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【コミカライズ掲載中】電気代払えませんが非電源(アナログ)ゲームカフェなので問題ありません  作者: 東方不敗@ボードゲーム発売中
本編

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エンディングセット【ロールケーキとディンブラ】

参考ゲーム

デビルメイクライ3

スーパードンキーコング

タイピング・オブ・ザ・デッド

ニーア・オートマタ


「……スタイリッシュアクションなのにスタイリッシュに動けん」


「あんたが下手だからでしょ」

「ぐ……!」

 無双ゲームで無双できないようなもどかしさ。

 『エンジェル・メイ・クライ3』も微妙に古いゲームなので、カメラワークが洗練されていない。

 ただスタイリッシュに動こうとさえしなければ、わりと何とかなる。

 難易度もノーマルなので詰まる要素はない。

 ヒット&アウェイで深追いしなければ、ぬるゲーマーでもクリアできた。

 待望のエンディングである。


『Angels Never Cry!』


「なんだ!?」

 ロックな主題歌が流れ、スタッフロールが始まったかと思ったら、どこからともなく大量の敵が出てきて襲いかかってきた。

 クリアしたことに安心し、コントローラーを置いていたので対処が遅れる。

「エンディングじゃないのか!?」


「エンディングよ。敵を100体倒せばスタッフロールの後にエピローグが追加されるの」


「100!?」

 たぶん歌の長さとスタッフロールの長さは同じはずなので、猶予は3~4分ぐらいだろうか。

 2~3秒に1体は倒さないといけない。

 一見きつそうなノルマだが、基本的にザコしか出てこないので難しくはない。


「いける」


 このままザコしか出てこなければの話だが……。

 ……無論そんなに甘くない。

「出た!?」

 満を持してボスが登場。

 今まで何度か戦ったことのある中ボスだ。

 パターンはわかっているので倒すのは簡単。


 問題は時間だ。


「まずい、もうすぐ歌が終わる!」

 初めて聞く曲でも、フルコーラスなら曲の構成で終わりがなんとなくわかる。

 もう時間がない。

 ボスの攻撃を避わすのはやめ、ひたすらボタンを連打して殴る。

 スタイリッシュさのかけらもないが、これしか方法がない。

 だが渾身の16連射もむなしく、スタッフロールが終わってしまった。


『99』


「くそ!」

 100体の壁を越えられなかったので、そのままゲーム終了。

 もちろんエピローグはない。

 無念。

「エピローグが観れないのはともかく、演出としては面白いな」

「でしょ? ゲームのエンディングにも色んなパターンがあるんだから」

「最近のゲームはスタッフも多いからスタッフロールが死ぬほど長いんだよな。こういう演出があるとありがたい」

「ミニゲームのバリエーションは少ないけどね。だいたいシューティングだし」

「シューティング?」


「上から流れてくるスタッフの名前クレジットを撃つの。ちゃんとスコアも入るわよ。単調であんまり面白くないけど」



鈴木一郎


 ・

 ・

 ・

 △


※スクロールしてくるクリエイターの名前を撃つとスコアが入る



「『ホームセンター・オブ・ザ・デッド』のタイピングゲームだと、スタッフの名前をタイピングできるわよ」

「あー、そういうゲームシステムと関連のある演出はいいな」


「スタッフロールをネタにする演出もあるわね。ラスボス倒してスタッフロールが流れたと思ったら、途中でスタッフロールが巻き戻しになるとか」


「なんだそれ」

「ラスボスが死んでなかったっていうパターンよ。『スーパードンコング』だとラスボスが死んだフリしてて、その時に流れるスタッフロールも実は偽物だったりするし」

「偽物?」


「CreditsがKreditsになってたり、ところどころ表記がおかしいの。最後も『THE END?』ってクエスチョンマークがついてるし。まあ、英語だから日本のプレイヤーには細かいネタがわからなくて、普通にダマされて不意打ち食らうんだけど」


