平忠盛は『殿上人てんじょうびと』になった。

 武士でありながら、内裏だいりの清涼殿にある『殿上の間』に昇ることが許されたのである。

 平家は年々勢力を増し、都には赤い直垂ひたたれにおかっぱ頭をした『禿かむろ』と呼ばれる秘密警察的な密偵を放ち、平家に批判的な人間を片っ端から摘発していた。

 このような殿上人の圧政に立ち向かうため、源氏は『しゃべる妖刀』を手に反旗を翻す。


 獅子王、童子切安綱、天光丸、膝丸、石切丸、今剣いまのつるぎ岩融いわとおしetc


 源氏由来の名刀は多い。

 だが主人公は頼朝や義経ではなかった。


『テイルズ・オブ・キソ』


「ん、木曽義仲きそよしなかだな」

 頼朝の従兄弟いとこだ。

 同じ源氏ではあるものの、とてつもなく仲が悪い。

 源平合戦ではなく『源源合戦』だと呼ばれるぐらいだ。


 ストーリーは妖刀視点で進み、キャラのレベルや技能は妖刀の所有者に受け継がれるらしい。


 つまり所有者がどんどん変わっていく(死ぬ)ということだ。

 敵であれば同じ源氏でも容赦なく殺す。


『この人でなしめ!』

『お前はいつから平家になったのだ?』


 『平家にあらずんば人にあらず』を皮肉ったセリフだ。

 こうして義平(頼朝の兄)は『石切丸』で義仲の父・義賢よしかたを殺し、血で血を洗う『源源合戦』が始まる。

 ……まあ、当面の敵は平家なので、義仲は息子を頼朝の娘に婿入りさせて休戦しているのだが。

 少しでも隙を見せたらやられる。

「源氏こわい」

「鎌倉武士のルーツだからな」


 元寇で日本に襲来してきたモンゴル人が裸足で逃げ出すレベル。


 それが鎌倉武士であり、坂東ばんどう武者だ。

 この時代に武士道などない。


『その後、石切丸たちの行方ゆくえを知るものは誰もいなかった……』


 ……それだけに敵が強い。

 戦闘システムは1ライン制のアクションRPG。

 敵も味方もお互いをすり抜けて移動できる。

 ただし防御しているキャラをすり抜けることはできない。



味――味―敵―敵――


1つのライン上で戦う

敵も味方も目の前にいるキャラをすり抜ける(横を通り抜ける?)ことができる



―――防←敵――


防御している相手のキャラをすり抜けて進むことはできない



 敵を殴って足を止めるか、防御して敵の進路を塞がないと、横を通り抜けられて後衛の陰陽師が殴られる。

 1に防御、2に防御、3・4が魔法で、5が物理攻撃。

 比率的にはそれぐらいだろう。

 なぜ物理攻撃の重要度が低いかというと『精神ゲージ』があるからだ。

 精神ゲージといってもMPではない。

 集中力である。


 攻撃をするたびにこれが減っていき、どんどん命中率や回避率が下がっていく。


 なので無駄に敵を攻撃してゲージを下げてしまうと、まったく敵に攻撃が当たらず、回避(アクションRPGではあるが、攻撃が当たっても回避率が高ければ避わしたと判定されてダメージを受けない)もできなくなる。

