水中戦セット【大学芋とホットミルク】
参考ゲーム
伝説のスタフィー
モンスターハンター3G
「……この水中のふわふわ感はどうにかならんのか」
「慣れるしかないわね。水中ステージは慣れれば面白いのと、慣れてもつまらないの両極端だし」
「慣れてもつまらないのかよ」
「結局は好みだもの」
だいたいどんなゲームでも水中では動きが遅くなりがちで軽快に動けない。
独特の慣性で動く(ジャンプ力が上がる、泳げば前に進みながら少し浮上、何もしないと下に沈むなど)。
2Dアクションだと敵を倒せない(地上ステージでは敵を踏めば倒せたのに、水中では敵に当たると死ぬ)。
敵を倒せないので、敵や針(ステージのあちこちに針山があり、水中でうかつに泳いだりジャンプしたりすると刺さる)を避わしながら進まないといけない。
1ミスで即死、敵や針を避わしても面白くないのだ。
3Dアクションだと360度動き回らないといけない上に、カメラ操作も忙しいので2Dより面倒になる。
地上とは違う慣性系で動くので、水中を素早く泳げるアクションがあっても操作性が悪く、思い通りに動けない。
しかも水中のステージは数が少なく、
「……やっとクリアできた」
慣れる頃にはステージが終わっていることもしばしば。
結果、理不尽に死にまくった記憶だけが残るわけだ。
そのせいか、水中ステージで面白いと感じた記憶がほとんどない。
「面白い水中ステージはないのか?」
「そうね、『伝説のスタフォー』はどう?」
「聞いたこともないな」
パッケージを開けて説明書をパラパラめくる。
「マリンアクション? 水中ステージがメインなのか」
「しかもスイスイ動けるのよ」
十字キーを押しただけではゆっくりとしか進めないが、Aボタンを押しながらだとスイスイ泳げる。
Bボタンはスピン。
ようするに攻撃ボタンだ。
スピンしすぎるとスタフォーの目が回ってしまい、一定時間行動不能になる(十字キーやボタンをガチャガチャすると早く復帰できる)。
Aボタンで軽やかに泳ぎながらスピンを当ててもいいが、先にBボタンを押してその場でスピンしてから敵に当たってもいい。
スピンさえしていれば攻撃判定があるので、敵が殺到するシチュエーションならその場でスピンなど、状況に応じてスピンを使い分けるのが重要だ。
「地上より水中のほうがスムーズに動けるな」
水中では上下左右にスイスイ泳げるものの、地上では不可能だ。
一番やりにくいのはダッシュ。
「……なんでダッシュとスピンが同じボタンなんだ」
ダッシュしたくてもまずスピンしてしまい、すぐにダッシュすることができない。
微妙にストレスを感じる。
「ボタンが同じなのは『ゲームガール』用に開発されてたかららしいわね。古い携帯ゲーム機だからAとBしかなくて、こんな仕様になったわけ」
「……大人の事情かよ」
子供には話しにくい裏話だが、スピンとダッシュのボタンが同じことを除けば不満はほとんどない。
水中ステージ特有の仕掛けも気にならない。
体力制なので針が刺さっても即死しないし、キャラを押し流す水の流れもスピードで突破できる。
↓
↓
↓
↓
↓
水が一定方向に流れており、キャラが水流に飛び込むと流される
↓
○→→↓○
↓
↓
↓
水流で先に進めない場所も、ほかの水流(→→)の勢いを利用してダッシュすれば突破できる
スピードで突破できるというのが肝だ。
水流に邪魔されてもスピーディーに突破できるので気持ちいい。
岩を水流に投げ込めば流れに乗って敵を攻撃できるし、水流を盾にすれば敵の突撃を防ぐこともできる。
スタフォーならではのアクションだ。
スピンアタックのレベルが上がると、水流を利用しなくても障害になっている水流を突破することができる。
↓
↓
○━━━○
↓
↓
スピンアタックLV2はスピンしながらダッシュできるので直接水流を突破できる
連続でスピンアタックを出すと目が回るので、タイミングを見計らってスピンしなければならない。
個人的にはこのスピンアタックLV2の使い方が一番好きだ。
水中では水流に翻弄され、地上では滝に翻弄される。
それをスピンアタックで突破するのだ。
滝滝滝 滝滝滝
↓ ↓ ↓ ↓
↓ ↓ ↓ ↓
↓○━━━━━○↓
↓ ↓ ↓ ↓
↓ ↓ ↓ ↓
滝の中でスピンアタックを出すと、水中と同じように猛スピードでスピンしながらダッシュし、空を飛んで別の滝に移動できる
目が回らないように、滝から飛び出さないように、針にぶつからないように、スピンで敵を攻撃する。
水中と地上を行ったり来たりし、時に水流を、時に滝を、時に岩を利用して敵を倒す。
これぞマリンアクション。
「あまり知られてないのがもったいないな。なんでこんなに知名度が低いんだ」
「『星のビーカー』とかぶってるから」