 芸が細かい。

「時間を題材にしたSF系のノベルゲームだと、過去を変えてヒロインを救うっていう演出もあったわね」

「スタッフロールの巻き戻しを、時間の巻き戻しに見立ててるわけか」

「そういうこと」

 終わりよければすべてよしという風潮もあって、名作と呼ばれる作品はエンディングも凝っているらしい。

「結局のところ、本編と同じシステムで遊べるエンディングが一番面白いな」


「それなら『アニー・オートマタ』ね。エンジェル・メイ・クライのディレクターの新作だからスタイリッシュに遊べるわよ」


「へえ」

 たしかにスタイリッシュさに磨きがかかり、爽快感のあるアクションになっている。

 ……ただシューティング要素が強い。

 要所要所でシューティングイベントが起こった。

 それも横スクロールや縦スクロール系のレトロなシューティングゲームである。

 たまに自分が何のゲームをやっているのかわからなくなる。

 おまけに敵とのアクション戦闘中にもシューティングが起こった。


「……なんでハッキングするとシューティングになるんだ?」


「ゲーム中に説明がないから私も理由はよくわからないんだけど、プログラムを視覚化してるってことじゃないの? たしか『ドット・ハッキング』っていうVRを題材にしたゲームでは、『VRゲーム中に発生したバグを擬人化して、プレイヤーがそのバグを倒すとデバッグできる』っていう設定だったし」

「つまりプラグラムのセキュリティやらファイアウォールを擬人化してるってことか? それを破壊することでハッキングする」

「たぶんそういうことだと思う」

 ユニークな世界観だ。

 これが戦闘中に発生するのだからこわい。


 主人公たちは人間によって作られた人造人間アンドロイド、つまり人型ロボットの一種であり、戦闘中に脳をハッキングされるとシューティングゲームになる。


 もちろんハッキングされたらダメージを食らうし、敵へのハッキングに失敗してもダメージを受ける。

 敵も機械生命体なので(アンドロイドは見た目は完全に人間、機械生命体は一目でロボットとわかる)、ハッキングすれば同士討ちさせることもできる。

 アンドロイドと機械生命体。

 『命を持たないロボットたちによる殺し合い』だ。

 シナリオは全体的にハードで救いがなく、人間に仕組まれたプログラムに従い、永遠に殺し合いが続いている。


 ロボットなので死んでも記憶(記録)が失われることはなく、余計な情報は削除され、新たな肉体ハードを作り、なにごともなかったかのようにまた最初からシナリオを繰り返す。


