ソウルライクセット【おはぎとミネラルウォーター】
参考ゲーム
ダークソウル
SEKIRO
『死』
「……これだからソウルライクは」
最初のエリアのザコにあっさり殺される。
日本を舞台にしたソウルライクゲーム『咳狼』。
死にゲーを定着させた会社の最新作なだけあって、とてつもなく難易度が高い。
一発食らっただけで体力ゲージを半分ぐらい持っていかれ、たとえザコが相手でも囲まれたら死ぬ。
ただ元祖ソウルライクゲームの『ライトソウル』に比べれば、ザコ相手に事故りにくい。
スタミナの概念がないので無限に走れるし、主人公は狼と呼ばれる忍者なので危なくなったら鎖を飛ばして木や建物の上に避難できる。
ステルス要素も高く、敵に気づかれていない状態で背中から刺せば一撃必殺。
体力はゲージ制であり、だいたいボスはゲージが2つある。
たとえ相手がボスであっても、気づかれていない状態で背中から刺せばゲージを1つ削れるのが珍しい。
『死』
……だがその残り1ゲージが問題なのだ。
これがなかなか削れない。
キンキンキン
ライトソウルでは盾で敵の攻撃を弾く『パリィ』と、パリィで体勢を崩した敵の心臓を刺す『必殺の一撃』という技がある。
ザコなら一撃で倒せるので非常に気持ちのいい技なのだが、パリィは失敗すると敵に斬られてしまう。
一応、盾に攻撃が当たればダメージは軽減できるものの、パリィを失敗した時のリスクを考えると、普通に盾でガードしながら戦ったほうがいい。
咳狼はそんなパリィのシステムを初級者にもとっつきやすくしたゲームだ。
パリィのように敵の攻撃に合わせてタイミングよくボタンを押すと、敵の攻撃を刀でさばく『弾き』が発生する。
そして弾きが成功すると敵の『体幹』というゲージを削ることができた。
体幹ゲージは一種のスタミナ。
体幹を全部削ると敵がバランスを崩し、
『忍殺』
「よし、勝った!」
『忍殺』という必殺の一撃が発生して、体力ゲージを1つ削ることができる。
ライトソウルはパリィを1回成功させるだけで必殺の一撃を出せたのに、咳狼は敵の攻撃を弾き続けて体幹を削らないと必殺の一撃を出せないわけだ。
ライトソウルより難易度が高いように思えるものの、パリィと違って『敵の攻撃を弾くことに失敗してもガードはできている』ためダメージは受けない。
安心して敵の攻撃を弾くことに集中できる。
キンキンキン
「おおう!?」
弾きが重要なので、とにかく敵の攻撃が激しい。
攻撃を弾くとガードした時よりも甲高い金属音がする。
これが気持ちいい。
攻撃は最大の防御ならぬ『防御(弾き)は最大の攻撃』。
攻撃と防御を両立させた素晴らしい戦闘システムだ。
ただし体幹ゲージは時間経過で回復してしまうので、敵の攻撃を弾いているだけでは勝てない。
連続攻撃を弾いて反撃し、敵の体力ゲージを減らせば体幹ゲージも減りやすくなる。
体力ゲージを減らせなくてもガードさせれば体幹を削れるので、反撃は必須だ。
もちろん敵の攻撃を防げばこちらの体幹も削られる。
狼は体幹ゲージが0になっても忍殺は受けない(忍殺は忍者の技なので敵は使えない)ものの、バランスを崩すことに変わりないので直撃を食らってしまう。
だからといって自分の体幹を回復しようとすると、相手の体幹も回復してしまうジレンマ。
安全を優先するとなかなか敵の体幹を削りきれない。
結果として長期戦になり、長引けば長引くほど被弾して死ぬ可能性も高くなる。
ある程度ボスの体幹を削ったらリスクを承知で前に出たほうがいい。
ボスの体幹を削りきる頃には、こちらの体力ゲージもギリギリな場合が多いので前に出るのはかなりスリリング。
このあたりのゲームバランスが絶妙だ。
そして、
『危』
「来た!?」
狼が敵の殺気を感じると『危』という赤い文字が表示され、ガード不能技が来る。
突きは弾き(ガードが不能なだけで弾くことはできる)、下段攻撃はジャンプして避わし、つかみ攻撃(つかまれると投げられたりする)は前後左右にステップして避わす。
『危』のおかげでガード不能攻撃が来るのはわかっても、敵の体勢を見て瞬時に突き・下段・つかみのどれが来るのか判断し、即座に弾き・ジャンプ・ステップで対応するのは困難。
『死』
……何度も死んでモーションやパターンを覚えるしかない。
最初は成す術もなく斬りまくられるものの、一度タイミングを覚えると面白いように攻撃を弾ける。
刀でチャンバラしてくれるボスは戦いやすい。
くるくる回転しながらパンチやキックを繰り出してくる格闘系のボスは、トリッキーすぎて慣れないと一方的に殴られる。
薙刀は一見ゆったりとした攻撃モーションなのだが、急に加速してメリハリをつけてくるので厄介だ。
特に回転しながらの5連続攻撃は、3発目までは一定のタイミングで飛んでくるものの、4発目が微妙にタイミングが遅く、5発目が逆に速い。
こういう細かい攻撃への対処で勝敗が別れる。
奥が深い。
対照的なのはカギ爪と居合いで攻撃してくるボスだ。