……身もふたもない。
「クリハン3Gの水中戦もオススメよ」
「水中戦なんてあったのか」
「評判悪くて一作で消えたけどね」
「……ダメじゃねえか」
「ハマったプレイヤーも多いのよ。少なくとも私は大好き」
「まあ、やってみないことには何とも言えんな。水中戦でも地上と同じ武器を使ったほうがいいのか?」
「水中戦ならランスかキャノンランスがオススメね」
「……ガード武器か」
メイン武器で戦いたかったが、水中向きでないのなら仕方ない。
個人的にアクションゲームでガードするのは苦手だ。
敵の攻撃を回避する癖(あるいは敵から逃げようとする本能)があるので、ガードしなければいけない場面でもまず避わすことを考えてしまい、回避もガードも中途半端になって直撃をくらってしまう。
攻防の切り替えがうまくいかない。
キャノンランスを抜刀していなければ自由に走り回れるものの、一度武器を抜いてしまうと走れない上に緊急回避(横っ飛びして攻撃を避わす)もできず、機動力が大幅に低下してしまう。
一応ステップすることはできるのだが、基本はバックステップだけで、サイドステップは『攻撃の後にしかすることができない』謎仕様。
大型クリーチャーのメイン攻撃は突進なので、バックステップではさばききれない。
俺のように攻撃ボタンを連打してしまう(早く討伐したくてつい連打してしまう)タイプは、無駄に攻撃してしまって効率的にサイドステップができない。
避わしたい方向とは逆を向いてバックステップするのが精いっぱいだ。
「……ステップもガードもできん」
「コンボ系のアクションゲームと同じ感覚でプレイしてるからでしょ。大量のザコを相手に無双するゲームは基本ボタン連打で、敵の攻撃モーションが見えたら回避かガードするわけだけど……。クリハンは大型クリーチャー1体と戦うのがメインなわけだから、ガードボタンは押しっぱなしでいいのよ」
「そうなのか?」
「協力プレイでは『亀』扱いされるけどね。ソロならノープロブレム」
ボタン押しっぱなしでいいということなので、改めてキャノンランスでプレイしてみる。
「おお、ちゃんとガードできる!」
ガード不能技はそれほど多くない。
ガード不能技のモーションさえ覚えればどうにかなる。
敵が攻撃してくる方向に盾を向ければ、ほとんどの攻撃を無力化できた。
ガードすると敵の攻撃力に応じてノックバック(後ろに飛ばされる)し、スタミナも消耗してしまう(威力の大きい技ほどスタミナの消費が激しい)ものの、ちゃんとスタミナを管理していればゲージが0になることはあまりない。
特にスピードのあるクリーチャーとの戦いが楽しい。
どっしり腰を落として敵の攻撃を受け止め、狙いすました一撃を叩き込む快感。
攻撃したらすかさずサイドステップでキャンセルしつつ(ステップすると攻撃後の硬直時間をなくすことができる)、敵の攻撃範囲から逃れる。
キャノンランスを構えていると走れないので、定期的に納刀するのも重要だ。
ガード武器は壁際に弱く(素早く動けないので連続で攻撃を食らい、ガードしてもあっという間にスタミナを削られる)、戦場を走り回るクリーチャーについていくには納刀が必須。
ただ納刀しているとガードができない。
抜刀状態で敵と微妙に距離がある場合、進みたい方向とは逆を向いてバックステップするか(スタミナを消費してしまうものの、普通に歩くよりこっちのほうが速い)、『踏み込み突き上げ(大きく前に一歩踏み出し、ランスを下から上に突き上げて攻撃)』で距離を詰めてもいい。
踏み込み突き上げは移動距離が長くて便利なのだ。
「ファイエル!」
そしてキャノンランス最大の魅力といえば砲撃だろう。
槍の中に大砲が仕込んであり、弾が装填されていればいつでも撃つことができる。
弾は数秒で再装填でき、弾数も無限なので節約する必要はない。
『叩き付け』という攻撃の後にだけできる『全弾発射』や、発射に時間がかかるものの大ダメージを与えられる『撃龍砲』は無駄に撃ちたくなる。
男のロマンだ。
欠点があるとしたら大砲は通常攻撃より切れ味が鈍りやすいことだろう。
定期的に砥石でランスを研がないといけない。
無駄に撃ちまくるのも考えものだ。
「水中戦に挑む前に腹ごしらえするか」
「ハチミツください」
「……どこの『ふんたー』だ」
クリハンの迷惑プレイヤーの蔑称がふんたーである。
デフォルトネームのHUNTERと名乗っていることが多いからそう呼ばれているらしい。
クリハンには名前を付ける場所が二つあり、一つがプレイヤーデータ、もう一つがキャラの名前だ。
プレイヤーデータをキャラの名前と勘違いし、キャラ名をデフォルトのHUNTERのままにしているプレイヤーが多い(特に低年齢層)。