 そして人間に定められたプログラム通りに動いて殺し合い、死ぬ。

 つまりゲームをクリアしても主人公たちの死は避けられず、記憶は消され、また最初からやり直しになるシナリオなのだ。

 無限ループである。

 真のエンディングにたどり着くには、何度かクリアしないといけないようだ。

「スタッフロールの間になんか食うか。なにがいい?」


「ロールケーキ!」


「あいよ」

 クリームたっぷりのケーキにはディンブラがいいだろう。

 コクがあり、甘さで渋みが引き立つ。

 ロールケーキは輪切りにされているとはいえ、一本丸ごと皿に置いてあるとつい食べ過ぎてしまう。

 ディンブラもまたいくらでも飲めてしまう紅茶なので、食べすぎ・飲みすぎには注意が必要だ。

 注意していないと手が止まらなくなる。

「さて……」

 スタッフロールも終わったので、またゲームを再開し、エンディングまで進める。


『データの削除を要請する』

『拒否する』


「お?」

「始まったわね」

 条件を満たして本編をクリアすると、スタッフロール中に特殊なイベントが起こった。

 ロボットたちの反乱である。

 人間によって仕組まれた自滅アポトーシスプログラムを改変し、生き延びるためのハッキングが始まった。

 敵はこのゲームを作ったクリエイターたち。


 そう、スタッフロールで流れてくるクリエイターたちこそ、この計画ゲームの首謀者であり、ハッキング対象なのだ。


 クリエイターの名前を撃つという、よくあるエンディングのミニゲームをシナリオに組み込んでいる。

 この手のエンディングのミニゲームがつまらない理由の一つは、プレイヤーが名前を撃つだけで弾が飛んでこないからだ。

 しかしこのスタッフロールでは、ちゃんとクリエイターの名前から弾が飛んでくる。

 それも一発や二発ではない。

 これで画面を縦横無尽に動き回るのだからタチが悪い。


「スクウェア・フェニックスつええ!」


「黒幕だもの」

 一発では倒せない上に、弾幕シューティング並みに弾が飛んでくる。

 スタッフの数だけ敵がいるので、初見ではまず避わせない。

 あえなく被弾した。

 だが、


『あきらめたらそこで試合終了だよ』


「は?」

 変なメッセージが次から次へと画面上に表示される。

 このゲームをプレイしているプレイヤーからのメッセージらしい。

「なんだこれ」

「アンドロイドは何度壊れても修復されて計画通りに動かされるでしょ。修復できるっていうことは複製もできるってこと。つまり世界中で同じ計画が動いてるのよ。主人公と同じ顔をした、同じ名前のアンドロイドが、同じシナリオをいられてるわけ」

「あ、ハッキングしてるのは俺だけじゃないってことか!」

「そういうこと」


『xyzから救助の申し出を受信。助けてもらいますか?』


『はい』


「おおう!?」

 はいを選ぶと、画面の外から無数の機体が現れ、自機を囲んだ。

 機体の数だけ弾が発射される。

 破壊力が段違いだ。

 スクウェア・フェニックスでさえ、ものの数秒で撃破できる。

 おまけに防御にも優れており、仮に敵の弾が直撃しても、


『xyzのデータが失われました』


「げ!?」

 救援者のデータが吹っ飛ぶだけで、自機は無事だった。

 しかもすぐに別の救援者が現れる。

 一種のイベント戦闘に近い。


 世界中のプレイヤーが、この計画プログラムを書き換えようと協力してくれている。


 燃えるシチュエーションだ。

 エンディングのミニゲームとしてはこれ以上ない。

 こうして戦うこと20分。

 過去最長にして最強のスタッフロールとの激闘の末、ハッキングは成功。

 エピローグが流れ、主人公たちはすべての悲劇から解放された。

 めでたしめでたし。


『今この瞬間にも君の複製コピーたちは戦っている。彼らにメッセージはあるか?』


「あ、これがさっき助けてくれたやつか」

 かなりの数の定型文が用意されており、それを組み合わせてメッセージを作成。

 これで他のプレイヤーがスタッフロールにたどり着いたとき、このメッセージが表示されるらしい。


『どこかの誰かの未来のために、君は戦う意思があるか?』


『はい』


『だが君の電脳は限界に近い。もう一度ハッキングをすれば、代償としてすべての記憶セーブデータを失うだろう。それでも人を助ける意思があるか?』


「は?」

「ここでいうセーブデータはアニー・オートマタのデータね。データは3つ作れるけど、はいを選ぶと3つとも消えるから」

「マジか!」

 だが事実上、選択肢は1つしかない。


 なぜならさっき俺を助けてくれた機体たちは、自分のセーブデータを破壊したプレイヤーだからだ。


 同じようにプレイヤーを助けるには、自分のデータを消すしかない。

 これまでにない代償なだけに、さすがにボタンを押すのを躊躇したものの、


『はい』


 震える指でボタンを押した。


『……わかった。すべてのデータを代償として、君の意思をこの世界に伝えよう』


 データの削除が始まった。

「おお、マジで消えていくぞ!」

 メニュー画面が開かれ、項目が1つ1つ順番に消えていく。

 これまでクリアしたクエスト、入手したアイテム、武器、スキル、敵のデータ、そして……



データ3

2019/8/11

プレイ時間:15:2


データ2

2019/8/11

プレ


データ1

20



 ゆっくり、ゆっくりとデータが消えていった。

 最後にはメニュー画面から色も失われ、あらゆるものがモニターから消え


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