キンキンキンキンキンキンキンキンキン
「うおお、なんだこいつ!?」
カギ爪を装備したボスは、両手で10回ぐらい連続攻撃してくる。
かなり攻撃速度が速い上に、ラッシュの後は下段の危険攻撃まで仕掛けてきた。
弾きに失敗すると、あっという間に体幹を削られて死ぬ。
「アメ舐めたら?」
「アメ?」
「これ食べたら体幹が減りにくくなるのよ」
「そういえばそんなアイテムもあったな」
貴重品っぽいのでアメ系のアイテムは温存していた。
今こそ使う時だろう。
「黄色いエフェクトが出るから通称パインアメよ」
「……シュールだな」
アメを舐めると、なぜか狼が両手を広げて片足立ちする。
なんでアメを舐めるのにこんなポーズをする必要があるのかわからないが、
キンキンキンキンキンキンキンキンキン
『忍殺』
「よっしゃ、さすがパインアメ! 効果は抜群だな」
「効果ないわよ」
「は?」
「制作側のミスで、このアイテム効果発揮してないの」
「なんだと!? じゃあ何で勝てたんだよ」
「一種の思い込みよ。『アメ舐めたから体幹は減りにくい。これで勝てる』ってね」
「……プラシーボ効果ってやつか。メンタルは重要だな」
アイテム未使用のギリギリの精神状態と、アイテムを使って心に余裕がある状態とではパフォーマンスが変わってくる。
それがよくわかるボスだった。
一方、居合いのボスは手数が少ない。
鞘から刀を抜き、一刀のもとに切り捨てる戦闘スタイルだ。
居合いで攻撃するキャラは何度か別のゲームでも見てきたが、こいつが一番速い。
しかも一度倒れてしまうと、起き上がりに居合いを食らって死ぬ。
ほぼ居合いしかしてこない究極の一芸ボスだが、シンプルすぎて強い。
「くそ、なんで弾けないんだ」
「だって2回斬ってるもの」
「はあ!?」
「速すぎてわかりにくいけど、鞘から抜いて切り上げ、刀を返して切り下してるのよ」
「マジか」
たしかによく見ると2回斬っている。
すさまじい速さだ。
高速で2回Lボタンを押さないと間に合わない。
だが体幹が弱いので、
『忍殺』
「よし!」
数回弾けば忍殺できる。
一戦一戦は短いものの、手に汗握る強敵だった。
「やっぱり敵は人間に限るな」
以前プレイしたライトソウルはパリィと必殺の一撃が売りなのに、実はボス戦で使えない。
ボスが人間ではないからだ。
ただラスボスは人間であり、唯一パリィができるボスなのだが(というかパリィをしないと難易度が跳ね上がる)、『ボスにパリィはできない』という先入観があるため連敗を重ねることになる。
ひどい罠だ。
『死』
「……ぐ、剣聖強すぎだろ。事実上の4ゲージってなんだ」
1ゲージ削ると剣聖のくせに槍を片手で振り回す二刀流になり、距離があると銃まで撃ってくる。
しかもラスボスは3ゲージで、ラスボス戦の前には前座のボス(1ゲージ)がいる鬼畜仕様。
あまりに強すぎて、前座やラスボスの第一形態ならたまにノーダメージで倒せるぐらいだ(つまり攻撃パターンを完璧に学習できるほど死にまくったということ)。
通常ボスは2ゲージが多い。
ある意味、第二形態からが本当のラストバトルなのだ。
きつすぎる。
『死』
「う、指が……」
Lボタンを連打しすぎて左手の人差し指が痛い。
2時間ほど負け続けたせいでもあるが、連敗するとどうしても力んでしまう。
無駄な力が入っていると勝てる勝負も勝てない。
リラックスが必要だ。
「一服しよう」
「じゃあ、おはぎ食べたい!」
「あいよ」
「それと『京の水』ね」
「ミネラルウォーターでも飲んでろ」
「ぶー」
どちらも作中に登場するアイテムだ。
ぐぐいと召し上がるのが貴族のたしなみらしい。
「タバスコある?」
「普通に食え!」
ちなみにタバスコは『その日暮らしで泣く頃に』のネタである。
タバスコの刺すような痛みを『おはぎに針が仕込まれていた』と勘違いするシーンだ。
他愛のないイタズラなのだが、実はバッドエンドの切っ掛けの一つにもなっている。
完全なファンアイテムなので実食はオススメしない。
タバスコをかけるぐらいなら黒ゴマや青ノリ、きな粉がオススメだ。
色鮮やかで手軽に風味を変えられるため、うちではいつも4種類用意している。
「ミックス!」
「……やると思ったよ」
もちろん全部まぶしてもうまい。
「ごほっごほっ!?」
ただし粉をまぶしすぎると咽やすいので要注意。
「これが咳狼か」
「そいういう意味じゃないから」
ぐぐいとミネラルウォーターを飲み干す。
とても貴族のたしなみには見えない。
「……で、こいつはどうやって倒せばいいんだ?」
「リズムよくボタンを押すだけの簡単なお仕事よ」
キンキンキンキンキンキンキンキンキン
「おおう!?」
怒涛の連続攻撃を、すべて完璧なタイミングで弾いた。
「敵の攻撃パターンは決まってるんだから、連続して弾きに成功した時の音を覚えるの。そうすればリズムに合わせてボタンを押すだけの音ゲーになるでしょ?」
「ならねえよ」




