捕物帖セット【おでんと甘酒】
「幕末のシナリオないの?」
「江戸から戦後までまんべんなく用意してあります」
江戸(東京)の地図を広げた。
このゲームでは遊ぶシナリオの年代によって地図が4種類に分かれているらしい。
1江戸時代、2明治~大正、3関東大震災~昭和初期、4東京大空襲~戦後だ。
近代化、震災、人災によって東京の町並みが大きく変わっているのがよくわかる。
江戸時代から残っているのは、わずかな老舗と寺社仏閣、江戸城(皇居)だけだ。
歴史を感じる。
「昨日の夜、神田の商家に浪人が押しかけてきたそうです。『これを形代として金300両を貸してくれ』。風呂敷から現れたのは血に染みた油紙。主人がおそるおそる油紙を開くと、中から異人の首が出てきたそうです」
「外国人の首!?」
「鮮やかな赤毛が印象的ですね。生首からは血が滴っており、恐怖にかられた主人は素直にお金を払ったそうです」
「押し借りか」
「幕末の作品でよく出てくるやつね」
「はい。1860年の『桜田門外の変』で大老・井伊直弼が暗殺されました。これ以降、江戸や京都では不逞浪人が商家に押し入って『攘夷のため』『討幕のため』と刀で脅し、御用金をせしめる事件が多発したとされています」
代表的なのが井伊直弼を暗殺した水戸や薩摩の浪人たちだ。
治安維持部隊である新撰組すら押し借りや辻斬りをやっているのだからタチが悪い。
実際に攘夷や討幕のために使われた御用金は皆無に近いだろう。
「首はどうしたの?」
「もちろん相手に返しました。置いていかれても困りますから」
「……くそ。首を調べることができない上に、たぶん他の店でも同じことしてるぞ」
「そうですね。他の店からも被害届が出てます。被害総額900両。あくまで訴えが来ているものだけですが」
「他にも被害者がいるかもしれないわけね」
お上に訴えたら復讐される可能性があるので、口を閉ざしている商家があるかもしれない。
江戸で大金といえば千両箱。
被害総額900両は少ないので、まだまだ被害者はいるはずだ。
「首は?」
「もちろん浪人が持って帰りました」
「じゃあ店で『検視』。髪の毛を探します」
「赤毛が何本か落ちてますね」
「赤毛を調べます」
「根本から赤いです」
「染めてないみたいね」
「でもつい先日まで鎖国してたんだから、外国人がその辺を歩いてるわけがない。公使館に問い合わせれば素性もわかるはず」
「これが公使館の位置です」
アメリカは麻布の善福寺、フランスは三田の済海寺、オランダは伊皿子の長応寺、プロシャ(ドイツ)は赤羽の接遇所、ロシアは三田の大中寺、イギリスは高輪の東禅寺。
1853年の『黒船来航』前後から、欧米諸国の船は日本近海に姿を現していた。
井伊直弼ら幕府の首脳陣は諸外国の軍事力を恐れ、次々に不平等条約を結んでしまう。
だからつい最近まで鎖国していたのに、これだけの公使館が軒を連ねているのだ。
異人の手がかりがないので、手当たり次第に問い合わせていくしかない。
「どの公使館も心当たりがありませんね。アメリカ総領事ハリスの通訳ヒュースケンは薩摩の浪人に殺されてますし、イギリスのオールコックも襲撃されていますから。人の出入りや警備には細心の注意が払われています」
「賠償金払わされるからそうなるわな」
幕末のエピソードを集めた『幕末百話』にも、
『むやみに異人と見ると斬りたがったものだが、その頃の話に「異人1名斬ると幕府がグラグラと揺くぞ、100人も斬ったら潰れるじゃろう」といったそうな』
とある。
ヒュースケン暗殺やオールコック襲撃での賠償金はいずれも1万ドル。
異人を100人も殺されたら幕府の財政は破綻していただろう。
