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【コミカライズ掲載中】電気代払えませんが非電源(アナログ)ゲームカフェなので問題ありません  作者: 東方不敗@ボードゲーム発売中
本編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

299/382

捕物帖セット【奈良漬けと玉露】

日本史ネタは使い道がないため、和風TRPG回で消費してます。



設定を微妙に変更して改稿した『電気代払えませんが非電源アナログゲームカフェなので心配ありません【修正版】( https://ncode.syosetu.com/n5717gb/)』も投稿中です。

文字数の多いエピソードは修正版でばっさりカットする予定です(無編集版を削除する予定はありません)。


「『鎌イタチ』と呼ばれる連続殺人犯が江戸を震え上がらせています。ただ銭形平次の縄張りである神田には出現していませんが」


「辻斬りか」

「どんな事件なの?」


「鎌のようなもので何人も殺されています。被害者に共通点はありません」


「それだけじゃ何もわからないわね。調査に行かないと」

「そうだな。……ん? 縄張りの外で捜査とかしていいんですか?」

「下手をしたら犯人ではなく、親分と戦うことになります」

「ですよね」

「江戸こわい」

 でしゃばりすぎると同業者に殺される。

 江戸の闇は深い。


「……神田で事件が起きない限り捜査はできないってことだな」


「でも見回り強化すると神田に来ないのよね」

「そしてプレイヤーが手の出せないところで事件が進み、最悪の場合プレイヤーの知らないうちに事件が解決される、と」

「もうオトリ捜査しかないんじゃない?」

「は?」


「人の縄張りで捜査するのはダメでも、襲ってきた辻斬りを現行犯逮捕するのはOKなんでしょ?」


「現行犯なら仕方ありませんね」

 悪知恵の回るやつだ。

 だが狙いは悪くない。

「じゃあ神田の外をぶらつこう」

「では江戸の好きな場所へ移動してください。そこで事件が起きます」

「ランダムエンカウント?」


「のようなものです。ただし事件は1つとは限りません。同時にいくつもの事件が起こると、プレイヤーには解決できない事件が出てくるでしょう。未解決に終わった事件は『妖怪のしわざだ!』『天狗のしわざじゃ!』『祟りじゃー!』として処理されます」


「ええ!?」

「江戸では不条理な怪奇現象がたびたび起こります。TRPGはプレイヤーが自力でクリアできるシナリオを作るのがマナーですが、この作品では必ずしもそうではありません。そもそも人口100万を超える江戸で、プレイヤーがすべての事件を解決するのは不可能です。危ないと思ったら逃げてください。君子危うきに近寄らず」

「解決できない前提みたいだけど、ペナルティはないの?」


「未解決事件1件につき、1回乱心判定します」


「げ!?」

 このゲームは心・技・体のパラメータで構成されている。

 技はレベル。

 体はHP。

 そして心は正気度。


 正気度が0になると乱心(正気を失う)し、まともな社会生活を送れなくなる。


 いわば社会的な死であり、ゲームオーバーだ。

「そのかわり事件を解決したら心が回復します」

 ……たぶん、うまくプレイしてもプラマイ0になるように調整されているだろう。

 要注意だ。

「では行先を指定してください」

「迷うな」

「七不思議って八丁堀以外にもあるの?」

「麻布七不思議や本所ほんじょ七不思議が有名ですね」

「じゃあ本所」


「では『石原の兄貴』の縄張りである本所まで足を伸ばしました。噂によると連続押し込み強盗事件や、七不思議の『おいてけ堀』と『たぬきばやし』がらみの事件が起こっているそうです」


「具体的にはどういう事件なの?」

「押し込み強盗は雨戸をノコギリで切って侵入するという強引な手口ですね」

「普通の押し込み強盗だな。兄貴が怖いからこれはスルーしよう」

「そうね」

「次はおいてけ堀の件ですが……。おいてけ堀で魚を釣って帰ろうとすると、『おいてけーおいてけー』という声が聞こえ、怖くなって逃げたら魚籠びくの中の魚が消えていたそうです」