名前がHUNTER=クリハンの基本的な知識すら欠けているという証であり、名前がHUNTERというだけで一緒にプレイするのを断られるという。
ふんたーの代表的なセリフが『ハチミツください』だ。
クリハンでは回復や強化アイテムを作るのにハチミツが必須。
あまりにふんたーがハチミツを人にねだって迷惑をかけたからか、単にユーザーのためなのかはわからないが、シリーズを重ねるごとにハチミツの入手は簡単になっている。
ハンターの通りやすい場所に設置されており、クエストのたびに採取していれば不足することはないだろう。
「じゃあ大学いもにするか」
「いえー!」
サツマイモを一口サイズに切って二度揚げし、カリッとなったらハチミツに醤油やみりん、黒ゴマを混ぜて煮詰め、イモにからめる。
バターはお好みで。
時間が経つとみつが固まってしまうので、
「はふはふ!?」
「焦るな」
あつあつを食べるのが正解だ。
飲み物はホットミルク。
干し芋とホットミルクは定番の組み合わせなので、大学芋ももちろんいける。
それにクリハンといえば体を温めるホットドリンク。
……ただ最新作ではホットドリンクもクーラードリンクもなくなっているらしい。
狩りのために色んな準備を整えるのが好きだったのだが、逆にいうと『強制的に準備をさせられる』のを嫌うプレイヤーが多かったということだろう。
無念。
「よし、水中戦だ!」
クエストを受領し、満を持して水中戦に挑む。
地上との一番の違いは360度動けること。
この時代のクリハンにはジャンプ攻撃や高低差を利用した攻撃がなく、高い位置になかなか手が届かない。
だが水中には高低差があり、高さと軸があっていないと攻撃が当たらない。
キャノンランスが水中向きなのは、踏み込み突き上げや『斬り上げ』といった縦の攻撃があるからだ。
縦に大きく振り上げるので、高さが合っていなくても攻撃を当てることができる。
わざと高さをずらして敵の攻撃を避わしつつ、攻撃を当てることも可能だ。
水中では動きが遅くなるものの、そもそもキャノンランスは鈍重な武器なのでデメリットはない。
むしろ踏み込み突き上げのおかげで、水中での機動性はトップクラスだろう。
地上でも緊急時の回避手段として踏み込み突き上げを使うことはあったが、水中での踏み込み突き上げは万能の一言。
攻撃・移動・回避、なんにでも使える。
水中でも砲撃はできるので、弱点らしい弱点がない。
ガードの発生が地上よりも少し遅いぐらいだろう。
「……問題は酸素と罠か」
水中なので潜っていられる時間にも限界がある。
敵が怒って暴れている最中に酸素が切れると怖い。
ただ酸素ゲージは長く、水中にも空気の噴出している場所があるので、0になることはめったにない。
不安なら空気の噴出している場所の近くや、水面近くで戦い、定期的に酸素を補給すればいい。
酸素よりも問題なのは罠。
360度動けるので、地上よりも罠にかけるのが困難だ。
特に爆弾。
水中に爆弾を浮かべ、敵を誘導し、敵が爆弾に近づいた瞬間に石を投げて爆発させないといけない。
高さと軸を合わせる必要があり、なおかつ地上よりも石を狙った場所に投げるのが難しいので起爆するのは至難の業。
罠を仕掛けるのならクリーチャーが陸に上がった時だろう。
水中に生息しているクリーチャーも、定期的に陸に上がるので、どうしても水中で勝てないのなら上陸するのを待つのも手だ。
クリーチャーによってはカエルをエサに釣り上げることもできる。
水揚げしてしまえばこちらのものだ。
「……なかなか上陸せんな。釣り上げるのも無理だから爆弾が使えん」
「打ち上げ爆弾なら正面に飛ぶわよ」
「打ち上げ爆弾?」
「空を飛ぶクリーチャーに当てるやつ」
「そういえばそんなのあったな」
打ち上げ花火のように発射する爆弾だ。
使う機会がめったにないので存在を忘れていた。
「ファイエル!」
試しに撃ってみる。
どーん
「おお!?」
たしかに真っ直ぐ飛んだ。
しかも比較的短い間隔で連射できる。
最大所持数は10発だが、全部当てるのも難しくない。
遠距離から大砲をぶっぱなしているようで快感だ。
ただし破壊力のある『打ち上げ爆弾G』は斜め上に飛ぶので、これは慣れないと当てられない。
要練習。
「やばいな、かなり面白い」
「でしょ?」
もともとクリハンが軽快なアクションゲームではないのが大きい。
コンボ系のアクションゲームより動きがもっさりしているので、水中での動きの遅さもそれほど気にならない。
使う武器にもよるのだろうが、ランス遣いなら一度はプレイしなければいけないシリーズだ。
難点があるとしたら、
「いつまで地上で遊んでるんだ。早く潜れ」
「……地上で倒しなさいよ」
水中が好きすぎて、大チャンスであるはずの地上戦がわずらわしくなってしまうことだ。