ある意味、異人殺しこそが最大の御用金稼ぎともいえる。
「公使館じゃないなら横浜?」
「横浜に問い合わせるのは時間がかかりますね」
「連絡が来るまで情報収集しよう」
四方に手下を派遣して聞き込み。
どんなことでもいい、とにかく情報が必要だ。
「駕籠で吉原へ遊びに行く人たちが浪人に襲われているそうです。『拙者は勤王の志士である。討幕の軍資金を出せ!』」
「何人も襲われてるんでしょ。なんで今まで誰も訴えなかったの?」
「文字通り身ぐるみ剥がされました。駕籠を使えるのはお金持ちですから、ふんどし一丁で放り出されたとは言いにくかったようですね。この情報をくれたのも被害者ではなく、現場に居合わせた駕籠かきです。口止めされているので被害者の名前は伏せています」
「今度は『蔵前駕籠』か」
不逞浪人をモチーフにした落語だ。
駕籠を襲撃する浪人のせいで吉原へ遊びに行く人間が減り、『今ならモテる』と考えた旦那が吉原へ遊びに行く。
遊びに行く人間が少ないのだから当然旦那は浪人に襲われてしまう。
御用金を出せと浪人が駕籠をめくると、そこにはふんどし一丁の旦那が一人。
『もうすんだか』
あらかじめ裸になっておき、すでに強盗に襲われたあとに見せかけたという落ちだ。
ただし落語では駕籠を襲撃するのは徳川の浪人である。
明治時代に作られた落語なので、明治政府(=薩長)に忖度して設定を微妙に変えているのだろう。
「でも吉原って神田じゃないですよね?」
「はい。襲われたのは神田の人間ですが、襲撃場所は蔵前です」
「思いっきり縄張りの外じゃない」
「オトリ案件だな」
縄張りの外では捜査できないので、オトリで襲撃犯を誘い出して現行犯逮捕するしかない。
「けど駕籠ってお金かかるんでしょ」
「そうですね。勘当箱と呼ばれてるぐらいですから」
「感動?」
「親子の縁を切るほうの勘当です」
「駕籠で吉原に遊びに行くのはそれぐらい親不孝だったんだよ」
「へー」
現代でたとえるなら、女遊びをするために飛行機で歌舞伎町に行くようなものだ。
かなり頭のおかしい金の使い方なのである。
「浪人がオトリに引っかからない場合、何度も神田と吉原を駕籠で往復することになる。引き運が悪いと破産するぞ」
「計画通りに襲われたとしても、戦うのは難しいわね。素早く駕籠から出ないと黒ヒゲ危機一髪だし、駕籠は狭いから2人も乗れないでしょ」
「誰かに駕籠を借りて、俺と手下が駕籠を担いでお前が中に乗るのがベストなんだが……。これだとオトリ『捜査』だからアウトなんだよな」
夜中に吉原周辺をぶらぶらしていて『偶然』襲撃され、現行犯逮捕するのなら問題ない。
偶然で押し通せるからだ。
だが岡っ引きが駕籠を担いで、強盗が駕籠の中を覗きこんだ瞬間、三方向から一斉攻撃して浪人をお縄にするのは偶然ではない。
完全な捜査行為である。
蔵前を縄張りにする親分と喧嘩になるだろう。
やはり他人の縄張りで、その土地の親分よりも早く不逞浪人を捕まえたいのなら、金を払って駕篭に乗るしか選択肢はない。
「駕籠に乗ります」
「札を引いてください。1~3なら成功です」
花札を引く。
5
「吉原に着きました」
「……駕籠で帰ります」
9
「神田に着きました」
「もう1回吉原に行きます!」
12
「くそったれ!」
結局、不逞浪人と遭遇するためだけに全財産が半減してしまった。
「拙者は勤王の志士である。討幕の軍資金を出せ!」
札を引く。
「もうすんだぞ。ただし寛永通宝だがな!」
はした金が不逞浪人に直撃した。
こういう時にも銭投げは重宝する。
駕籠の中では満足に武器も振るえないものの、銭を投げるだけなら命中判定にマイナス修正はない。