「しょぼ」

「人が堀に引きずりこまれたという話もありますし、のっぺらぼうが出たという話もあります」

 噂に一貫性がなく、どれが真実なのかわからない。


「最後にたぬき囃ですが……。どこからともなく笛や太鼓の音が聞こえてくるので、その音を追いかけたら、なぜか途中で音の聞こえてくる方向が変わり、どこから音がしているのかわからなくなるそうです」


「追いかけてる内にたぬきのいる森に迷い込んでしまったとか、そういう話?」

「いえ、単にどこから音がしているのかよくわからないだけの事件です」

「……犯人が何をしたいのかわからん」

「そもそも事件なの、これ?」

「なんともいえんな。場所がわからないから調査のしようもない。おいてけ堀に行こう」

「釣り道具は買わないといけないの?」

「もちろんです」

「じゃあ本所で釣り道具を買います」


「釣竿を持っておいてけ堀へ向かっていると、『お奈良茶漬け、宇治料理』なる看板の茶屋で声をかけられます」


「おなら?」

「奈良漬けと玉露のお茶漬けです。ちなみに看板はカタカナで『オナラチャズケ、ウジリョウリ』と表記されています。

 無駄にインパクトがある。

「う、お酒くさい」

「酒粕で漬けるからな」

 かなりクセが強く『奈良漬けを食べた後に運転したら飲酒運転で捕まった』という都市伝説があるぐらいだ。

 ウリのコリコリとした触感に、濃厚な酒粕が玉露と混じり合って何ともいえない風味になる。

 さすがに玉露ぐらい高級なお茶になると、奈良漬けの個性にも負けない。

 豪華なお茶漬けだ。

「そういえば何でお茶してたんだっけ?」


「麦飯と奈良茶で一服しているお客さんに声をかけられたからです。あんたたちも釣りをするのかい?」


「お化け釣りだけどな」

「ははは、そいつはいい。釣りほど殺生なものはないからね。命のないお化けならいくらでも釣りな。でもウナギだけは釣っちゃいけないよ」

「釣るなよ、絶対に釣るなよ」

 ……間接的にウナギを釣れと言っている。

 こうしてお奈良茶漬けで一服し、ウナギを狙っておいてけ堀で釣り糸を垂らすことになった。


「魚がかかってるのも気づかずに眠っている若旦那や、太公望のように針のない竿を垂らしているご隠居、刀のように竹竿を振り回して華麗に魚を釣るお侍さんなど、堀には何人もの釣り人がいました。おもな魚はコイ、ナマズ、ウナギのようですね。適当に一枚引いてください」