 おまけに物理攻撃では敵を崩す(防御を崩す、宙に浮かせる)のが難しい。


 前衛がガードで時間を稼いでいる間に陰陽師が呪文を詠唱し、魔法で敵を崩してから物理攻撃を繋げ、コンボを成立させるのがセオリーだ。


 精神ゲージは時間経過や敵の攻撃を防御することで回復する。

 だからガードが重要なのだ。

「前衛がずっとガードして魔法で攻撃するだけの簡単なお仕事だな」

「甘く見てると地獄を見るわよ」

 はたしてその地獄はすぐにやってきた。


「やばい、押し込まれる!?」


 平家の猛攻で前衛は徐々に画面端へ押されていく。

 すると味方が密集することになり、



味味味味敵―――



 敵の陰陽師が範囲魔法を使ってきたら一瞬で全滅する。

 仮に陰陽師がいなくても、最終的には画面端で味方のキャラが重なってしまう。

 そうなったら終わりだ。

 画面端に4人が固まることになり、一発の攻撃で一度に4人が攻撃を食らってしまう。



味敵――――――

キャラが重なっているだけでここに4人おり、一撃で4人とも攻撃されてしまう



 敵の後ろに回り込めば逆方向へ逃げることはできる。

 しかしその場に取り残された味方は全滅してしまうため、立て直すのは容易ではない。


「いわゆる『押し相撲』系の戦闘システムね」


「押し出されることはないけどな」

 しかし土俵際(画面端)に追い込まれたら死ぬことに変わりない。

 敵の攻撃は確実にガード。

 防御不能攻撃はジャンプかバックステップで避わす。

 敵の魔法攻撃はガードボタン+↓でダメージを軽減できる。

 敵の精神ゲージが高いと攻撃を回避されるので、基本は後の先。


 相手に先に手を出させ、攻撃で精神ゲージ(回避)が下がったところを反撃して画面端に押し込む。


 反撃しすぎるとこちらの精神ゲージも下がってしまうので、手数を少なくするために特技や奥義だけを使いがちだが、通常攻撃もちゃんと当てないといけない。

 技術(技や術)を発動させるために必要な『技術ゲージ』は、敵に攻撃を当てないとなかなか回復しないからだ。

 それもガードされてはいけない。


 攻撃がクリーンヒットして始めて技術ゲージが1回復する(MAXは100)。


 通常攻撃をチクチク当て続けなければ、技術ゲージが枯渇するので火力が足りない。

 このゲームはザコも強いので、ザコ戦でも常に技術ゲージを回復していないと苦しくなる。

 攻撃を当てれば空中コンボを決めやすいのだが、そのせいで空を飛ぶ敵が多い。


 空を飛ぶ敵は防御で前進を止められないので、対処に手間取ると後衛が殴られる。


 最悪の場合、敵味方が入り乱れるドロドロの乱戦になってしまう。

 こうなると戦況が把握できなくなり、あっという間に体力が削られる。

 テイルズ・オブ・ゲンペイと違って回復魔法は使えるし、回復アイテムもゲンペイより安値で買えるが、乱発しているとシナリオの途中で力尽きるだろう。

 1ラインなので、後ろにいる敵の陰陽師を殴るのも地味に難しい。

 詠唱を止められなければ魔法を食らって死ぬ。

 おまけにハサミ撃ちがかなり多い。



――敵敵――味味――敵敵――



 体感では5回に1回はハサミ撃ちになり、敵に挟まれた状態で戦闘が始まる。

 一般のRPGにもバックアタックはあれど、実際にそれを食らう機会は少ない。

 だがこのゲームでは当たり前のようにハサミ撃ちを食らう。

 設定ミスではないかというぐらい挟まれる。

 ノーダメージで切り抜けるのは無理だ。

 どんどん体力と技術ゲージが削られていく。

 難易度がおかしい。


「そこで料理よ!」


「……このゲームでも料理がないと死ぬな」

 ただ料理システムがちょっと変わっている。

 プレイヤーは自発的に料理を食べて回復できない。


 料理にはそれぞれ条件が設定されており、『弁当箱』に装備している料理の条件を満たした時のみ食べることができる。


 一番多いのは戦闘中か戦闘終了後に『体力が○○%以下になる』という条件だ。

 『おにぎり』は戦闘終了後にパーティーのHPの合計が80%以下だとパーティー全員を10%回復、『いなり寿司』は戦闘終了後に誰かのHPが65%以下だとパーティー全員を10~25%回復。

 睡眠や麻痺などの状態異常時に発動する料理や、特定の属性の攻撃を食らった時に発動する料理もある。

 たとえば『お好み焼き』は火属性、『すき焼き』は水属性のダメージを軽減してくれる。

 ……原理がわからない。

 便利なのはどんぶり系だろう。


 誰か一人でも戦闘不能になると即座に復活させてくれる。


 牛丼、親子丼、海鮮丼にはこれから何度もお世話になるはずだ。

 まあ、戦闘中に料理が効果を発揮するのは1種類につき1度だけだし、ボス戦のために温存しないといけないので無駄遣いはできない。


「お好み焼きとフルーツジュースね」


「自分で焼けよ」

「えー」

 お好み焼きはシンプルに豚玉。

 明らかに源平時代にはないメニューだが、細かいことを気にしてはいけない。

 ちなみにフルーツジュースは攻撃力をアップする料理だ。

 主な材料はキウイ、イチゴ、レモン。

 キウイのツブツブ食感がクセになる。

 牛乳やヨーグルトはお好みで。


『コガ! コガ! コガ! コガ!』


「……どこぞのインド人みたいになってきたな」

「別の技でコンボ繋げなさいよ」

「これが一番確実なんだよ」

 複数の技や術でコンボを繋げたほうがダメージが大きくなったり、コンボボーナスとしてアイテムの入手率が上がる。

 特に敵から入手できる装備品は店で買える物と違って特殊な能力、たとえば『命中率アップ』や『技術ゲージ回復率アップ』などがついており、それを合成することで店で買った装備品にも能力を継承することができる。