「御用だ!」
そして銭投げで相手を1ラウンド無力化してしまえば、その隙に駕籠から出て捕縛できる。
これで浪人のねぐらから御用金も回収され、被害者からお礼金をもらえるだろう。
……出費が多すぎて赤字だが。
「浪人を尋問します。異人の首で押し借りしてたのもお前らか?」
「知らぬ。そもそも900両もせしめたのなら、駕籠など襲う必要はなかろう」
「それもそうね」
勘当駕籠は贅沢な金の使い方ではあるが、300両も持ち歩きはしない。
せいぜい小遣い稼ぎレベルだ。
犯罪のスケールが違う。
どうやら別件らしい。
「でも薩長の浪人なら横の繋がりはあるでしょ?」
「花見に誘われたことはある。だがあやつらは人を斬る本物の攘夷浪士でな、異人のように斬られてはたまらぬので断った。噂によると女をはべらせてどんちゃん騒ぎをしているらしい」
「花見か」
一応、知っている浪人の名前をすべて吐かせておく。
ねぐらまでは知らないようなので、たいして役に立ちそうもないが。
「江戸時代の桜の名所ってどこ?」
「上野と向島と飛鳥山ですね」
「近場から回って行こう」
「桜の木の下が荒らされています」
「……桜の木の下って、だいたい死体が埋まってるわよね?」
「死体を掘り出したのかもしれんし、逆に死体を埋めたのかもしれん。死体じゃなくて御用金を埋めた可能性もある」
「あー、御用金の可能性もあるのね」
花見客をかき分けて桜の木の下を調べてみたが、何もなかった。
……何もないということは、桜の木の下に埋まっていた『何か』が持ち去られたのかもしれない。
果たして埋まっていたのは御用金か、それとも死体か。
謎は深まるばかりだ。
「ここで花見をしていた連中に関する情報は?」
「蹴鞠をしたり、西行法師の歌を詠んでおられましたな」
「……浪人っぽくないわね」
「西行を知識判定」
「平安時代のお坊さんですね」
西行に関する資料を受け取る。
桜好きで有名であり、代表的な句は『願はくは 花の下にて 春死なむ そのきさらぎの 望月の頃』。
失恋によって出家したともいわれている。
江戸時代を代表する伝奇小説『雨月物語』の『白峰』に登場しており、怨霊と化した崇徳上皇と問答を交わすことでも有名。
花見客が蹴鞠をしていたのは、蹴鞠の名人・藤原成通と親しかったからだろう。
『夏安林、春陽花、桃園』と掛け声を上げながら鞠を蹴ると、3匹の猿が現れたと伝えられている。
猿は蹴鞠の神らしい。
「……よくわからんエピソードばっかりだな」
「事件に関係ありそうなエピソードはないの?」
「高野山で修業していた西行は、孤独に耐えられなくなって人骨を集め、死者を生き返らせようとしたそうです」
「死霊術師じゃない!」
「異人を生き返らせようとしてるのか?」
押し借りと木の下をあさった人間に関連があるのか不明だが、放置するわけにはいかない。
しかし桜の名所を全部調べても、新しい情報は得られなかった。
「桜の調査から帰宅すると、横浜から連絡が届いていました。異人の死亡者も行方不明者もいないとのことです」
「横浜にもいない? あとは長崎ぐらいだが……。長崎の異人が江戸まで来るとは考えにくい」
「ひょっとして人形の首だったんじゃないの? 日本人形でも人の髪の毛使ったりするでしょ」
「……髪の毛が伸びるやつだな。日本人形はリアルだから本物の首に見せかけることはできるかもしれんが……。外国人の人形なんてあるのか? 赤毛を調達するのも難しいぞ」
「日本人に作れるんなら外人にも作れるでしょ」
「あー、海外製の人形か」
念のため海外の人形を調査。