「ドロー!」



「ナマズとくしが釣れました」

「くし?」

「髪にさす櫛です。具体的にいうとこういう櫛です」

 実物の櫛を取り出した。

 一目で高いものだとわかる。


「櫛を持って帰るのなら、セッションが終わった後に実物を差し上げますよ?」


「やった!」

「アホか、どう考えても罠だろ!」

「でもおいてけ堀の調査するんなら、これを調べないとどうにもならないじゃない」

「う……。なら試しに差してみよう」

「いえー!」

 鏡を見ながら櫛を髪に差した。

 もともと日本的な黒髪美人なので嫌でも似合う。


「サンプルキャラの『お静』は銭形平次の奥さんなのでもともと綺麗な人なんですが、その櫛を差した途端、まるで天女のような美しさになりました」


「私きれい?」

「ポマード」

「誰が口裂け女よ!」

 『私きれい』は口裂け女の都市伝説によくあるやつであり、『綺麗だ』と返事をすると『これでも?』と言いながらマスクをとって大きく裂けた口を見せるという。

 その後の対処を間違えると殺される。

 だがなぜか『ポマード』と唱えると口裂け女は逃げていくらしい。

 都市伝説らしい意味不明な弱点だ。


「やっぱり呪われてるな。櫛をリリースします」


「ああー!?」

 櫛を抜いてテーブルに投げる。

「お静はもとに戻りました。釣りを続ける場合はもう1枚引いてください」

「ウナギこい!」



「櫛とウナギが釣れました」

「また櫛!?」

「……しかもウナギつきか。とりあえず櫛とウナギを持って帰ります」


「おいてけー」


「……引き返して櫛を捨てます」

「おいてけー」

「ウナギが本体?」

「そうなるな。ためしに宿まで帰ってみよう。魚は無事ですか?」

「無事ですね。噂のようになくなってはいません」

「じゃあウナギを調べてみよう」


「魚籠の中身をタライへぶちまけると、ウナギやナマズと一緒に櫛が出てきました」


「ぎゃー!?」

 ……呪われたのかもしれない。

「櫛も気になるが、今はウナギだ。何か特徴はありますか?」

「丸々と太っています。それといい香りがしますね」

「匂い?」

「よくわからん。ウナギをさばいてみよう」


「中から麦飯が出てきました」


「は?」

「麦飯です」

「おいしそう」

「……問題はそこじゃない。もしかして、いい香りって奈良茶ですか?」

「奈良茶ですね」

「え、さっき茶店にいた人?」

「ああ。ウナギが人に化けて、釣りをするなって警告してたんだな。おいてけっていうのは、たぶん仲間のウナギのことだ」

 警告しておきながら、真っ先に自分が釣られているのが間抜けだ。

「ウナギはさばいたから、これで大丈夫だろ」

 櫛を瑞穂の髪に差す。


「日本一の美女に変化しました」


「焼こう」

 どうやらウナギと櫛は別の怪事件だったらしい。

「櫛を燃やすと女性の悲鳴が響きました」

「もう一回おいてけ堀に行って、ウナギを釣って帰ります」


「おいてけという声は聞こえませんね。周りの釣り人も異常ありません」


「結局、櫛はなんだったの?」

「天狗のしわざじゃ」

「……これはひどい」

 たとえ事件を解決しても、真相がわからないものはすべて天狗か妖怪か怨霊のしわざ。

 それがこのゲームだ。

 すぐに解決できたことからすると、これはメインの事件ではなかったのかもしれない。


 あるいは判断が早かったから助かった可能性もある。


 櫛を処分しなかった場合、女に祟られてしまうのだ。

 そして女に祟られない限り、櫛の真相はプレイヤーにはわからないのである。

 『謎を解きたければ呪われろ』という、かなり嫌なシステムだ。

「おいてけ堀は解決したので仮眠を取ります」


「では、デンデケデケデケという噂のたぬき囃が聞こえてきました」


「追いかける?」

「当たり前だ」

 しかしグルグルと歩きまわされるだけで、音の出所を特定することはできなかった。

 無念。

 そして夜が明けた。


「また押し込み強盗が出たようですね。しかも鎌イタチまで本所に出現しました」


「……一ヶ所で事件起こりすぎでしょ」

「たぶん石原の兄貴も手が足りないはずだから、捜査を手伝っても文句はいわれないはずだ」

「そうですね。お前に借りを作るのはしゃくだが、背に腹はかえられん。ただし何事も必ず俺を通せ」

「合点承知の助」

 ネタが古い。

 いや、江戸時代なら最先端のネタなのか?