 だからコンボを繋げて敵を倒すのが重要になるわけだが、敵が強いとそんな余裕はない。


 『古賀破斬』は敵を浮かせてコンボを繋げやすく、しかも空中で発動できる便利な技だ。


 古賀破斬を連打しているだけで敵を一定時間、空中に拘束できる。

 確実に浮かせることができるというのは結構重要だ。

 味方が術を使う時間を稼げる。

 困った時は古賀破斬。

 困っていなくても古賀破斬。

 シリーズを代表する技なだけあって使い勝手がいい。


「よし、ここで魔法だ!」


 Rボタンで魔法を発動する。

 アクションRPGなのでプレイヤーが操作できるのは1キャラだけだが、L・Rボタンには他のキャラの技術を設定できるのだ。

 設定するのは魔法が多い。

 戦闘開始直後にLRボタンを押して敵の弱点属性の魔法を発動するのはお約束。

 弱点はこのゲームの重要な要素で、『最初の一撃がコンボの属性になる』というシステムだ。


 つまりコンボの最初の一撃が水属性なら、コンボが繋がっている間の攻撃はすべて水属性になる。


 このシステムを利用すれば、火耐性のある敵にも火属性の攻撃でダメージを与えられるわけだ。

 妖刀ごとに属性が決まっているので、属性の調整はかなり重要になる。

 こうして的確に弱点を突きつつボスを倒すものの、


『逆賊・義仲を討て!』


 再び勃発する源源合戦。

 討ち手はもちろん義経だ。

 とにかく強い。

 あっという間に体力を削られる。

 回復魔法が間に合わないのでアイテムで回復しようとしたところ、


『道具なぞ使ってんじゃねえ!』


「はあ!?」

 即座に攻撃されて死ぬ。

「有名な『アイテムカウンター』よ」

「なんだ、そのめちゃくちゃなカウンターは……」


 カウンター発動中は無敵なので、術のように殴ってカウンターを止めることはできない。


 だがアイテムを封じられただけなら勝てない相手ではなかった。

 しかし無事に義経を撃退しても、まだ範頼(義経の異母兄)がいる。

 義経や義仲に比べて地味ではあれど、範頼もまた源氏を代表する武将だ。

 結局、頼朝の追討軍を撃退することはできずに木曽義仲は討死。

 義仲のもう一人の息子・駒若丸は妖刀を受け継ぎ、壇ノ浦の戦いに参戦する。

 そこへ立ちふさがるは因縁のカウンターパンチャー義経。


『回復術だと? 貧弱すぎるわ!』


「回復カウンター!?」

 アイテムカウンターだけだと思って油断していた。

 回復魔法発動前にカウンターを食らって即死する。

 だが攻撃魔法はまだ使えるので、やられる前にやろうと総攻撃を仕掛けたものの、


『術に頼るか、ザコどもが!』


 とうとう攻撃魔法カウンターまで発動するようになった。

「……これはひどい」

 術に頼るかといいながら、術でカウンターを仕掛けてくる理不尽。

 しかもこのカウンター、魔法攻撃のくせに呪文詠唱なしで飛んでくる。

 カウンターのせいで料理と装備品の能力『一定時間ごとにHP回復』ぐらいしか回復方法がない。

 ……絶望的に回復量が足りない。

 義経の攻撃をバックステップやジャンプ、前進防御でさばきながら戦う必要がある。


 当然オートで動く味方にそんな器用な真似ができるわけがなく、途中から一対一の決闘になってしまった。


 凶悪すぎる。

 長期戦になるとどうしても一発もらってしまい、途中で力尽きてしまう。

 カウンターさえなければ勝てない相手ではないのだが……。

「ん? カウンター発動中にカウンター発動条件を満たしたらどうなるんだ?」


「カウンター発動中なら重複してカウンターは発動しないわよ」


「つまりカウンターの最中に魔法を使っても魔法カウンターは来ないのか」

 だが魔法を使うには呪文詠唱しないといけない。

 『詠唱速度上昇』があっても、レベルの高い魔法は間に合わないだろう。

 それに魔法を使えたとしても、最初のカウンターは食らってしまうのだ。


「いや、詠唱キャンセルすればいいのか?」


 呪文詠唱は途中でキャンセルできる。

 つまりわざと魔法を使って魔法カウンターを誘い、即座に詠唱をキャンセルしてダッシュでカウンターを回避。

 そして同時にLRボタンを押して、義経のカウンター発動中に魔法を発動。

 少しでもタイミングがずれるとカウンターが飛んでくるだろう。

「……難しそうだな」

「協力プレイする?」

「は?」


「基本的に1人用RPGだけど、同時プレイもできるのよ」


「マジか」

 後衛で魔法を使ってもらうだけなら、永久コンボで瞬殺とかいうこともないだろう。

 今のまま戦い続けると数時間かかりそうなので、素直に協力プレイする。

 最適なタイミングで魔法が飛んでくるため、序盤はガリガリ義経の体力を削れた。


『回復術だと? 貧弱すぎるわ!』


 問題はここからだ。

 最初に回復カウンターが、そして次に魔法カウンターも発動するようになる。

 カウンター合戦の始まりだ。


『術に頼るか、ザコどもが!』


「ぐ、ミスった!?」

 しかし今まで詠唱キャンセルをしたことがなかったし、狙って魔法を避わしたこともなかったので操作に戸惑う。

 魔法は目標にしたキャラのいる位置に降ってくる。

 後ろに下がりすぎると義経に魔法を当ててもコンボを繋げられない。

 ちゃんとタイミングを見計らって魔法を避わし、即座に前に出る必要がある。


『術に頼るか、ザコどもが!』


「よし、避わした!」

 何度か試行錯誤を重ね、ようやく完璧なタイミングでカウンターを避わした。

「ん?」

 ところがいつまで経っても味方から魔法が飛んでこない。

 不審に思って隣を見ると、瑞穂がお好み焼きを食べていた。

「……なにしてる?」


「空腹度が60%以下になったのよ」


「飯なぞ食ってんじゃねえ!」


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