「ロンドンの有名な蝋人形館『マダム・タッソー』の創立は1835年。人の髪の毛を使うこともあったそうです」
「ビンゴ!」
「これでだいぶ範囲をしぼれるぞ」
「そもそも最初から押し借りするつもりだったのかしら? 貧乏浪人が押し借りのために高い人形を買うとは思えないし、盗品なら押し借りする前に人形を売ろうとするんじゃない?」
「たしかに」
人形屋と骨董屋に聞き込みをしてみる。
「そういえば異人さんの人形を売りに来た浪人さんがおったのう」
「おお!」
ここまでくれば何とかなる。
人相書きを作り、さっきお縄にした浪人に見せると身元が判明した。
指名手配するとあっという間に情報が集まり、
「御用だ!」
一人捕まえれば後は芋ヅル式。
拷問で仲間の居所を白状させ、押し借りの浪人たちを一網打尽にした。
「めでたしめでたし」
「……まだ桜の件が残ってるだろうが。桜の木の下を荒らしたのはお前らか?」
「花見はしたのはたしかだが、桜の下を荒らしたことなどない。御用金もねぐらから回収されてますね」
「じゃあ誰が誰を復活させようとしてるの?」
「うーん……」
見当もつかない。
そもそも桜の下に死体が埋まっていた確証すらないのだ。
範囲を広げ、とにかく片っ端から情報を集める。
「桜の下が荒らされた夜に、何か目撃した人はいませんか?」
「桜が荒らされた夜、決まって豪徳寺に駕籠が現れているようですね。それも町人が利用するような駕籠ではありません。護衛もいます」
「……大名の駕籠か? 手を出すのは怖いな」
「でも死体をあさった後に寺へ寄ってるのかもしれないわよ」
「世田谷区だから縄張りの外だし、寺は寺社奉行の管轄だ」
「明るいうちに参拝するだけなら問題ないでしょ。観光の振りして境内を探索」
「怪しいものは何もありませんね」
「お墓は? 人を生き返らせようとしてるんなら、最近誰か死んだってことでしょ」
「井伊直弼のお墓があります」
「げ!?」
桜田門外の変なくして押し借りもない。
何気にこのシナリオでは何度も名前が出ている。
ヒントといえるほどのものではないにしても、予想できる範囲ではあったのだ。
「不平等条約を結んだから暗殺されたんだっけ?」
「それは最初のきっかけにすぎません」
不平等条約で経済が破綻したら、次は領土が狙われ、やがて中国(清)のように諸外国の植民地になるだろう。
それを恐れた水戸藩は幕府へ抗議するものの、井伊直弼は尊王攘夷勢派を徹底的に逮捕・処刑した。
いわゆる『安政の大獄』である。
これで攘夷派の怒りは頂点に達した。
井伊直弼は桜田門の外で水戸浪士(+薩摩1人)に襲撃され、首を取られてしまう(実際に首を切断されている)。
「駕籠が来るのは夜だから、世田谷の親分に協力してもらうしかないわね。寺に入る前に確保」
「そうだな。とりあえずおでんと甘酒をやりながら待機しよう」
「なにその組み合わせ?」
「五節句の時には諸大名が江戸城に登城する。桜田門外の変は桃の節句、つまり雛祭りに起きた事件だ。大名行列は豪華絢爛だから見物客が多い」
「見物客目当てにお店が出るわけね」
「ああ。当日は雪も降ってたから、水戸浪士たちはおでんや甘酒をやって体を温めながら、武鑑を持って見物客になりすましたわけだ」
「ぶかん?」
「野球の選手名鑑のようなものですね。大名の経歴や石高、家紋などが書かれているので、大名行列の見学には必須です」
「へー」
桜田門外の変は、まず彦根藩の大名行列の先頭にいる武士へ攻撃することから始まった。
すると駕籠(井伊直弼)を守っている武士が曲者を成敗しようと前に出てくるため、駕籠の守りが薄くなる。
そこへ駕籠に向かって短銃をぶっ放す。
