ホラーゲームセット【ビーフジャーキーとカモミール】
参考ゲーム
バイオハザード3
DEMENTO(クロックタワー4として開発されてたゲーム)
『アストローーーズ!』
「ぎゃー!?」
ゾンビなのにそこそこの知性があり、どこまでも追跡してくる。
しかも最近のゾンビ映画のように走ることも可能で、場合によってはロケットランチャーまで撃ってきた。
ゾンビとは思えない。
「……これぞホラーだな」
化物に追いかけられる。
それがホラーの王道だ。
しかし、
「マグナム効くのかしら」
高火力の武器を入手してしまったのがゾンビの運の尽き。
BANG!
『うぼぁー!?』
「あ、死んだ。一応倒せるのね。殺せるんなら恐くないわ」
「……無駄に殺すなよ」
追われる恐怖を楽しむゲームなのに、倒せると分かった途端、手持ちの武器で追跡者をハチの巣にし始めた。
『アストローーーズ!』
ゾンビは倒しても倒しても復活するものの、
「ドロップアイテムしょぼ。ハイリスクローリターンね。弾がもったいないわ。ナイフで適当に切ろっと」
倒せると分かったゾンビなど、もはや脅威ではない。
狩る側から狩られる側に回った追跡者は、出現するたびにナイフで滅多切りにされた。
南無。
なおアストロズは主人公の所属する特殊部隊の名前だ。
人をゾンビ化させるバイオハザード事件を引き起こした会社『アンブレイカブル』が、真相を知った隊員たちの口を封じるためにゾンビで追跡しているそうだ。
命令通りに動くという点では、ブードゥー教のゾンビに近いのかもしれない。
「……もうホラーじゃないだろ、これ。他に追跡されるタイプのゲームはないのか?」
「そうね、『クロノタワー4』とか?」
文字通り時計塔を舞台にしたホラーゲームだ。
巨大なハサミを持った怪人『シザーハンズ』がどこまでも追跡してくる。
捕まったらハサミで首を切られたり、串刺しにされたりするらしい。
「う、倒せないから怖い」
「……ふつうは倒せても怖いんだよ」
主人公は無力な女の子なので、シザーハンズから隠れて行動することになる。
ベッドやテーブルの下、タンスの中などに身を隠し、ひたすらシザーハンズから逃げながら時計塔を脱出しないといけない。
これぞ正統派のホラーゲーム。
走って逃げることはできてもスタミナ制限があるし、隠れる場所もそんなに多くない。
というか、隠れられる場所がわかりにくい。
一応なにかある場所へ移動すると『!!』と表示されるのだが、時計塔の敷地はかなり広いのでどうしても見落としてしまう。
隠れるにしてもシザーハンズが視界内にいないときに隠れないといけない。
慣れないと難しい。
おまけにシザーハンズはかなり耳がよく、ドアを開けっ放しにして走り回っていると足音に反応する。
だからといってすべてのドアを閉めていると、走って逃げる時にドアを開けないといけない。
毎回ドアを開けるとなるとかなりのタイムロスになる。
体当たりでドアを開ける、ドアを蹴って閉める(シザーハンズにドアを当てる)、開けたドアの陰に隠れる、ドアの前にタンスなどを移動させる(開かなくする)、ドアの前にアイテムを置く(シザーハンズが必ず通過する場所に罠を仕掛ける)など、ドアでの攻防は多い。
ドアを制する者はクロノタワーを制するといっても過言ではないだろう。
こうしてしばらく時計塔をさまよっていると、
『わんわん!』
「あ、かわいい」
犬が主人公のパートナーとしてついてくるようになった。
殺伐としたゲームに安らぎを与えてくれる貴重な存在だ。
おまけに手の届かない場所にあるアイテムを取ってきてくれたり、臭いで追跡したり、シザーハンズに噛みついて時間を稼いでくれる。
ただ友好度を上げないとなかなか命令を聞いてくれない。
呼ぶ、命令どおりに動いたときに褒める、命令を聞かなかったときは叱る、ビーフジャーキーを食べさせるなど、こまめにコミュニケーションをとる必要がある。
微妙に面倒だ。
しかも、
「あれ、犬がいない」
シザーハンズから逃げることに集中していると(あるいは足止めさせると)、高確率ではぐれてしまう。
はぐれても死ぬことはないので時計塔を探索しているうちに合流することはできるが、
シャキン シャキン
「ぎゃー!?」
それまでは一人でシザーハンズに対処しなければならない。
犬と合流しようとして歩き回るとシザーハンズに会う可能性が高くなり、合流してもシザーハンズに追われるとまたはぐれてしまう。
悪循環だ。
そのぶん友好度を高め、犬とはぐれないようになってきたら楽になる。
たぶん中盤~後半より、犬がいない、もしくは犬があまりいうことを聞かない序盤のほうがこわい。
「ビーフジャーキー食べたい」
「あいよ」
「ついでにカモミールティーね」
「微妙な組み合わせだな」
カモミールはクロノタワーの回復アイテムだ。
ゲーム中では『カモマイル』と表記されている。
スモーキーなジャーキーに、フルーティーでリラックス効果のあるカモミール。
下手をすればお互いの長所を殺してしまうかもしれないが、市販されているような細長いビーフジャーキーならそれほど抵抗はないだろう。
カモミールに紅茶をブレンドするという方法もある。
『くーん!』
「んー、かわいい。ちゃんと私のいうことも聞くようになってきたし」
「いまなら『ハイドアタック』できるんじゃないか?」
「なにそれ」
「説明書を読め」
ハイドアタックはシザーハンズを背後から攻撃する技だ。
犬を『待て(ステイ)』させるとその場で力を溜めはじめるので、シザーハンズが背中を向けたら『行け(ゴー)』の命令を出し、一定以上の距離を走って攻撃するとハイドアタックが発動するらしい。
「ようするに犬を待機させておいて、待機場所までシザーハンズを誘導すればいいんでしょ。簡単じゃない。ちょっとシザーハンズ呼んでこよっと」
「ちょっと待て!?」
やはりゲーマーに武器を与えるとろくなことにならない。
こうしてハイドアタックという無限に使える攻撃手段を手に入れた少女はシザーハンズをボコボコにし、あっけなく時計塔を脱出した。
狩る者と狩られる者の立場逆転は、ある意味こういう作品の醍醐味なのかもしれない。
……バランス調整に失敗すると一方的に狩られまくることになるが。