「事件的には鎌イタチのほうが大物なので、石原の兄貴は鎌イタチの調査に乗り出します」

「俺たちは強盗の捜査か」

 強盗にあった家を調べに行く。

 だがほとんど何もわからない。


「雨戸をノコギリで切ったら、かなり大きな音がしますよね?」


「そうですね。しかし誰もそういう音は聞いていません」

「被害にあった屋敷の雨戸を全部調べなおして」

「一軒だけ切り口が違いますね」

「なにが違うの?」

「他の屋敷は木目が細かいんですが、『おこん』という金貸しの雨戸だけ仕事が雑です。切り口が荒い」

「模倣犯か、それとも自作自演か?」

「疑われないように、自分で雨戸を切ったってこと?」

「ああ。ただ無音で戸を切る方法がわからん」

「そういうときは逆に考えるのよ。無音で切れないなら、音を立てても聞こえないようにすればいいじゃない」

「どうやって?」


「たぬき囃に合わせて切る」


「あ、七不思議の伝説を利用した犯行か!」

「そういうこと」

「すると共犯者がいるな。たぬき囃担当と強盗担当で最低でも2人」

「楽器は複数使ってるみたいだし、たぬき囃の響く方向は定期的に変わるからもっと多いんじゃないの?」

「……捜査範囲が広くなるな。千両箱って重いですよね?」


「小判と箱を合わせて5貫、約19キロです」


「お紺じゃ運べんな。たぶんたぬき囃担当だろ。強盗に襲われる屋敷は、たぬき囃が聞こえる範囲だ」

「お紺尾行する?」

「うーん、強盗と接触してくれたら助かるんだが……。たぬき囃の現場を押さえても意味ないんだよな。ただのイタズラだって主張されたらどうしようもない。ほとぼりが冷めるまで強盗担当とは接触しないはずだ」

「強盗を捕まえるしかないのね」

「ああ」


 地図で被害者宅をチェックして、たぬき囃の聞こえる範囲を推測する。


「ん? 意外に範囲が狭い」

「しかも円形に被害者宅が並んでるわね」

「円の中心は……大法寺。荒れ寺だな。もしかしてここが拠点か?」

「でも一軒だけだと音の方向変えられないわよ」


「玄関や窓を開け閉めしてるのかもしれん。窓を開ければ北に、玄関を開ければ南に音が響くとか」


「そんなにうまくいく?」

「推理小説ならこれぐらい許容範囲だろ。たぬき囃の晩、音が一番響いてる方角に強盗が出る。石原の兄貴に報告しとこう」

「……筋は通ってるな。よし、大法寺を見張らせよう。どうせ鎌イタチが出るのも夜だ。まとめて相手してやろうじゃねえか。子分を総動員して警戒態勢にあたります」

「これで石原の子分が強盗を捕まえたらどうなるの?」

「もちろん石原の兄貴の手柄です」

「なにそれ、ずるい!」

「兄貴の縄張りだからな、それは仕方ない」

「ぶー!」

 手柄を稼ぐには自分の縄張りをうろつくのが一番。


 だが手柄を稼ぐほど治安が良くなって事件が起きにくくなるし、江戸を探索することもできない。


 結局いつかは縄張りの外へ出ないといけないわけだ。

 まあ、岡っ引きの収入なんてたかが知れている。

 金を稼ぐつもりがないのなら、ガンガン外へ出向いたほうがいいだろう。


「石原の兄貴がお紺と強盗犯をお縄にしました」


 ……自分の手で強盗を捕まえるのにこだわったせいで、俺たちがいないところで勝手に事件が解決してしまった。

 こんなことなら大法寺でお紺を捕まえればよかった。

 無念。

「しかし強盗犯一味を捕まえることに集中しすぎていたため、鎌イタチによる犯行は防げませんでした。ただ被害者は運よく助かったそうです」

「犯人の特徴は?」

「鎌を持った黒ずくめの男です」

「……なんの参考にもならん」

「どういう状況で襲われたの?」


「夜道を歩いていたら誰かにぶつかって転んだそうです。すると突然、鎌で襲いかかられたとか。被害者は腕を斬られましたが、さいわい近くに『ガマの油売り』がいたおかげで止血できたそうです」


「ガマの油売りって、自分で腕を切って薬塗るあれ?」

「はい。江戸時代の実演販売ですね」

「でもあれは実際に切ってるわけじゃないぞ。刀に血糊ちのりを塗っておいて、切った振りしてるだけだ。油を塗って止血したように見せて、血糊を油と一緒にふき取る。すると傷口が消えるから、治ったように見えるわけだ」