この銃声を合図に、左右から同時に駕籠を攻撃して井伊直弼の首を取る。
そういう作戦だ。
シンプルな作戦ながら、どろどろの乱戦になってしまったらしい。
浪士は18人、そのうち6人がこの戦闘の傷が原因で死んでいる。
指が飛び、耳がちぎれ、混乱による同士討ちも起こり、襲撃者のほとんどが手傷を負いながらも、見事に井伊直弼の首級を挙げた。
暗殺によって事態が好転することはめったにない(むしろ悪化する)ものの、桜田門外の変は数少ない例外だとされている。
それから10年も経たずに幕府が倒れたのがその証拠だ。
影響力の強さがうかがえる。
……そのかわり不逞浪人も増えたのだが。
「こんにゃく美味しい」
ちなみに粉こんにゃくの製造法を確立したのが水戸藩の桜岡源次衛門だ。
こんにゃくで稼いだ金を水戸浪士に援助したり、井伊直弼を暗殺した浪士をかくまったりしたという。
桜田門外の変の前に食べたおでんにも、ひょっとしたら源次衛門のこんにゃくがあったのかもしれない。
「夜桜を見ながらおでんを食べていると、暗闇から駕籠が現れました。御用だ御用だ! と世田谷の親分が駕籠を止めます。御用改めである。すると護衛が刀に手をかけて前に出てきました」
「左右から駕籠に突撃!」
「カチコミじゃー!」
「では駕籠が内側から破壊され、中から井伊直弼らしき人物が飛び出しました。明らかに正気を失っています」
「捕縄!」
武器も持っていないし、動いているわけでもないので銭投げはあまり意味がない。
しかし2人とも捕縛には失敗した。
「では捕まる前にこちらから捕まえに行きます」
「え」
「井伊直弼に捕まった場合、2ラウンド以内に脱出しないと背骨を折られて即死します」
「げ!?」
達成値の比べあいだ。
負けたら捕まる。
お互いに札を引く。
「12です」
「勝てるか!」
あっさり捕まった。
「この状態で井伊直弼をお縄にしたらどうなるの?」
「2人ともお縄になって、銭形平次は背骨を折られます」
「意味ないじゃない!」
「なんでもいいからぶっ叩け! そうすれば脱出しやすくなる」
「合点承知の助!」
駕籠を回り込んで井伊直弼を十手でぶん殴る。
銭形を捕まえているので、満足に回避できない。
「首が取れました」
「え」
「しかし力はゆるみません。ふはははと地面に転がった首が笑っています」
「踏み潰す?」
「いや、それで成仏するとは思えん」
西行は人骨から人を生き返らせた。
骨から肉が再生しており、頭を潰しても再生するかもしれない。
再生できなくても、この戦闘で逃げられたら(もう一度儀式をされたら)再生してしまうだろう。
首と体、2部位に分かれたのも地味に厄介だ。
攻撃する部位を誤ると死ぬ。
首が最重要なのはわかっているが、ここは慎重に行動したい。
2人合わせて行動できるのはあと3回。
脱出できなければ即死。
脱出したとしても、井伊直弼の近接戦闘レベルは高い。
親分たちは護衛との戦いで手一杯だから、まともに戦うと負ける可能性がある。
俺たちでどうにかするしかない。
「……捕まってるから行動は限定されてますよね?」
「はい。もがいて脱出するか、首に足を伸ばすぐらいですね」
攻撃するなら首だろうが、しかし踏み潰す以外に足でできることなんて……
「あ」
閃いた。
「首を蹴ろう」
「は?」
「蹴鞠だよ。アリ、ヤウ、オウ!」
「あ、蹴鞠の神さま!?」
「困った時の神頼みだ。掛け声をかけながら首をリフティングして猿を呼びます!」
先生が満足気に笑った。
「どこからともなく猿が現れました」
「アリでパス」
「ヤウでトス!」
「オウで首を空高く蹴り飛ばし、井伊直弼は昇天しました」