「へー」

 落語の『ガマの油』を聞いたことがあるので知っている。


 ちなみに落語では油売りが酒に酔い、本当に腕を切ってしまって『お客さまの中にガマの油売りはいらっしゃいませんか?』という落ちだ。


「ガマの油売りが都合よく現場の近くにいたのが怪しい」

「自作自演販売ってこと?」

「ああ。殺された被害者たちは首を切られてる。なのに今回は腕だ。今までの被害者の検死報告書は読めますか?」

「頼めば見せてもらえます」



 その傷は極めて異様なもので、左の耳の後からのど仏の方へ三日月型に弧を描いてねあげられている。

 ひといきに頸動脈をふかく斬られ、斬られたほうは、恐らくあッというひまもなく即死したであろう。

(中略)

 ところが、傷口を仔細に調べてみると、傷口は横側のほうが浅く、のど仏へ行くほど深くなって、とたんに顎のほうへ刎ねあげられている。

 後から襲いかかって手許へ引いたのならば、こんな傷は出来ぬはずである。

 そればかりではない、なお、入念に改めてみると、鎌形に咽喉を掻き切るまえに、切尖きっさきが少しそよいだような、すこし切尖を違えたような、小さな不思議な掻き傷があって、それからいきなり深い新月なりの傷がはじまるのである。



「……連続殺人の凶器は鎌じゃない。でも一般には細かい情報が公開されてないから、鎌でマネしたわけだな。自分で人を切っておきながら、なにくわぬ顔で止血してガマの油の宣伝をする。タチの悪い模倣犯だ。でも証拠がないんだよな」

「ならオトリ捜査したい!」

「オトリ好きだな、お前」


「本物の鎌イタチより可能性は高いわよ。油の売り上げが上がったんなら、調子に乗ってもう一回やるはず。だから夜中に油売りの近所を歩き回るの」


「誘い出せる可能性は高そうだな。でも模倣犯はたぶん1人じゃないぞ。状況からして鎌で切りかかってきた男と、油売りは別人のはず」

「妖怪漫画でも珍しいタイプの鎌イタチね。1匹目が転ばせて、2匹目が切って、3匹目が薬を塗る」

 3匹1組の妖怪、それが鎌イタチだ。


 おそらくこいつらがモデルになって、3匹1組の鎌イタチ伝説が生まれたという話の流れになるのだろう。


「両国へ行きます」

 両国は1日で3000両動くとされている。

 朝は両国青物市で千両、昼は両国広小路の見世物で千両、夜は河の涼船や茶屋小屋で千両。

 広小路には軽業や手品などの見世物小屋が多く、落語の油売りもここで商売している


「よってらっしゃい、みてらっしゃい!」


 とりあえず両国で実演販売をしていたガマの油売りを尾行して自宅を突き止め、夜中に貧乏長屋の周りを行ったり来たりした。

 そろそろ油売りが出てくるかなと思っていたら、

「前から見おぼえのある顔が歩いてきました」

「油売り?」


「いえ。おいてけ堀で魚を釣っていたお侍さんです。そして今も竹竿を持っていますね、まるで刀を構えるように」


「え、もしかしてこいつが鎌イタチ!?」

「釣針でのどを掻っ切ってたのか!?」

「相手が鎌イタチである場合、お静はすでに釣竿の間合いの中です」

「ええ!?」

「銭形は物陰に隠れながらお静の後ろをついてきていたので、お侍さんは銭形に気づいていません」

「オトリ捜査で助かったな。先手必勝、銭投げで竿を落とします!」

 達成値の比べあいだ。

 竿を落とせなければ、高確率でのどを掻っ切られる。

「よし、10だ!」


「残念。こっちは11です」


「ぎゃー!?」

 ……やはり相手は鎌イタチだったらしく、釣竿でのどを掻っ切られた。

 生死判定は成功したので生きてはいる。

 ただ出血が激しく、すぐに止血しないと死ぬだろう。


「『なんだなんだ?』『女の悲鳴が聞こえたぞ』『カマイタチか!?』。お静の悲鳴に気づいて、人がこちらへ近づいてくる気配を感じます」


「お客さまの中にガマの油売りはいらっしゃいませんか?」


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